2021年11月18日時点
高齢者介護施設における新型コロナウイルス感染症関連情報
新型コロナウイルス感染症 変異株について
一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で少しずつ変異をしていきます。新型コロナウイルスも約2週間で一箇所程度の速度で変異していると考えられています。新たな変異株が世界各地で確認されており、こうした変異株に対して警戒を強めていく必要があります。
参考文献:
厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A 2ー2. 変異株について 問2 利用:2021年10月8日
■デルタ株について
現在、世界各国で猛威を振るっているデルタ株は、従来株と比較して感染性や重篤性が上昇しているとされ、日本でも置き換わっている状況です。国立感染症研究所は、「SARS-CoV-2陽性検体に占めるL452R変異を有する検体の割合は、東京・埼玉・千葉・神奈川で99%、大阪・京都・兵庫で96%と推定(2021年8月23日時点)されている。」としています。
参考・引用文献:
国立感染症研究所 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について(第13報)
国立感染症研究所 表 新型コロナウイルスの懸念される変異株(Variants of Concern; VOCs) 2021.8.2812:00時点
従来型、アルファ株、デルタ株の感染性等の比較
アルファ株
デルタ株
感染性(従来株比)
1.32倍と推定*1
(5〜7割程度高い可能性)
高い可能性
(アルファ株の1.5倍高い可能性)
重篤性(従来株比)
1.4倍(40-64歳 1.66倍)と推定*1
(入院・死亡リスクが高い可能性)
入院リスクが高い可能性
ワクチンの発症、感染に対する
有効性(従来株比)
発症、感染に対して不変
発症と感染に対して減弱の可能性が
あるものの、重篤化に対しては不変
新型コロナウイルス感染症対策推進本部 「資料4 新型コロナウイルス感染症(変異株)への対応」厚生労働省と「表 新型コロナウイルスの懸念される変異株 (Variants of Concern; VOCs) 2021.8.28 12:00時点」国立感染症研究所 を参考に作成
引用文献:
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策推進本部 資料4 新型コロナウイルス感染症(変異株)への対応 利用:2021年10月8日
国立感染症研究所 表 新型コロナウイルスの懸念される変異株 (Variants of Concern; VOCs) 2021.8.28 12:00時点
■変異株に対する感染対策
変異株であっても基本的な感染予防策は、3密(密集・密接・密閉)対策や、適切なマスクの着用、手洗いの徹底など、これまでと同様に有効とされています。引続き感染対策を続けていくことが重要です。
参考文献:
厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A 2ー2. 変異株について 問3 利用:2021年10月8日
■ブレイクスルー感染
ワクチンの有効率は100%ではなく、接種した後でも新型コロナウイルスに感染する可能性があります。CDCは「新型コロナウイルスワクチンを完全※に接種しても感染してしまう人がいる。これはブレークスルー感染と言われている。」としています。
介護施設等でもブレイクスルー感染が報告されています。9月27日~10月3日における日本のワクチン接種歴別の人口当たりの新規陽性者数(10万人対)は、65歳以上の未接種者で12.6人、2回接種後では1.5人とされ、少ない数ではありますがブレイクスルー感染が発生しています。しかしCDCは「ワクチン接種によって新型コロナウイルス感染症が軽くなる可能性があるという証拠がある。感染、入院、死亡のいずれのリスクも、ワクチンを接種した人は接種していない人に比べてはるかに低い。」としており、新型コロナウイルスワクチンは有効であるとされていますが、ワクチンの有効率は100%ではないため、引き続き感染予防対策を継続していく必要があります。
参考資料:
厚生労働省 第54回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 令和3年10月6日 資料2-4 全国の新規陽性者数等及び高齢者のワクチン接種率等
引用文献:
CDC COVID-19 Vaccines Work Updated Aug. 16, 2021 利用:2021年10月8日
■新型コロナウイルスワクチンの追加接種(3回目接種)について
令和3年9月17日に開催された厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会にて新型コロナウイルス感染症の国内発生動向、ワクチン接種状況、ワクチンの免疫原性の推移と、有効性の持続期間、諸外国対応状況などから、交互接種、他疾病のワクチンとの同時接種、既感染者への新型コロナワクチン接種等、追加接種について審議されました。
追加接種(3回目接種)については、「行う必要があり、その実施の時期は2回接種完了から概ね8か月以上後とすることが妥当である。」としています。
新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施期間は令和3年2月17日から令和4年2月28日までです。追加接種を実施するに当たっては、当該接種を予防接種法に位置付ける必要があることから、延長の方向で検討されています。時期については、早ければ令和3年12月から開始することを想定しています。
接種対象者やワクチンの種類については、「人口全体を対象として追加接種を実施する、ハイリスク者に限定して追加接種を実施する、引き続きエビデンスを注視するなど、諸外国の対応状況は様々である。」としており、科学的知見や諸外国の状況を踏まえ判断するとしています。
参考・引用文献:
厚生労働省 事務連絡 令和3年9月22日 新型コロナワクチン追加接種(3回目接種)の体制確保について
厚生労働省 第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 2021年9月17日 資料1 新型コロナワクチンの接種について
■高齢者施設における感染対策の更なる推進について
厚生労働省は、「高齢者施設における感染対策については、普段からの健康管理や手指消毒等の基本的な感染対策が重要であるとともに、施設関係者に新型コロナウイルス感染者や濃厚接触者が出たことを想定したシミュレーションの実施も有用です。」としています。各自治体でも高齢者施設の感染拡大防止に係る取組が実施されており、厚生労働省は取組をまとめたホームページを作成しています。
各自治体の新型コロナウイルス感染症対策の取組に関しては、下記のサイトをご確認下さい。
厚生労働省
自治体における新型コロナウイルス感染症対策に係る取組について
施設での感染対策
新型コロナウイルスは、高齢者と基礎疾患がある方については重症化しやすいため、感染経路を絶つことが重要です。そのために、日常的に実施していただく「標準予防策」に加え、「感染経路別予防策」を実施する必要があります。この基本的な対策方法を踏まえて新型コロナウイルスを「持ち込まない」「広げない」ことに留意して具体的な対策を実施しましょう。
■標準予防策
標準予防策は感染対策の基本となる考え方です。全ての血液、体液、分泌物(喀痰等)、嘔吐物、排泄物、傷のある皮膚、粘膜等は感染源となり、感染する危険性があるものとして取り扱うという考え方です。そして、この対策は感染者、非感染者を問わずに実施される対策です。
標準予防策は以下の10要素で構成されています。これらは、医療施設での対策を考慮したものなので、介護を提供する施設においては、①手指衛生から⑧咳エチケットを実施していく必要があります。
①手指衛生
流水と石けんを用いた手洗いと、アルコール手指消毒剤を用いた手指消毒をさす
➁個人防護具
手袋、マスク、ガウン、エプロン、ゴーグル、フェイスシールド等の感染から身を守るために着用するもの
③医療器材・器具・機器の取り扱い
使用した器具や機器をその種類や使用方法に応じて、洗浄・消毒・滅菌などの管理を行うこと
④環境整備
患者、利用者のケア区域内の清掃と消毒のこと
⑤リネンの取り扱い
リネンに付着した病原体が、人や周囲の環境に拡散しないように取り扱う方法のこと
⑥患者配置
病原体が人や周囲の環境に拡散しないように患者を配置、移動をする方法のこと
⑦職業感染防止
血液媒介病原体(HBV/HCV/HIVなどのウイルス性疾患等)への曝露を防止し、感染を防ぐこと
⑧咳エチケット
呼吸器病原体の伝播を防ぐために行う対応のこと
参考資料:
厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
CDC. Guideline for isolation precautions : Preventing transmission of infectious agents in healthcare settings, 2007.
施設内での手指衛生、咳エチケットの啓発にポスターをご活用ください
■感染経路別予防策
新型コロナウイルス感染症は飛沫感染、接触感染の可能性があるため、標準予防策に加え、飛沫予防策・接触予防策を実施することが必要となります
飛沫感染
接触感染
定義
患者の気道から出た病原性微生物が、飛沫(咳、くしゃみ等)を介してヒトに伝播すること。2m以内の範囲で伝播の恐れがあると言われている。
病原性微生物が感染者から他者へと伝播、あるいは汚染された物あるいはヒトの介して伝播すること。
主な対策
■ウイルスを持ち込まない
■ウイルスを拡げない
厚生労働省が示した感染対策マニュアル等に基づき下記のような対策を行う。
■濃厚接触が疑われる利用者に対する個別のケア時の感染対策
食事の介助等
清潔・入浴の介助等
排泄の介助等
リネン・衣類の洗濯等
ゴミの処理等
参考資料:
厚生労働省 事務連絡 社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について (その2)(一部改正)(令和2年10月15日)
厚生労働省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版(2019年3月)」
一般社団法人 日本環境感染学会「高齢者介護施設における感染対策 第1版」
CDC. Guideline for isolation precautions : Preventing transmission of infectious agents in healthcare settings, 2007.
新型コロナウイルス感染症とは
「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」はコロナウイルスのひとつです。コロナウイルスには、一般の風邪の原因となるウイルスや、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」や2012年以降発生している「中東呼吸器症候群(MERS)」ウイルスが含まれます。
引用・参考資料:
厚生労働省 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
■症状
多くの症例で発熱、呼吸器症状(咳、咽頭痛、鼻汁、鼻閉など)、頭痛、倦怠感など、インフルエンザや感冒に初期症状が似ている他に、嗅覚症状・味覚症状を訴える患者も多く、また、高齢者、基礎疾患(慢性呼吸器疾患、糖尿病、心血管疾患など)がハイリスク要因と考えられています。
■感染経路
新型コロナウイルスへの感染は、ウイルスを含む飛沫が口、鼻や眼などの粘膜に触れることによって感染が起こる飛沫感染が主体と考えられていますが、ウイルスがついた手指で口、鼻や眼の粘膜に触れることで起こる接触感染もあるとされています。また換気の悪い環境では、咳やくしゃみなどがなくても感染すると考えられています。このため、3密を避ける対策が重要です。
有症者が感染伝播の主体ですが、発症前や、無症状病原体保有者からの感染リスクもあり、発症前後の時期に最も感染力が高いとの報告がされています。また、約半数は無症状病原体保有者から感染するとの報告もあり、注意が必要です。
また、血液、尿、便から感染性のある新型コロナウイルスを検出することはまれとされています。
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