コラム

2023年7月18日更新

介護施設で実施するアニマルセラピー、動物介在活動のメリット

監修者 柴内晶子氏のプロフィール写真

監修者プロフィール/柴内 晶子(しばない・あきこ)
赤坂動物病院院長
1986年より(公社)日本動物病院協会CAPP活動(動物介在活動他)に参加
日本大学農獣医学部(現生物資源科学部)獣医学科卒業
同年日本獣医畜産大学(現日本獣医生命科学大学)獣医学科臨床病理学教室研究生
農林水産省獣医事審議会委員
日本大学生物資源科学部非常勤講師
(公社)日本獣医師会会員
(公社)日本動物病院協会会員 内科認定医
(社)日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)幹事
(社)日本動物愛護協会評議委員
農林水産省畜水産安全管理課 動物再生・バイオ医薬品調査会委員
日本獣医史学会評議委員
東京青山ロータリークラブ令和2年度幹事
他役職多数

アニマルセラピーは癒やしやストレス解消、情緒の安定の他、生活意欲の向上も期待できるとして医療や福祉の分野で取り入れられています。認知症の高齢者に対して一定の効果を示す論文もあり、認知症やうつ病などの予防やリスクを下げる目的でも注目されています。

今回はアニマルセラピーの概要や介護施設で動物介在活動を実施する上での注意点を紹介します。

アニマルセラピーとは?

アニマルセラピーは人と動物のふれあいを通じて癒やしや安心感を得て、心身の健康維持やリハビリに役立てる活動の一般的な総称です。動物とのふれあいを通じ、ストレスの緩和や情緒の安定、血圧の安定や自発的な意欲の向上、離床率の向上への効果が認められています。

アニマルセラピーは大きく3つのタイプに分かれる

アニマルセラピーとは動物とのふれあいを通じて治療や教育に生かす取り組みを総称したもので、大きく次の3つのタイプに分かれます。
 
・動物介在活動(AAA)
Animal Assisted Activity(アニマルアシステッドアクティビティー)の略で、頭文字をとってAAAと表記されます。獣医師や愛玩動物看護師、一般の飼い主さんが動物を伴って介護施設や高齢者施設などを訪問し、ふれあいやレクリエーションを行うものです。日本で約40年間この活動を推進している公益社団法人日本動物病院協会では資格を得た一般の飼い主さんと犬や猫などの伴侶動物が活動に参加しています。これらの活動は世界共通の基準を守る必要があり、同協会では会員病院の獣医師や動物看護師が活動をリードしています。

・動物介在療法(AAT)
Animal Assisted Therapy(アニマルアシステッドセラピー)の略で、AATと表記されます。
医療現場で医師が治療の一環として行うもので、病気や障がいに対してのリハビリなどに実施されています。実施プログラムの検討、治療後の効果の評価が行われます。

・動物介在教育(AAE)
Animal Assisted Education(アニマルアシステッドエジュケーション)の略で、AAEと表記されます。主に小学校などの教育施設で行われる活動で、動物とのふれあいを通じて動物との正しい接し方や命の大切さを学びます。実施プログラムは教育関係者の協力によってプログラムされ、活動後に評価判定を行います。

介護施設で実施されるアニマルセラピーはほとんどの場合、動物介在活動(AAA)ですので、次の見出しで詳しく解説します。

動物介在活動(AAA)の効果

癒やしやストレス解消に

感情的・情緒的な交流のできるボランティア(飼い主)や動物と接することで、緊張がほぐれてストレスの解消につながったり、癒しや安心感を得られたりします。感謝の気持ちが芽生えたり、会話が弾めば気分転換にもなったりして楽しさを感じ、幸福感や穏やかさを得られます。

自発的な意欲の向上

施設で長く生活していると意欲の低下や孤立感が見受けられるご利用者様もいらっしゃるかもしれません。そのような方でも訪問した動物への積極的な関わりが促されることがあります。「動物のそばに行きたい」「ふれあいたい」などの自発的な意欲を引き出すことが離床率を高めると言われています。

認知症の高齢者の情緒を安定させる

日本認知症予防学会誌で発表された論文によると、動物介在活動により認知症の高齢者に対する情緒安定効果や持続的なQOL向上の効果がみられています。認知症の周辺症状である抑うつ状態や不安感、興奮や攻撃性が犬とふれあったのちは和らぎ、安定すること、また活動を継続することで効果にも一定の持続性があることが報告されています。

介護施設で動物介在活動を実施する際の注意点

基準や実績のある活動団体に依頼する

動物介在活動を実施している団体は多数あります。実施する上では、1992年に設立された人と動物の関係に関する国際組織(IAHAO)の基準を守ることが基本です。その他、専門学校や民間団体が認定している民間資格や認定制度があります。

例として、公益社団法人日本動物病院協会の「CAPP活動マニュアル」やNPO法人日本アニマルセラピー協会の「アニマルセラピスト」、一般社団法人 全日本動物専門教育協会が認定している「動物介在福祉士」などがあります。それぞれの団体が、訪問する動物に対して基準を設けており、ワクチン接種やトレーニング、適性検査や定期的な健康診断、衛生管理を実施しています。

同行するアニマルセラピストやボランティアスタッフも施設での交流方法や安全についての教育を受けているので、きちんとした基準や実績のある団体に依頼しましょう。

ご利用者様に動物アレルギーやトラウマなどがないか

ご利用者様に動物アレルギーや動物に対するトラウマなどがないか確認しておくことも大切です。活動への参加は自由ですが、動物とどの程度の関わりを希望されるのか事前に確認し、希望される方を中心に、無理のないように参加してもらいましょう。その日の意欲や体調によって左右される場合もあるかもしれません。本人の意志が確認できない場合には、医療面の既往歴などを確認し、必要ならご家族様とも相談した上で参加を決めましょう。

また、アニマルセラピーの実施時にご利用者様が突然大声を上げたり、動物に危害を加えてしまうような動作をしたりする場面もあるかもしれません。トイレに行きたい場合なども考えられるので、施設の職員の方は近くでふれあいを見守り、動物とご利用者様双方が安全に交流できるよう配慮しましょう。

紹介したように、訪問する動物は健康診断や日頃の衛生管理のほか、特に人が大好きで、あらゆる変化に動揺しないようトレーニングされていることが条件です。訪問するボランティア団体も動物の抜け毛や衛生管理には十分気を配っていますが、施設側でもふれあい前後にご利用者様の手洗いを促したり、活動後の抜け毛の掃除をしたりして衛生面に配慮しましょう。


参考:
・ 川添敏弘・堀井隆行・石川亜矢子・中山景子・横室純一「動物介在介入による認知症高齢者の情緒安定の効果―NPI-Q-J 質問紙法を用いた検証―」一般社団法人 日本認知症予防学会
・ 【編著】人と動物の関係学研究チーム「ペットがもたらす健康効果」社会保険出版社.2020

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