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コラム

2023年11月21日更新

【専門家が解説】令和6年度(2024年度)介護保険法改正、介護報酬改定の注目ポイント 〜前編〜

著者 小濱道博氏のプロフィール写真

著者プロフィール/小濱 道博(こはま・みちひろ)
小濱介護経営事務所代表
C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会専務理事
日本各地で介護経営支援を手がける。全国で年間250件以上の介護事業経営セミナーの講師を務め、例年延べ2万人以上の集客実績をもつ。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。介護経営の支援実績は全国に多数あり。
著書:「実地指導はこれでOK!おさえておきたい算定要件シリーズ」第一法規、「これならわかる<スッキリ図解> 介護BCP」翔泳社、「これならわかる<スッキリ図解> LIFE」翔泳社、「これならわかる<スッキリ図解> 運営指導」翔泳社、「よくわかる実地指導への対応マニュアル」日本医療企画、「介護経営福祉士テキスト〜介護報酬編」日本医療企画、「これならわかる<スッキリ図解> 介護ビジネス」(共著) 翔泳社。
ソリマチ「会計王介護事業所スタイル」の監修を担当。

令和6年度(2024年度)の介護保険法改正、介護報酬改定について、政府はさまざまな改善策を打ち出しています。しかし、その具体性や実現可能性については、一筋縄ではいかない複雑さを抱えています。

そこで今回は、令和6年度の介護保険法改正、介護報酬改定のポイントを小濱道博氏に解説いただきました。

  • 2023年9月時点の情報で記事を執筆しています。

令和6年度 介護報酬改定の方向性

令和5年(2023年)8月7日の社会保障審議会介護給付費分科会で、令和6年度介護報酬改定の一巡目の審議が終了し、各サービスの論点が出そろいました。令和6年度改定は6年に一度の、医療、介護、障害のトリプル改定です。3年弱続いたコロナ禍の影響や、ウクライナ戦争を起因とした物価高騰など、経営環境が悪化していることから、プラス改定を望む声が増しています。しかし、国の政策の中心が少子化対策に大きく舵を取り、その財源として3兆円を捻出するため、社会保障費用が削減される不安があります。

令和6年度介護報酬改定の大テーマは4つ

今回の介護報酬改定の大きなテーマは以下の4つで、具体的な議論がこれからさらに進められていきます。
 
(1)地域包括ケアシステムの深化・推進
重度化し医療行為が必要となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるような地域包括ケアシステムの構築を実現するために、訪問看護や看護小規模多機能型などを充実。また、ヤングケアラー問題もテーマになっています。
 
(2)自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進
LIFE活用の拡大と成功報酬の導入。訪問サービスと居宅介護支援へのLIFE加算の創設の可否、通所リハビリテーションへの成功報酬の拡大なども注目ポイントになります。
 
(3)介護人材の確保と介護現場の生産性の向上
処遇改善の充実と3つの処遇改善加算の一本化、有効求人倍率が15.5倍を超えた訪問介護の対策。ICT化の促進もテーマになっています。
 
(4)制度の安定性・持続可能性の確保
介護報酬における「やり繰り」の部分で、既存の加算を含めて見直されます。

介護保険法改正で押さえておきたい3つのポイント

介護保険法改正については、令和5年5月12日の通常国会で令和6年度介護保険法が成立しています。ポイントは以下の3点に絞られます。
 
①新たな複合型サービスの創設と看護小規模多機能型の役割の明確化
②居宅介護支援事業所に介護支援事業所の許認可を追加
③財務諸表の公表を義務化。罰則規定として指定取消も可能

すべてが介護事業者にとって何らかの影響を与える内容となっています。

①新たな複合型サービスの創設と看護小規模多機能型の役割の明確化

新たなる複合型サービスは12年ぶりに創設されるため注目が集まっています。詳細は介護報酬改定審議の中で取りまとめられることになっていますが、訪問介護と通所介護の複合型である可能性が高いです。
その場合、通所介護、訪問介護、そして小規模多機能型とのすみ分けがポイントになります。これらのサービスからの転換などを含む地殻変動を誘発する可能性を秘めており、業界再編成が加速するかもしれません。

また、看護小規模多機能の役割も明確化されました。「サービスの拠点に通わせ、もしくは短期間宿泊させ、日常生活上の世話、機能訓練並びに療養上の世話または必要な診療の補助を行う」という内容です。多機能型サービスを機能訓練の場所と明確に位置づけした点がポイントと言えます。

②居宅介護支援事業所に介護支援事業所の許認可を追加

これまで予防ケアプランは地域包括で受注して、地域の居宅介護支援事業所に外部委託しているのが現状でした。
令和6年度からは、介護予防支援について居宅介護支援事業所支援に指定を拡大し、居宅介護支援事業所が予防ケアプランを直接受注できるようになります。

③財務諸表の公表を義務化。罰則規定として指定取消も可能

財務諸表の公表の義務化、そして罰則規定として最大で指定取消が位置づけられたことも押さえておきたいポイントです。これまで、社会福祉法人や障害福祉事業者には財務諸表の提出と公表を義務化していましたが、ここに介護事業者も加わりました。
今回の改正においての罰則規定は、未提出もしくは虚偽の報告をした場合、提出もしくは是正を命令できることです。また、命令に従わない場合は、業務停止もしくは指定取消できることも明記されています。

提出する財務諸表は「会計の区分」に従って作成

問題は、提出する決算データは、単に税務署に提出した決算書の数字ではないと言うことです。介護事業者は、「会計の区分」に従って財務諸表を作成することが義務化されています。「会計の区分」とは、厚生省令37号などの各サービスの解釈通知に規定された運営基準の一つです。

例えば、「本支店会計」「部門別会計」という区分があります。


本支店会計

同一法人で複数のサービス拠点を運営している場合、拠点ごとに会計を分ける必要があるため、その際に適用する区分。


部門別会計

訪問介護と第一号訪問事業、居宅支援事業所、障害福祉サービス、自費サービス、一般事業などの複数のサービスを営んでいる場合、それぞれを分けて会計処理を行う必要があり、その際に適用する区分。


会計を分けるとは、少なくとも決算書を作成する時点で、損益計算書を別々に作成するということです。すべての介護事業者は、解釈通知に記載された運営基準要件ではありますが、財務諸表の公表が義務化され、罰則も明確に定められたことで業務量増加の負担は避けられないでしょう。

介護サービス業界に影響を与える、これから確定していく論点

今回の介護保険法改正は二段階の審議であり、これから次の3つの論点の結論が出される見込みです。
 
①高所得者の一号保険料の引き上げ
②自己負担2割対象を、現在の20%から30%に拡大
③介護老人保健施設、介護医療院の多床室料の自己負担化

これらが確定した場合、確実に介護施設の利用控えや利用するサービス事業所の選別が加速するでしょう。コロナ禍による経済的な打撃、介護サービスをあえて使わないという認識の高まりによって、介護サービス業界は苦境に立たされています。
特にデイサービス業界は、利用者数が元に戻らずに経営体力の弱い小規模事業所が廃業するケースも出ています。令和6年から自己負担2割の拡大が確定した場合、利用控えも加速し、介護サービス全体に大きな影響を与えかねません。
今後進められる令和6年度介護報酬改定審議の中で、介護保険制度改正の全貌が徐々に姿を現し、介護報酬改定も前回同様の大改定となると考えられます。

後編は特養・老健運営に関係する内容を解説する予定です(12月19日公開予定)。

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