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感染対策の基礎知識

2024年8月2日更新

高齢者介護施設の感染リスク

抵抗力の弱いご高齢者は感染のリスクが高く、病院や介護施設におけるインフルエンザノロウイルスの集団感染の例も後を絶ちません。ご利用者様に安心で快適な生活を送っていただくために、徹底した感染対策が求められます。

感染経路と標準予防策(スタンダード・プリコーション)

介護施設の感染対策では、日常的に標準予防策を実施し感染経路を遮断することが重要です。
感染症は ①感染源 ②感染経路 ③感受性宿主 の3つの要素が揃うことで成立します。感染対策においては、これらの要素をひとつでも取り除くことが重要です。
特に、「感染経路の遮断」は感染拡大を防止するために重要な対策となります。

感染成立の3つの要素

 感染成立の3要素を表すイラスト。感染源、感染経路、感受性宿主の3つがあって感染が成立する。感染源とは、感染の原因となる細菌やウイルスを含んでいるもの。電波経路には接触感染、飛沫感染、空気感染がある。感受性宿主については、感受性に影響する因子の例として、年齢、基礎疾患、栄養状態などがある。

 感染成立の3要素を表すイラスト。感染源、感染経路、感受性宿主の3つがあって感染が成立する。感染源とは、感染の原因となる細菌やウイルスを含んでいるもの。電波経路には接触感染、飛沫感染、空気感染がある。感受性宿主については、感受性に影響する因子の例として、年齢、基礎疾患、栄養状態などがある。

 感染成立の3要素を表すイラスト。感染源、感染経路、感受性宿主の3つがあって感染が成立する。感染源とは、感染の原因となる細菌やウイルスを含んでいるもの。電波経路には接触感染、飛沫感染、空気感染がある。感受性宿主については、感受性に影響する因子の例として、年齢、基礎疾患、栄養状態などがある。

感染経路の遮断が重要

主な感染経路には「空気感染」「飛沫(ひまつ)感染」「接触感染」の3つがあります。
空気感染は空気中を浮遊する飛沫核や、ほこりの中に存在する微生物を吸い込むことで感染するものです。飛沫感染は咳やくしゃみなどで飛び出した病原体に触れたり、吸い込んだりして感染します。
接触感染は感染経路によってさらに「直接接触」と「間接接触」の2種類に分けられます。直接接触とは、感染者の皮膚や粘膜に直接触れて感染することで、間接接触とは、感染者が使用した食器やドアノブなどに触れて感染することを指します。

■主な感染経路
・空気感染 ・飛沫感染 ・接触感染(経口感染含む) ・血液媒介感染

主な感染経路と原因微生物

感染経路

特徴

主な原因微生物

接触感染
(経口感染含む)

手指・食品・器具を介して伝播する頻度の高い伝播経路である。

ノロウイルス
腸管出血性大腸菌
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
(MRSA)
緑膿菌 など


飛沫感染

咳・くしゃみ・会話などで、飛沫粒子(5μm以上)により伝播する。
1m以内に床に落下し、空中を浮遊し続けることはない。

インフルエンザウイルス
ムンプスウイルス
風しんウイルス
レジオネラ属菌 など


空気感染

咳・くしゃみなどで、飛沫粒子(5μm以下)により伝播する。
空中に浮遊し、空気の流れにより飛散する。

結核菌
麻しんウイルス
水痘ウイルス など


血液媒介感染

病原体に汚染された血液や体液、分泌物が、針刺し事故等で体内にはいることにより感染する。

B型肝炎ウイルス
C型肝炎ウイルス
ヒト免疫不全ウイルス(HIV) など


介護施設でインフルエンザやノロウイルスなどの感染症が発生するのは、施設外部から持ち込まれるケースが多いといわれています。
感染対策には「病原体を持ち込まない・持ち出さない・広げない」―この3つの考え方が基本です。その中でも「病原体を持ち込まない」対策を意識しましょう。
また感染対策の知識を深めるために感染対策委員会を設け啓発を行うなど、組織的な取り組みも必要です。

高齢者介護施設における感染対策

 感染経路の遮断を表した図。高齢者介護施設内では、職員・入所者間で病原体を持ち出さないこと、設備・物品を通して感染を拡げないこと、また、委託業者や面会者などの外部環境から施設へ病原体を持ち込まないことが表されている。

 感染経路の遮断を表した図。高齢者介護施設内では、職員・入所者間で病原体を持ち出さないこと、設備・物品を通して感染を拡げないこと、また、委託業者や面会者などの外部環境から施設へ病原体を持ち込まないことが表されている。

 感染経路の遮断を表した図。高齢者介護施設内では、職員・入所者間で病原体を持ち出さないこと、設備・物品を通して感染を拡げないこと、また、委託業者や面会者などの外部環境から施設へ病原体を持ち込まないことが表されている。

参考:厚生労働省老健局「介護現場における(施設系 通所系 訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第3版」

標準予防策(スタンダード・プリコーション)とは

介護施設の感染対策では、日常的に標準予防策(スタンダード・プリコーション)を実施し感染経路を遮断することが重要です。
スタンダード・プリコーションとは、医療・ケアを提供するすべての場所で適用される感染予防策で、標準予防策とも呼ばれます。感染症の有無に関わらず、あらゆるご利用者様・患者様に対して普遍的に適用される予防策です。「汗を除くすべての血液、体液、分泌物、損傷のある皮膚・粘膜は感染性病原体を含む可能性がある」という原則に基づき、手指衛生や個人防護具(マスクやガウン他)の着用など感染リスクを減少させる予防策を示しています。
医療・介護の現場において感染予防の基本となる対策はスタンダード・プリコーションの日常的遵守です。下記にその標準予防策の10項目を示します。

スタンダード・プリコーションが成立するまで

1985年、米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病管理予防センター)は医療機関などを想定した感染対策として、ユニバーサル・プリコーションを提唱しました。

米国CDCは世界最大の感染症対策組織です。日本の厚生労働省に相当する組織で、国内外の公衆衛生の管理・維持を目的としています。CDCは手洗い、院内感染防止、歯科医療での感染制御など、医療現場で指針となるガイドラインを公表しています。多くの文献やデータを網羅しているCDCのガイドラインは、世界標準として信用されています。

ユニバーサル・プリコーションは主に医療従事者を対象に、血液由来の病原体(HIVウイルスなど)から守るための予防策でした。これををすべての患者に適用できるよう改良したものが、1996年に米国CDCによって発表されたスタンダード・プリコーションです。
スタンダード・プリコーションでは主に「血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜など」を感染の危険性があるとして取り扱うことを勧めています。

感染対策の啓発にご活用ください

花王プロフェッショナル・サービス「業務改善ナビ」では啓発ポスターなどのダウンロードコンテンツや、
施設内での勉強会にご活用いただける動画を公開しています。衛生管理の啓発等にぜひご活用ください。

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