2025年6月17日更新
どうするマイナ保険証の管理?介護施設で預かる際に注意すべきポイントを解説
監修者プロフィール/橘髙 和芳(きったか・かずよし)
たちばな総合法律事務所代表
1998年:京都大学法学部卒業
2000年:弁護士登録
2012~2015年:国税不服審判所勤務
2015年:税理士登録。弁護士・税理士として執務
個人情報やマイナンバーの管理・保管について実際的な方法を関与先・顧問先に指導している。
2024年12月2日より、これまでの健康保険証の新規発行が停止され、医療機関や薬局では、マイナンバーカードの健康保険証(以下、マイナ保険証)の利用を基本とする仕組みに移行しています。これに伴い、介護施設でご利用者様のマイナ保険証を管理するケースも考えられます。しかし、従来の健康保険証に比べて個人情報の取り扱いや情報漏えいのリスクが高まるため、施設としてどのように対応すべきか悩んでいる方も多いでしょう。
そこで今回は、介護施設でマイナ保険証を管理する際の前提知識や注意点について解説します。
そもそもマイナ保険証とは?
マイナ保険証とは、 マイナンバーカードを健康保険証として利用できる仕組みです。これにより医療機関や薬局では、被保険者資格の有効性確認と本人確認をオンライン上で行えるようになります。
マイナ保険証を利用するメリットは、以下の3つがあります。
①より良い医療を受けることができる
患者に同意を得たうえで、医療機関が過去の診療情報や薬剤情報を確認できるため、情報に基づいた総合的な治療が可能になります。初めて受診する医療機関でも、安心して適切な治療を受けられます。
②高額な医療費の立て替えが不要になる
これまで、高額療養費制度*1を適用するには、医療機関の窓口で高額な医療費を一時的に自己負担するか、事前に市区町村で書類申請手続きをする必要がありました。マイナ保険証を利用すれば、事前手続きをしなくても立て替えが免除されます。
③救急搬送時も適切な処置を受けられる
救急搬送時、患者に同意を得たうえで、救急隊員がマイナ保険証を読み取ることで診療情報や服薬情報を確認できます。これにより、搬送先の選定や搬送中の応急措置を適切に行うことができます。
介護施設のご利用者様がマイナ保険証を利用するメリット
介護施設のご利用者様は受診機会が多いため、マイナ保険証の利便性を実感しやすいと言えます。前述の通り、過去の診療情報や服薬情報、特定健診情報が医療機関や薬局間で共有されるため、ご利用者様自身で説明が難しい場合やお薬手帳を紛失した場合にも、正確な情報を伝えられます。多くの種類の薬を服用している場合や、かかりつけ以外の医療機関・薬局を利用する場合、災害時などには特に役立ちます。
施設側としては、ご利用者様の受診歴や服薬情報を医療機関に正確に伝えられるため、情報整理の負担が軽減されます。紙の記録や口頭でのやり取りに頼らず、データを活用することで、伝達ミスや重複投与・併用禁忌のリスクも軽減できます。
介護施設がマイナ保険証を管理する際の懸念
従来の健康保険証には名前や保険者番号のみが記載されていましたが、マイナ保険証は医療情報に加え、税や年金などの個人情報にもアクセスできる仕組みになっています。
施設でマイナ保険証を管理した際、万が一、紛失や暗証番号の漏えいが発生するとその影響は大きく、施設側の責任が問われる恐れもあります。
こうしたリスクを懸念し、マイナ保険証の取り扱いに悩む施設は少なくありません。全国保険医団体連合会が特別養護老人ホーム・介護老人保健施設を対象に行った調査*2によると、保険証の廃止・マイナ保険証の導入に対して以下の不安を感じているようです。
保険証廃止による施設への影響・危惧のアンケート結果
同調査では、94%の施設が「利用者・入所者のマイナカードを管理できない」と回答しており、現場における不安の大きさが浮き彫りになっています。
介護施設でマイナ保険証を管理する際の対策
マイナ保険証は原則として、本人による管理が国から推奨されています。しかし、ご利用者様の中には自身での管理が難しい場合もあるため、どうしても管理が必要になった際の対策を考えておく必要があります。
入所契約書で合意する
トラブルを未然に防ぐために、マイナ保険証を保管する目的や取り扱い方について、入所契約書や預かり証を通じてご利用者様やご家族と合意を取っておきましょう。入所契約書には、以下のような内容を含めます。
入所契約書の項目例
鍵付きのロッカーに保管し、記録をつける
保管環境の整備も不可欠です。マイナ保険証は鍵付きのロッカーなど安全な場所で保管し、保管した日時、取り出し・戻し日時、職員の名前などを記録しておきます。これにより、紛失などのリスクを抑えられますし、万が一トラブルが発覚した際にも、「いつ」「誰が」「どのように」取り扱ったかを追跡できるため、管理の透明性を確保できます。
管理する職員を限定する
管理を担当する職員の範囲を定めて、必要以上の職員が取り扱わないようにします。情報漏えいのリスクが最小限になり、責任の所在も明確になります。管理担当者には、取り扱いに関する教育や研修を行うとともに、職員全員を対象に基本的なルールを周知しておくことで、施設全体でトラブル防止への意識を高められます。
暗証番号は特に慎重に扱う
マイナ保険証の保管において最も注意すべきなのは、暗証番号の管理です。個人情報の漏えいを防ぐため、国は法定代理人以外による管理を推奨しておらず、施設が暗証番号を預かることは避けるべきとされています。
そのため、暗証番号の管理が不要な「顔認証付きマイナンバーカード」へ切り替えを進める施設も多いようです。このカードであれば、暗証番号の設定が不要であり、本人確認は顔認証や目視確認に限定されるため、暗証番号の管理に関する不安が解消されます。ただし、マイナポータルの利用やオンライン診療・服薬指導での保険証としての利用が制限されるため、ご利用者様やご家族の了承を得たうえで、切り替えを進める必要があります。
総務省から「福祉施設・支援団体の方向け マイナンバーカード取得・管理マニュアル」が発行されていますので、詳しい管理方法についてはそちらもご確認ください。
まとめ
マイナ保険証の利用にはメリットも多い一方で、介護施設での管理には大きな責任を伴います。国や自治体から示される運用方法やガイドラインを遵守しつつ、施設内での管理体制を整えていくことが求められます。
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