コラム

2021年9月28日更新

コロナ禍でも安全に!室内レクのアイデア・注意点とは?

著者プロフィール/尾渡 順子(おわたり・じゅんこ)
介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員、認知症ケア上級専門士、介護予防指導士、介護教員資格等を取得。介護技術や認知症介護、コミュニケーションに関する研修講師も務める。 
2014年、アメリカ・オレゴン州のポートランドコミュニティカレッジにて、アクティビティディレクター資格を取得する。2018年4月より医療法人中村会 老健あさひなに勤務し認知症介護レクリエーション実践研究会を立ち上げる。現場において高齢者に「人と触れ合う喜び」を伝え、介護従事者に「介護技術としてのレクリエーション援助」を広める一方で、介護情報誌やメディアにおいて執筆などを手掛けている。著作として「みんなで楽しめる高齢者の年中行事&レクリエーション」(ナツメ社)、「おはよう21増刊号 楽しい!盛り上がるレクリエーション大百科」(中央法規出版)、「介護現場で使えるコミュニケーション便利帖」(翔泳社)、「介護で使える言葉がけシーン別実例250」(つちや書店/滋慶出版)、「笑わせてなんぼのポジティブレクリエーション」(日総研)、「DVDレク担さん必見!もう悩まない 笑顔を引き出す介護レク入門」(BABジャパン)、「認知症の人もいっしょにできる高齢者レクリエーション」(講談社)などがある。

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、介護施設様の間ではこれまで定期的に実施していた外出イベントやご家族や地域の方を招いた行事を控えざるを得ない状況が続いています。
しかし介護レクにはご利用者様の脳の活性化や身体機能の向上、QOLの向上という重要な役割があります。また、ご家族との面会が禁止されて寂しい思いをされているご利用者様も多く、施設内で充実した生活を送っていただくという観点からもレクは欠かせません。
 
そこで今回は、介護レクの専門家である尾渡順子氏に、コロナ禍でも感染リスクを考慮しながらご利用者様に楽しんでもらえる室内レクのアイデアをご紹介いただきます。また、業務改善ナビ【介護施設】編集部による執筆で、室内レクを実施する際の注意点を記載しております。末尾にはレク実施時にご使用いただける感染対策の資料やポスターも掲載していますので、ぜひ参考としてお役立てください。

コロナ禍でも実施できる!室内レクのアイデア集

感染対策にも留意しつつご利用者様に楽しんでもらえる室内レクのアイデアを5つご紹介します。

  1. ご利用者様が座る間隔を空けて実施する「新聞紙折りゲーム
  2. ご利用者様同士で道具を共用せず、ゲーム後に消毒できる道具を使用する「おせんべい焼けたかなゲーム
  3. 息が上がるようなゲーム内容ではなく、集中して静かに実施できる「柿落としゲーム
  4. ゲームの道具として廃材を活用し、道具の使い回しを避ける「雑巾絞りゲーム
  5. ご利用者様が大声を出さなくても実施できる「脳トレクイズ

  •  麻痺や疾病のある方のゲーム参加については事前に医療・リハビリ職に相談してください。

1.新聞紙折りゲーム

 ご利用者様が新聞紙折りゲームをしている様子のイラスト

新聞紙折りゲームは、素足で新聞紙を小さく折っていき、誰が一番小さく折れるか競うレクです。変形しがちなご利用者様の足指を広げるストレッチになり、指が地面に対してしっかり踏ん張れるようになります。その結果、安定感のある立位が取れたり、歩行が安定して転倒の予防になったりします。また、血行改善や冷え予防にもつながります。

【ゲームの手順】

  1. 新聞紙をA4くらいの大きさにしたものを1枚ずつ配る
  2. ご利用者様は素足になり、新聞紙を足元に置く(素足を拒否する方には無理強いせず靴下を履いたままで良い)
  3. 「よーいドン」の合図で、新聞紙を半分→1/4→1/8と半々に折っていき、一番小さく折れた方が勝ち

新聞紙折りゲームは以下のようにアレンジすることも可能です。

  1. くしゃくしゃに丸めたA4サイズの新聞紙を2つ参加者に配る
  2. 「よーいドン」の合図でその内の1つを足指で広げ、広げた新聞紙でもう1つの丸まった新聞紙を包む
  3. 包み終われば挙手をしていただき、最初に完成した方が勝ち

新聞紙折りゲームを行う際はご利用者様に横並びになっていただき、隣の方との間隔を空けて座れるようにしましょう。参加する人数が多ければ円座にして、3密を回避してください。

2.おせんべい焼けたかなゲーム

 ご利用者様がおせんべい焼けたかなゲームをしている様子のイラスト

おせんべい焼けたかなゲームは、おせんべいに見立てた段ボール紙をトングで返し、紙の裏に書かれた数字で勝ち負けを競うレクです。
ご利用者様の握力や上肢の協調を向上させ、計算力も養うことができます。また、数字を見つけることで注意力の向上にもつながります。

【ゲームの手順】
  1. トングとおせんべい(段ボールを丸く切って2枚を貼り合わせ、表面にコピー用紙を貼って数字を書いたもの)を人数分用意する
    ※おせんべいは1人あたり10を2枚、20、30、40、50、60、70、80、90をそれぞれ1枚
  2. おせんべいを裏返してテーブル上にランダムに並べる
  3. 「30」「50」など指定した数字を司会進行が言い、ご利用者様はトングでおせんべいをひっくり返す
  4. 指定された数字を最初に見つけた方が勝ち

おせんべい焼けたかなゲームは、以下のように勝敗の付け方を変えることもできます。

  • 「よーいドン」の合図で3枚ひっくり返し、合計の数が大きい方の勝ち
  • おせんべいをひっくり返し、最初にぴったり100にした方の勝ち
  • おせんべいを数字の小さい順に早く並べた方の勝ち

おせんべい焼けたかなゲームを実施する際は、感染防止対策として素手でなくトングでおせんべいをひっくり返すようにしましょう。使用したトングは、ゲーム終了後に都度消毒してください。このゲームはテーブル上で行いますが、密を避けるためにご利用者様の間隔を空けて横並びに座るようにしましょう。

3.柿落としゲーム

ご利用者様が柿落としゲームをしている様子のイラスト

柿落としゲームは、ひもに吊るした柿のイラストに向かってお手玉を投げて、落ちたイラストに書かれた点数を競うレクです。このゲームを行うことで上肢の運動になり、上腕や肩関節のストレッチにつながります。また、集中力を養うことにもつながります。

【ゲームの手順】
  1. A3コピー用紙6枚に柿のイラストを貼り、2枚ずつ3点、5点、10点の点数を書く
  2. 2つのホワイトボードなどに橋を架けるようにひもを結び付けて、中央に10点、両脇に5点、一番外側に3点のイラストを折返して掛け、的を作る
  3. 6枚の柿の絵の前に2人のご利用者様が座り、じゃんけんで勝った方から新聞紙でくるんだお手玉を投げて柿を落とす
  4. 交互にお手玉を投げてすべて柿が落ちたら点数を合計し、多かった方が勝ち

柿のイラストをひもに掛ける際に紙の折り返し方を「1/4折返し」「1/3折返し」「1/2折返し」など変えて行うと、ゲームの難易度を調整できます。

柿落としゲームは競い合って息が上がるようなレクではなく集中して静かに的を狙うものですので、感染予防の面からも安心して行うことが可能です。

4.雑巾絞りゲーム

ご利用者様が雑巾絞りゲームをしている様子のイラスト

雑巾絞りゲームは、雑巾に見立てた新聞紙を絞り、制限時間内にいくつ絞れるかを競うレクです。実施することでご利用者様の上肢や握力を鍛えられ、手先や指を使う力も向上します。また、競争によって高揚感を得ることもできます。

【ゲームの手順】
  1. A4サイズに切った新聞紙を2枚重ねたものを1人15セットと、よく洗って乾燥させ上半分を切った牛乳パックを用意する
  2. 新聞紙と牛乳パックを配り、牛乳パックはバケツで、そこに雑巾(絞った新聞紙)を入れるよう説明する
  3. 「よーいドン」の合図で新聞紙を絞り、牛乳パックに入れる
  4. 制限時間が来た(あるいは、もうバケツに入らなくなった)時点で一番多くの雑巾を絞って牛乳パックに入れていた方が勝ち

新聞紙を絞るのではなく丸めて「ジャガイモ」を作り、A4サイズほどのビニール袋に何個ジャガイモが入るか競うこともできます。この場合は、新聞紙をきつく丸めてできるだけたくさん数が入るようにすることがレクのポイントです。
 
雑巾絞りゲームは破棄できる廃材を利用するため、道具の使い回しによる感染を防ぐことができます。ゲームはテーブル上で行いますが、ご利用者様を隣の方と離れて横並びに座るようにすると3密の防止になります。

5.脳トレクイズ

ご利用者様が脳トレクイズをしている様子のイラスト

脳トレクイズは、司会進行が出題したクイズにご利用者様が回答し、誰かが正解するまでクイズを続けるレクです。実施することでご利用者様が言葉を想起する機会になったり、記憶力向上につながったりします。

【クイズの手順】
  1. 司会進行役が前に立ち、クイズを出題する
  2. 答えが分かった方は挙手をし、アシスタントのスタッフ様が答えを聞いて全員に伝える
  3. 正解の場合は司会進行役が「正解」と発表し、間違えていればまた全員で答えを考える

脳トレクイズは言葉を思い出すことが目的ですので、クイズを実施する際は答えを聞くだけでも脳の活性化になっていることをご利用者様に伝えましょう。
 
クイズの内容に関しては、例えば都道府県名で実施すると以下のようにさまざまな出題方法ができます。

  • 特定のひらがなで始まる都道府県名(「あ」から始まる都道府県なら愛知県、青森県、秋田県)
  • 特定の漢字が入っている都道府県名(「島」が入っている都道府県なら福島県、鹿児島県、徳島県、広島県、島根県)
  • 動物名が入っている都道府県(熊本県、鳥取県、鹿児島県、群馬県)

脳トレクイズを実施する場合は、ご利用者様が大声を出さなくても楽しめるように工夫しましょう。司会進行役はマスクで出題し、フリップなども使って全員にクイズが見えるようにします。ご利用者様が回答する際は挙手をしてアシスタントのスタッフ様に小声で答えを言うようにし、スタッフ様がマスクを着用して全員に答えを発表すれば、飛沫感染の防止につながります。

コロナ禍で室内レクを実施する際の注意点とは?

ここからは、業務改善ナビ【介護施設】編集部が花王プロフェッショナル・サービスの製品を使った室内レクの感染対策のポイントをご紹介いたします。

室内レクを実施する際、新型コロナウイルス感染防止の観点から以下3つの点について特に注意する必要があります。

  • 環境や共有物の清掃を徹底する
  • 職員・ご利用者様の手指衛生を徹底する
  • 3密を回避する(換気が悪い密閉空間、大勢が集まる密集場所、近距離で会話・発声する密接空間)

環境や共有物の清掃には、環境清拭に使える除菌洗浄シートの利用がおすすめです。

環境清拭シートの例

 「セイフキープ 24時間抗菌シート」の商品画像

手指衛生を徹底するには、殺菌・消毒効果があるハンドソープやアルコール消毒剤などを活用した手指の洗浄・消毒が大切になります。消毒剤は、持ち運びしやすく素早く乾くものならレクの直前にサッと使えて便利です。

殺菌・消毒効果がある
ハンドソープの例

 「ソフティ 薬用泡ハンドウォッシュ クイック&クリア」の商品画像

持ち運び可能で素早く乾く
アルコール消毒剤の例

「ハンドスキッシュEX スプレー 150mL」の商品画像

3密を回避するには、同じ時間帯・同じ場所でレクに参加する方の数を可能な限り調整し、会場の風通しを良くして常に少しだけ換気されている状態を保つことが大切です。またレク実施前はご利用者様の体温をチェックし、発熱や咳、倦怠感がないか様子を観察してください。体調が良くないご利用者様にはレクへの参加を控えていただくようにしましょう。
 
室内レクは、一定数のご利用者様が同じ場所に集まって会話をしたり、テーブルや椅子などの共用物やレクの道具に触れたりする機会は少なからずあります。そのため感染対策の面からレクの内容を工夫することに加えて、手指衛生や咳エチケット、テーブルや椅子などコンタクトポイントの清掃といった基本の対策も徹底的に行いましょう。

以下に、手洗い・手指消毒の正しい方法が分かるポスターと、咳エチケットやコンタクトポイント清掃を啓発するポスターを用意しました。ダウンロードしてぜひご活用ください。

感染対策の啓発にご活用ください

花王プロフェッショナル・サービス「業務改善ナビ」では啓発ポスターなどのダウンロードコンテンツを公開しています。ぜひご活用ください。

参考文献:
厚生労働省老健局「介護現場における感染対策の手引き(第2版)

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