2025年5月20日更新
入所者確保に悩む特養の経営者必見!介護施設における集客のポイントを解説
監修者プロフィール/斉藤 正行(さいとう・まさゆき)
一般社団法人 全国介護事業者連盟 理事長
大学卒業後、コンサルティング会社に入社しコンサルティング、事業再生等を手がける。その後、介護業界に転身し、老人ホーム運営会社の取締役運営事業本部長、デイサービス会社の取締役副社長を経て、2013年8月に(株)日本介護ベンチャーコンサルティンググループを設立。2018年6月に法人種別・サービス種別の垣根を越えた介護事業者の横断的組織である一般社団法人全国介護事業者連盟の設立に参画、2020年6月に理事長に就任。介護業界の発展に心血を注いでいる。
近年、介護施設を取り巻く環境は厳しさを増しています。新設法人の増加や大手企業の参入により競争が激化する影響もあり、特別養護老人ホームが閉鎖・縮小となるケースも散見されます。経営を安定させるためには、限られたリソースの中で「いかにして入所者を確保するか」が1つの鍵となります。
そこで今回は、競争が激化する介護業界の現状や、施設が競争を勝ち抜き、地域で選ばれる存在になるためのポイントを解説します。
競争が激化する介護事業の現状
東京商工リサーチの調査*1によると、「 2023年に全国で新しく設立された法人のうち、「老人福祉・介護事業者」は、3,203社(前年比6.1%増)でした。5年連続で前年を上回った」とあり、新規参入の増加傾向が示されました。
一方で、既存の介護事業者の経営環境は一段と厳しくなっています。同社の老人福祉・介護事業の倒産調査*2によると、「介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が、2024年1-10月で145件発生した。これまで年間最多だった2022年の143件を上回り、2カ月残して過去最多を記録した」とあります。
この背景には、大手介護事業者や異業種からの参入による競争の激化に加え、慢性的な人手不足や物価高騰、さらには令和6年度介護報酬改定による訪問介護の基本報酬の引き下げなど、複数の要因が絡んでいます。減収減益に支出増加という二重の痛手を受け、倒産や撤退に追い込まれるケースが増加しています。
こうした状況下で介護施設の経営を安定させるためには、複数の側面からのアプローチが不可欠であり、中でも「入所者確保」は重要な戦略の一つです。入所者を安定的に確保できれば、施設の稼働率が向上し、収益の安定化につながります。次からは、入所者を確保するための具体的な施策を紹介します。
まずは自施設の「強み」を明確にする
特別養護老人ホームへの入所は「数年待ちが当たり前」だった時代から、大きく情勢は変化し、競争の激しい地域では空床が目立つ施設も見受けられるようになりました。こうした地域で入所者を確保するためには、自施設の「強み」を明確にし、競合施設と差別化することが重要です。強みがはっきりしていれば、ご利用者様やそのご家族さらにはケアマネジャーや地域包括支援センターといった外部機関に対して、自施設を選ぶメリットを的確に伝えることができます。反対に、自施設の強みが明確でないと、十分に魅力が伝わらず入所施設選びの候補に挙がらない恐れがあります。
強みを見つけ出す方法
介護施設がアピールできる強みの例としては、以下のようなものがあります。
これらの強みを見つけ出す2つの方法について、解説します。
入所者やそのご家族が入所施設を検討する際、比較対象になるのは同じ地域内にある施設と考えてよいでしょう。それらの競合施設と自施設を比較し、どの点で優れているのかを分析することで、自施設の強みを明確にできます。その際、競合施設のホームページやパンフレットに加え、口コミサイトや地域のケアマネジャー・医療機関からの情報も具体的な差別化ポイントを考えるのに役立ちます。
職員や既存のご利用者様、そのご家族にアンケートを実施し、自施設の魅力や満足している点を直接聞く方法も有効です。職員にとって働きやすい環境になっている要因や、ご利用者様が快適に過ごせる理由などは、施設の強みとしてアピールできます。
アンケートの項目例としては、「施設を選んだ決め手はなにか」「施設のどんな点に満足しているか」などを聞くと良いでしょう。経営者の立場からはわからなかった気付きが得られることもあります。
利用者満足度アンケートは、ご利用者様の満足度を向上させ、定着率を向上させるためにも役立ちます。詳しく知りたい方は「【アンケート項目例あり】介護施設における利用者満足度アンケートの実施方法」もご覧ください。
入所者を増やすためのポイント
強みを活かしたコンセプトを決める
競合施設と比較して選ばれるためには、広く入所者を募るのではなく、ターゲットを絞り、自施設の強みを活かしたコンセプトを打ち出すことが重要です。コンセプトが明確であれば、入所者やそのご家族に施設の特徴が伝わりやすくなり、「自分たちに合った施設」として選ばれる可能性が高まります。
例えば、認知症ケアの専門資格を持つ職員が多数在籍している、医師との24時間連携体制が確立されているなどの強みがある場合、「認知症に特化し、医療連携体制が整備された施設」というコンセプトを打ち出せるでしょう。
ただし、特別養護老人ホームは営利法人が運営する老人ホームとは異なり、地域社会のインフラとしての役割を担うという社会的使命を持っています。そのため、入所者を選別するような姿勢は、基本的には好ましくないという前提を踏まえる必要があります。その上で、地域内の競争が激しく、空床の目立つ施設においては、ターゲットの絞りこみも大切な視点の1つとなります。社会保障のインフラとして機能し続けるためには、多面的な視点で戦略を検討していく必要があります。
外部機関と連携する
利用者の多くは、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャー、居宅介護支援事業所、医療機関などの紹介を通じて施設を選びます。そのため、これらの外部機関と密に連携して情報を共有し、信頼関係を築くことが重要です。外部機関からの問い合わせにいつでも答えられるよう、自施設の強みに加え、空室状況やサービス内容も整理しておくと良いでしょう。
広告ツールを用いる
自施設の強みやコンセプトを広く知ってもらうためには、広告ツールの活用が効果的です。具体的な広告ツールとしては、以下のようなものがあります。
地域密着型で周辺住民の利用が多い施設はポスティングやパンフレットから始めてみる、新しく開設した施設はSNSを利用して広く知ってもらうことに注力するなど、自施設に合った手法を選ぶことが大切です。広告のデザイン制作や配布作業、サイトやSNSの運用など、自施設内での対応が難しい業務がある場合は、外部の専門業者に委託するのも一つの手段です。
見学会を活用する
特に入所施設見学は、入所希望者やそのご家族にとって、実際の環境や職員の対応を確認できる貴重な機会です。入所希望者の悩みや疑問にしっかり耳を傾け、知りたい情報や見たい場所に沿った案内を行いましょう。見学終了後には、面談を設けて不安を解消し、入所に対する気持ちが高まった状態で意思を確認することで、成約につながりやすくなります。
ただし、見学対応を職員に丸投げしてしまっては、十分な効果を得られない場合があります。施設の特徴やサービス内容の説明力や、見学者の不安に寄り添う傾聴力など、対応に必要な知識やスキルを職員が身につけられるようサポートし、スムーズな案内ができる体制を整えましょう。また、周辺環境マップや入所までの流れをまとめた資料なども準備することで、見学者の不安を解消し、前向きに入所を検討してもらいやすくなります。
地域住民向けのイベントを開催する
地域住民が施設内部の様子を知る機会がないと、どこか遠い存在だと感じられてしまう場合があります。地域住民向けのイベント開催は、そのようなイメージを払拭し、施設への信頼感や認知度を高めるきっかけになります。
具体的なイベントとしては、以下のようなものが挙げられます。
地域の人々とのつながりを深めることで、介護が必要になった際に最初に思い浮かべてもらえる施設になります。
まとめ
競争が激化していく介護業界において、入所者の確保に苦労している施設は少なくありません。そのような施設が事業を継続していくためには、社会保障におけるインフラとしての使命をしっかりと認識した上で、競合との差別化を図り、強みを活かした戦略を講じることが不可欠です。今回紹介した内容を参考に、自施設の魅力を見直し、積極的な取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。
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