コラム

2024年4月23日更新

介護施設の施設長に求められる能力とは?仕事内容やよくある悩みも紹介

著者 中浜崇之氏のプロフィール写真

著者プロフィール/中浜 崇之(なかはま・たかゆき)
株式会社Salud 代表取締役
ものさしを合わせる介護福祉士として特養やデイサービスで現場職や管理者として勤務。
「自分らしく死ねる社会を創る」をコンセプトに、テレビ東京「TOKYOガルリ」やTBS「好きか嫌いか言う時間」への出演、「週刊東洋経済」や「夢を育てるみんなの仕事300」(講談社)に取材記事が掲載されるなど、介護福祉についてポジティブな視点で発信している。
・株式会社Saludのホームページ
https://www.salud-ltd.com/

特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)といった介護施設の施設長には高いリーダーシップ、組織マネジメント力、ご利用者様の安全確保など、施設の運営全般に関する多くの能力が求められます。それだけにさまざまな不安を抱えながら仕事に取り組んでいる方も多いのではないでしょうか。

今回は、施設長の仕事や求められる能力をあらためて紹介すると共に、よくある悩みとその解決法についても紹介します。

理解されにくい施設長の仕事。現場スタッフとの違いは?

施設長の仕事は多岐にわたります。しかし介護施設ではご利用者様への直接支援がメインであるため、管理職である施設長の仕事内容は見えにくく、周りからは理解されにくいかもしれません。

まず「現場職」と「経営・管理職」の立場の違いを理解することが重要です。
「現場スタッフ」はご利用者様の望みを叶えたり、生活を整えたりと、より良い生活サイクルを回すための短期的目線を持って仕事をしています。
一方、「経営・管理」の担当である施設長は、施設・法人の成長や社会変化への対応、スタッフの安定雇用など中長期的な目線で仕事をします。

どちらが「えらい」「良い」ではなく、現場との役割分担があるからこそ、より良いサービスを安定的に提供し続けることができると言えます。しかし、見えない部分を含めて仕事の役割の違いを理解できていないと、お互いの不満につながってしまいます。そうした事態を避けるために、施設長としての立ち位置や役割を発信し、現場とも情報共有することが大切になってきます。

施設長の仕事内容

施設長の仕事は大きく4つに分けられます。それぞれ紹介していきます。

事業計画の立案と実施

法人理念や施設目標に沿った中長期計画を策定し、質の高いサービスを提供するための戦略を実行します。これには、具体的な目標設定やアクションプランの作成が含まれます。

収支・予算策定と管理

年間の予算計画を立て、資金の適切な配分と効率的な資源利用を行います。また、財務状況を把握し、定期的に会計報告も行います。福祉事業でも利益を生み、安定経営することがご利用者様や働く仲間を守ることにつながります。

他事業者や利用者との関係構築

サービス向上のために、地域コミュニティーや他の福祉サービス提供者とのつながりを構築することも仕事の一つです。自施設のことを考えるのはもちろん重要ですが、地域福祉の担い手であるという視点を持つことも求められます。
その他、ご利用者様やご家族のニーズを理解し、適切な対応やサポートを提供するための策を講じ、信頼関係を構築することも仕事の範囲です。

法令遵守の取り組み

介護保険法をはじめ、定期的に更新される関連する法律や規制を遵守するための取り組みも施設長の役割です。事前に法改正などの情報を収集し準備を進める、法改正があった際には迅速に対応策を講じるなど、適法な施設運営に責任を持ちます。

施設長に必要な能力は?

施設長として仕事を進める上で必要な能力はさまざまですが、ここでは代表的な4つについて紹介します。

リーダーシップ

施設長には強いリーダーシップが求められます。スタッフを指導し、チームを統率することで、事業計画上の目標達成を目指さなければなりません。

コミュニケーション能力

ご利用者様やそのご家族、スタッフ、外部機関との円滑な対話を通じて、信頼関係を築くことも求められます。感受性や共感力をもってご利用者様の心に寄り添うことも必要です。ご利用者様の身体的、精神的なニーズを理解するには高いコミュニケーション能力が必須と言えます。

マネジメント能力

組織運営におけるマネジメント能力も重要です。予算管理、施設の安全基準の維持、質の高いケアサービスの提供など、効率的なオペレーションを確保するための戦略的思考が求められます。
人材に関するマネジメント能力も必要です。仕事を分解して役割や担える層を増やすことで多様な人材を採用する。職員の定着・育成に向けて日常のコミュニケーションを重視し、振り返りやフィードバック、悩みに迅速に対応できる環境や関係づくりを行います。人材不足と言われる中で、そうした能力も施設長には求められます。

学習意欲

介護の質を向上させ、ご利用者様にとって最良の環境を提供するためには、継続的な学びと自己研鑽が大切です。最新のケア技術や福祉に関する知識を更新し続ける、法的知識に基づいた運営のための情報収集など、学習意欲が求められます。

施設長のよくある悩みと解決方法

同じ施設長であっても、就任した経緯によって悩みの内容は変わってきます。ここでは代表的な2つの経緯を例に、よくある悩みと解決方法を紹介します。

現場からのキャリアアップで施設長になった方の悩み

現場のことばかり気になってしまう

現場からキャリアアップした方が陥りがちなのは、現場スタッフとしての意識が強くなってしまうことです。人が足りないときに代わりに現場に出るなど、現場優先で行動できるのは素晴らしいことです。しかし、自分の役割を認識できておらず、どうしても現場に寄りすぎた行動になりがちです。その結果、経営という部分での立ち回りや思考、長期的な活動への準備などがおろそかになるなど、本来やるべき業務が後回しになり、経営層から注意を受けるケースもよくあります。

■解決のポイント
現場意識を大切にしながらも、いま一度自分の立ち位置、施設長と現場スタッフの役割分担について見直すことが大切です。長期的な目線を持ち「サービスが永続的に提供できる状況を維持するために必要なことは何か」を優先し、現場優先で物事を判断し過ぎないよう注意します。

仕事を理解してもらえず、現場からクレームが挙がる

現場スタッフからのキャリアアップであっても、施設長になりたくてなったわけじゃないという方もいることでしょう。前任者の退職によりやむを得ず就任したが現場の方が好きで、施設長の役割にネガティブな印象を感じているのかもしれません。
 
こうした方に多いのが、施設長の業務を理解してもらえず現場からのクレームに過剰に悩んでしまうことです。クレームをきっかけに、「現場スタッフから仕事をしていないと思われているのでは?」「陰口を言われているのでは?」と思い込んでいないでしょうか。

■解決のポイント
必要なのは自身のマインドチェンジです。施設長になりたくても誰もがなれるわけではありません。任命されたことに対する期待をポジティブに受け止め、行動に移す気持ちが大切です。

その上で必要な行動の一つに「情報の見える化」があります。情報を適宜共有し、現場のスタッフと共通認識を持つことです。施設長と現場スタッフでは役割が違うことと、それぞれが何を担っているのかを共有します。施設長に限らず、現場職から管理職になる際は専門的な実務に向けていた視野から管理という大局的な視野へと変わります。自分が担っている役割と共に、スタッフへの期待も一緒に伝え、共有するとお互いの仕事への理解が深まるでしょう。

他職種からの転職で施設長になった方の悩み

介護経験がないことに対し現場が不満を持っている

他職種から転職して施設長になった方に多い悩みは、介護経験がない(浅い)という理由で現場から不満が挙がる状況です。
本来は現場を知らなくても他の能力が高いので施設長を担っているはずです。しかし、現場のスタッフから距離を取られてしまうと仕事がしにくいと感じるかもしれません。

■解決のポイント
必要なのは、介護の仕事をできるようになることよりも、とにかく現場に行ってスタッフとのコミュニケーションをとり、関係性を向上させることです。お互いの人間性を理解するだけで距離感や感じられ方が大きく変わるでしょう。介護職の素人として素直に質問したり、スタッフを褒めたりすることだけでも十分です。

現場の技術、知識、教育は得意なスタッフや主任などに依頼し、自身も学びながら習得していけば問題ありません。何でもできるようになることよりも、餅は餅屋でやりながらお互いの強みを認め、互いに感謝や評価をしていくことが組織づくりの土台につながります。

安心・安全な施設運営のために役割を果たす

施設長は役割や求められる能力が多いことに加え、責任も大きく大変な役職であることは間違いありません。特に施設長としての経験が浅い方は日々悩みも尽きないのではないでしょうか。しかし、それは施設にとって重要な役割であることの現れです。
自身の成長を意識しながら業務をこなすのはもちろん、一人で抱えず現場スタッフにも協力を仰ぎながら業務にあたり、誰もが安心して利用できる施設運営を目指していきましょう。

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