コラム

2019年4月16日更新

介護医療院に移行するメリットとは?【前編】

2018年4月より創設された「介護医療院」。医療と介護のニーズに応えるための生活施設で、医療的ケアや介護はもちろん、看取り・ターミナルケアまでの全てを担います。政府は療養病床の廃止を決定し介護医療院への転換を促していますが、まだ移行を検討中の事業者や経営者の方も多いのではないでしょうか。

今回は、介護医療院へ転換するメリットや注意点を前後編の2回に分けてご紹介します。 前編では、介護医療院の「創設された経緯」や「Ⅰ型とⅡ型の違い」といった基本情報に加え、2018年末時点の開設状況などをご紹介します。

 
1. 2018年より創設された「介護医療院」とは

介護医療院とは、ご利用者様に医療・介護サービスを提供する長期療養・生活施設です。介護保険施設の一種ですが、日常的な医学管理や生活支援に加えて看取り・ターミナルケアまで担い、「医療と介護を提供する生活施設」である点が特徴です。

介護医療院に求められる役割

  • ご利用者様が長期にわたって暮らせる設備
  • 経管栄養や喀痰吸引等などの医療的ケアに対応できる環境
  • 看取りやターミナルケアを実施できる人員と体制

高齢化が進む日本社会では、重篤な身体疾患のある方や、ターミナルケアを必要とするご高齢者様を受け入れる施設が求められています。介護施設・病院の病床不足を解決するために、介護医療院が活躍すると期待されています。

介護医療院が創設された背景

介護医療院は2012年以降新設が認められていない介護療養病床の転換先の一種として創設されました。
以前まで、療養病床には医療的ケアを目的とした医療療養病床と、介護をメインとした介護療養病床がありました。しかしその使い分けが曖昧であることや、医療施設であるにも関わらず介護保険が適用されるなどの課題があり、療養病床の再編成が必要とされたのです。
そこで2018年、慢性期の医療・介護ニーズに対応する施設として、介護医療院が創設されました。政府は補助金等の支援策を講じて、療養病床から介護医療院への転換を進めていく姿勢です。なお、介護療養病床は2024年3月31日を期限に廃止とされています。

Ⅱ型介護医療院への移行で人件費軽減も

介護医療院には、施設として独立した単独型の介護医療院と、病院・診療所などの医療機関に併設される医療機関併設型介護医療院があります。さらにそれぞれは医療的ケアを重視するⅠ型介護医療院と、比較的容体の安定したご利用者様を受け入れるⅡ型介護医療院に分類されます。医師や介護職員についてはⅠ型・Ⅱ型に求められるニーズに合わせて人員基準が異なっています。

Ⅰ型介護医療院

Ⅱ型介護医療院

基本的性格

要介護高齢者の長期療養。生活施設


設置根拠

介護保険法

  • 生活施設としての機能重視を明確化

主な利用者像

重篤な身体疾患を有する者
及び身体合併症を有する者
認知症高齢者等

左記と比べて、
要体は比較的安定した者


施設基準

医師48対1
(ただし施設として3以上)
看護職員6対1
介護職員5対1

100対1(施設で1以上)
看護職員6対1
介護職員6対1


面積

老健施設相当(8㎡/人)


低所得者への配慮

補足給付の対象


Ⅰ型介護医療院ではご利用者様5名に対して1人の割合で介護職員を配置する基準です。介護療養病床の基準は6:1でしたから、生活施設としての機能を強化する意味で、より介護職員を手厚く配置した基準と言えるでしょう。一方でⅡ型介護医療院は療養病床と比較して人員基準が緩和されており、転換後は人件費軽減などのメリットが見込まれています。

医師の宿直が必須となる

介護医療院は24時間サービスを提供するため、Ⅰ型介護医療院では医師の宿直が必須となっています。また、夜勤体制についてはⅠ型・Ⅱ型ともに看護職員・介護職員に対して下記の規定があります。

  1. 看護職員又は介護職員が施設全体(介護医療院全体)で2人以上
  2. 施設全体(介護医療院全体)で看護職員が1人以上
  3. 入所者数が30又はその端数を増すごとに看護職員又は介護職員が1人以上

最近は24時間看護師を配置している介護療養型老人保健施設も増えていますが、それに加えて、宿直可能な医師や夜勤できる人材の確保が一つの課題となるでしょう。

 
2. 介護医療院の開設状況

2018年4月より始まった介護医療院ですが、同年12月時点で113カ所の介護医療院が開設され、総ベッド数は7,414床となっています。施設ごとの状況を見ると、病院の介護療養病床からの転換が最も多く、次いで介護療養型老人保健施設からの転換が進んでいるようです。

転換元の上位3種

  1. 介護療養(病院)から:4,551床
  2. 介護療養型老健施設(転換老健)から:1,722床
  3. 医療療養(2018年度改定後の療養病棟入院基本料1・2)から:638床

■介護医療院の開設状況について

 介護医療院の開設状況を表した表。2018年12月31日時点で113カ所の介護医療院が開設されたことがわかる。

出典:厚生労働省老健局老人保健課「介護医療員の開設状況について」を元に作成
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000377360.pdf

また、独立行政法人福祉医療機構が実施した「療養病床の今後の方向」に関するアンケート調査(2017年)によると、介護療養病床の転換先としてⅠ型介護医療院を検討している施設が多数あることが分かります。さらに、転換予定時期については「2017年度」「2018年度」が計57.7%という報告もあり、早期転換を検討する事業所が少なからず存在していた事実が伺えます。ただ、18年末の開設状況を都道府県別にみると東京都、大阪府などの大都市を抱える都府県はゼロと、地域差もあるようです。

転換予定時期(介護療養)

介護療養の転換予定時期を表したグラフ。2017年:17.3%、2018年:40.4%、2019年:5.8%、2020年:13.5%、2021年:5.8%、2022年:1.9%、2023年:15.4%

出典:独立行政法人福祉医療機構「「療養病床の今後の方向」に関するアンケート調査結果について」を元に作成
http://www.wam.go.jp/content/files/pcpub/top/scr/r20171005.pdf

介護医療院への転換促進のために設けられていた「移行定着支援加算」は2021年3月に終了しましたが、都道府県ごとに転換補助金制度があり、転換に必要な設備整備や改修費などに対し支援を受けられます。詳しくは各都道府県のホームページや担当課にお問い合わせください。

 
3. まとめ:日々の情報収集も忘れずに

前編では、介護医療院の基礎知識の部分をご紹介しました。転換を考えている経営者の方は、当然ながら介護医療院という新たな施設について十分に理解する必要があります。加えて、移行期間の延期などの方針変更に備え、日々政府の動向をチェックすることも求められるでしょう。
 
後編では、転換に伴うインセンティブとしての加算や、施設改修のポイントなどについてご紹介します。

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