コラム

2024年4月30日更新

入浴介助の熱中症リスク 介護職員も対策を

監修者 三宅康史氏のプロフィール写真

監修者プロフィール/三宅 康史(みやけ・やすふみ)
帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センター長・帝京大学医学部救急医学講座教授
環境省の「熱中症予防声かけプロジェクト」実行委員長
日本臨床医学リスクマネジメント学会 理事長
日本交通科学学会 副理事長
日本自殺予防学会 理事、日本神経救急医学会 理事、日本脳神経外科救急医学会 理事
日本救急医学会 指導医、日本外傷学会 専門医、日本脳神経外傷学会 専門指導医、日本集中治療医学会 専門医、など
執筆・監修書籍「熱中症ポケットマニュアル」(中外医学社)、「入院時重症患者対応メディエーター養成テキスト」(へるす出版)、「神経外傷診療ハンドブック」(メディカルビュー社)、精神科救急AtoZ(日本医事新報社)、「ドクター便利帳 輸液再確認!!」「緊急検査 すぐ確認!!」(ぱーそん書房)、「救命救急・集中治療エキスパートブックR35」(日本医事新報社)、「妊産褥婦メンタルケアガイドブック」(へるす出版)ほか

高齢者介護施設では、ご利用者様の安全と快適さを確保することが最優先ですが、同時にスタッフ様の健康にも目を向けることが重要です。特に夏の介護現場は、スタッフ様にとっても注意が必要な熱中症のリスクをはらんでいます。

今回は、特に熱中症のリスクが高いとされる入浴介助時の対策についても解説します。

室内でも熱中症の恐れあり!?

夏場、エアコンを作動させていたとしても日が当たる場所では温度が高くなります。また、ご利用者様が過ごしやすい温度(28度前後)に設定されているケースも多いと思います。

ご利用者様にとっては快適な温度でも、移乗介助、排泄介助などをはじめ、多くの仕事で動き回っているスタッフ様にとって決して涼しい環境とは言えません。しかし、室内の設定温度を下げるわけにもいかないため、個人ごとに暑さ対策をしているのではないでしょうか。

特に注意したいのが入浴介助です。浴室は温度・湿度ともに高く、身体を使う作業も多いため熱中症リスクは高いと言えるでしょう。

入浴介助の熱中症対策

蒸し暑い浴室での介助は体温が上昇しやすい上に、ご利用者様の体を支えたりすることで体力を消耗し熱中症リスクが高まります。加えて、近年は感染症対策として入浴介助中もマスクを着用する機会が多く、体の熱がこもりやすくなっていることも熱中症リスクを高くしている要因と言えます。
そうした状況下で入浴介助をするときの熱中症対策は以下の3つが効果的です。

介助前~終了後まで十分な水分補給

入浴介助の前には必ず水分補給をしましょう。介助中も近くに飲み物を置き、「1人対応したら飲む」のようにタイミングを決めて、こまめに水分を取るよう心がけます。2015年に日本静脈経腸栄養学会雑誌(現:日本臨床栄養代謝学会)に掲載された研究報告によると、「入浴介助業務では、どの季節においても体液減少が認められ、減少を補水するためには少なくとも1時間あたり200mL程度の水分摂取が必要となる」1)とされています。
入浴介助は重労働なので塩分と糖分が含まれたスポーツドリンクを飲むこともおすすめです。

  • 1)
    田中明美,谷口英喜,牛込恵子,工藤雄洋,上島順子,阿部咲子,苅部康子「介護現場における入浴介助者の体液の変動に関する検討」日本静脈経腸栄養学会雑誌(現:日本臨床栄養代謝学会)より引用

保冷剤などで首や脇の下を冷やす

保冷剤などを使って体温を下げることも効果的です。首・脇・足の付け根など大きな血管が通るところを中心に冷やすとより効果的です。仕事中は首に巻く保冷剤を常用し、休憩時には脇の下、足の付け根の前側に保冷剤を当てて冷やしましょう。

入浴介助は交代で行う

施設管理者様やリーダーの方は、しっかり休憩を取れるスケジュールと人員配置を組む配慮が必要です。現場の安全と労務管理上でも重要なポイントとなります。

また、現場のスタッフ様もお互いにコミュニケーションを取りながら、1人に負担がかかっていないか気にかけることが大切です。声を掛け合い、体調の悪い人がいないか適宜確認しましょう。

基本的な熱中症対策

ここからは、普段の生活も含めた基本的な熱中症対策についてご紹介します。環境省の「熱中症予防情報サイト」によると、熱中症を引き起こす要因は主に以下の3つに分けられます。要因ごとに取り入れたい対策を紹介します。

要因1 環境

気温が高い、湿度が高い、風が弱い、日差しが強いなど

要因2 からだ

寝不足による体調不良、二日酔い、過労、体力の消耗など

要因3 行動

激しい筋肉運動、水分補給の不足など

【要因1 環境】室内温度・湿度を下げる

室内でも高温多湿で不快指数が高い環境では熱中症になりやすくなります。環境省によると夏場の快適な温度は28度以下、湿度は55~65%が目安とされています。しかし、エアコンで28度に設定しても実際はそれ以上の温度になっていることも多くあります。こまめに室内の温度計を確認して、快適な温度を保てるように調整しましょう。湿度が高い場合は除湿機能を使うことも有効です。また、扇風機を使って室内の空気を循環させることで体感温度を下げられます。エアコンや扇風機の風が苦手なご利用者様がいる場合、送風の向きに配慮しましょう。

【要因2 からだ】体調を整える

熱中症を防ぐには、体調を整えておくことも大切です。

夏野菜で栄養補給

夏は汗を多くかくため、身体の水分が失われやすくなります。夏野菜には水分が多く、体調管理に必要なカリウムやビタミンも含まれているため、積極的に食事に取り入れましょう。

<夏が旬の野菜・果物>
トマト・キュウリ・ゴーヤ・ナス・トウモロコシ・スイカ・ライチなど

適度な運動と十分な睡眠

体温調節には自律神経が重要な役割を果たしますが、適度な運動は自律神経のバランスを整え、体表からの放熱や汗をかく能力を高めるのに役立ちます。夏は室内でのラジオ体操や、涼しい時間帯のウォーキングなどがおすすめです。

睡眠について、厚生労働省は「健康づくりのための睡眠ガイド2023」で1日に6時間以上を目安として必要な時間を確保すること、としています。ただし、休日に長時間まとめて睡眠をとることはリズムを崩してしまうので逆効果です。毎日、規則正しく、同じ時間帯に就寝し、十分な睡眠時間を確保するよう心がけましょう。夜勤業務がある場合の生活リズムの整え方については「夜勤の負担を軽減しスタッフ様を守るために施設ができることとは?」 もご覧ください。

【要因3 行動】こまめな水分補給

「健康のため水を飲もう推進委員会」(後援:厚生労働省)によると、成人の場合、熱中症や脱水症状を防ぐために、食事中の水分とは別に1日約1.2Lの水を飲むことが推奨されています。しかし、忙しく業務に携わっている職員は自身の水分補給を忘れがちです。
職員が水分補給をする時間を設定する、ご利用者様に水分補給を促すタイミングで職員も水を飲むなど、個人ではもちろん、職場としてルール化するのも効果的です。

正しい熱中症対策で夏を健康的に乗り切る

質の高いケアを提供できるのは、スタッフ様の健康があってこそです。こまめな水分補給・適切な体調管理とスケジュール管理などの対策をして、夏を健康的に乗り切りましょう。

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