コラム

2019年5月21日更新

介護医療院に移行するメリットとは?【後編】

2018年4月より創設された「介護医療院」。医療と介護のニーズに応えるための生活施設で、医療的ケアや介護はもちろん、看取り・ターミナルケアまでの全てを担います。政府は療養病床の廃止を決定し介護医療院への転換を促していますが、まだ移行を検討中の事業所や経営者の方も多いのではないでしょうか。

今回は、介護医療院へ転換するメリットや注意点を前後編の2回に分けてご紹介します。前編では介護医療院の基本情報と開設状況などをご紹介しました。後編では、移行に伴い期限付きで加算できる移行定着支援加算や、施設改修のポイントなどをご紹介します。

 

2021年3月まで算定される「移行定着支援加算」が大きい    

介護医療院へ移行するメリットの一つが「移行定着支援加算」です。一定の条件を満たすと、介護医療院へ転換した日を起算日として、1年間に限り1床ごと、93単位/日が加算されます。

移行定着支援加算の算定条件

  • 介護療養型医療施設、医療療養病床又は介護療養型老人保健施設から転換した介護医療院である場合
  • 転換を行って介護医療院を開設した等の旨を地域の住民に周知するとともに、当該介護医療院の入所者やその家族等への説明に取り組んでいること。
  • 入所者及びその家族等と地域住民等との交流が可能となるよう、地域の行事や活動等に積極的に関与していること。

仮に1単位=10円とすれば1日当たり930円、1年間で930円×365日=33万9450円、つまり1床当たり年間34万円が加算されます。病床数が100床であればおよそ3400万円/年の加算です。

病床数が100床のA病院とB病院が介護医療院へ転換した際の転換タイミングの違いによる「移行定着支援加算」の差を表した図。A病院は2020年4月1日に介護医療院へ転換し、2021年3月31日までの1年間で約3400万円の加算であるのに対して、B病院は2021年1月1日に介護医療院へ転換し、2021年3月31日までの3ヶ月で約820万円の加算となる。

ただし算定の期限は2021年3月31日までとされているため、1年間分きっちりと算定するためには遅くとも2020年4月1日までに介護医療院へ転換する必要があります。仮に2021年の1月に移行したとしても加算されるのは3月までの3カ月分のみであり、4月以降の期間は算定対象外となるので注意してください。

「療養環境減算」に注意

加算が設けられている一方で、減算への注意が必要です。

下記の場合、「療養環境減算」としてそれぞれ25単位/日の減算が行われます。

  • 施設内の廊下幅が1.8m(中廊下2.7m)未満の場合
  • 療養室の面積が1人当たり8.0 m²未満の場合

両方満たしていなければ50単位/日の減算です。

ベッド数100床の介護医療院を例に、1年間で算定される加算と減算の金額を計算してみましょう。

移行定着支援加算

1単位=10円として1日当たり930円の加算
930円×365日=33万9450円 1床当たり年間33万9450円
33万9,450円×100床=3394万5000円 100床で1年当たり3394万5000円の加算

療養環境減算

1単位=10円として1日当たり500円の減算
500円×365日=18万2500円 1床当たり年間18万2500円
18万2,500円×100床=1825万5000円 100床で1年当たり1825万5000円の減算

3394万5000円-1825万5000円=1569万円

移行定着支援加算と療養環境減算の比較

ベッド数100床の介護医療院を例とした場合、移行定着支援加算は1年間で3千3百9十4万5千円だが、療養環境減算の対象である場合1千5百6十9万円になってしまうことを表わしたグラフ。

単純計算ではありますが、100床の介護医療院が減算を受けると、本来3394万円受け取れる金額が1569万円まで減ってしまうことが分かりました。療養環境減算はかなり大きな影響を与えると言えるでしょう。

移行に伴う施設改修のポイントとは?

介護医療院はご利用者様が生活する療養室について「定員4名以下・床面積は8m²/人以上・ナースコールを設置する」などの条件があります。介護療養型医療施設(6.4m²/人以上)と比べて広くなるため、移行の際には見直しが必要になります。
介護療養病床などから転換した介護医療院については、「大規模改修までの間、床面積を6.4m²/人以上で可とする」という経過措置も設けられていますが、経過措置として認められた基準であっても療養環境減算は対象となるため、経過措置での移行を考えている事業者の方は注意が必要です。

  • ※1
    介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年1月18日厚生労働省令第5号)第5条より引用
  • 家具、パーティション、カーテンなどの組み合わせにより、入所者のプライバシーを確保していることを表した図。

  • カーテンのみで仕切られている場合を表した図と、パーティション等がなにもないような場合を表した図。

介護医療院は生活施設としての機能があるため、プライバシーへの配慮も欠かせません。カーテンの仕切りのみでは不十分とされていますから、家具・パーテーションで空間を区切り、音や視線の遮断が必要です。さらに、設備などのハード面だけでなく、職員のサービス・対応などソフト面に関する教育も必要になるでしょう。

3.競合はどうなる? 介護医療院の新規開設    

2018年4月より創設された介護医療院ですが、2018年12月時点で施設数は113となっています。移行定着支援加算や補助金等の援助があるものの、施設の改善や人員整備には多くのコストと時間がかかります。

厚生労働省が委託事業で研修会を開催

厚生労働省は介護医療院の開設を考える事業者向けに研修会を実施しています。2018年8月には東京・北海道・大阪・福岡の4会場で実施され、介護医療院の役割などの基本的な情報から事業者が取り組むべきステップなど具体的な解説が行われました。研修会で使用された資料の一部についてはインターネット上からのダウンロードが可能です。また、介護医療院開設について質問できるコールセンターも設置しています。

介護医療院の特徴の1つに師・看護師が24時間常駐している点があり、Ⅱ型介護医療院特養との競合も考えられます。ただし、2018年からの3年間は療養病床からの移行が優先され新規参入が制限されているため、競争に発展するのはもう少し先のことになりそうです。

4.まとめ:医療機関と在宅サービスをつなげる役割を果たす介護医療院    

特別養護老人ホーム介護老人保健施設に加えて介護医療院、さらには有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、介護サービスを提供する施設は多岐にわたります。ご利用者様にとって最適なサービスを選んでいただけるように、それぞれの施設の役割やメリットをアピールしていく必要があるでしょう。

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