2020年5月26日更新
現役世代が急激に減少する2040年に備え、国は介護分野におけるICT化を強力に推進しています。介護ロボットやセンサーの導入を促進するための補助金拡充や、介護報酬での評価を見据えた導入効果の実証・エビデンスデータの蓄積など、普及に向けた取り組みが動き始めています。
こうした状況を踏まえると、現場スタッフ様にテクノロジーの知識が求められる未来もそう遠くはないと思われます。一方で、「介護ロボット」や「ICT」という言葉だけでハードルの高さを感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、介護ロボットをはじめとしたテクノロジーを効果的に活用した介護品質の向上と、介護業務の負担軽減を基礎から学べる資格「スマート介護士」をご紹介します。
人手不足が叫ばれて久しい介護業界ですが、介護ロボットやICTは現場スタッフ様の業務負担軽減に貢献するツールとして期待されています。日本においては厚生労働省と経済産業省が中心となり、「ロボット技術の介護利用における重点分野」として定めた6分野13項目について、技術開発・介護ロボット導入支援などが推進されています。
【ロボット技術の介護利用における重点分野】
・ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器
・ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器
・高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器
・高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器
・高齢者等の外出等をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器
・排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置の調整可能なトイレ
・ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器
・ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する機器
・介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
・在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
・高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器
・ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器
・ロボット技術を用いて、見守り、移動支援、排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等の必要な支援に活用することを可能とする機器
上記のうち、「6.介護業務支援」は平成29年10月に行われた改訂で追加された分野です。移動や排泄といった特定シーンだけでなく、それらを包括した介護業務全体を支援する役割も、介護ロボットやICT機器に期待されていることがわかります。
「介護業務支援」に該当するものとしては、例えば、収集・蓄積したデータを介護記録システムと連結させられる機器や、複数のICT機器を集約してデータ分析を行えるシステムなどが考えられます。
スマート介護士とは、介護現場の業務効率化やサービスの質向上を目的とした介護ロボットの導入・活用時に役立つ民間資格です。2019年に社会福祉法人善光会 サンタフェ総合研究所により創設された資格で、2020年2月の第3回試験までに2,600名程度の方が受験しています。
スマート介護士資格を運営するサンタフェ総合研究所の母体である善光会は、テクノロジーを取り入れた介護を実践してきた社会福祉法人です。介護ロボットの導入に関する他の法人からのコンサルティング依頼が増えたことを背景にサンタフェ総合研究所が立ち上げられ、そのノウハウを広げる目的でスマート介護士の資格制度が創設されました。
スマート介護士には、以下に示す2種のレベルが用意されています(本記事公開時点)。
Basic(初級)
介護ロボットに関する基礎的な内容を学べる。
Expert(中級)
介護ロボットに関する専門的な内容やオペレーション構築について学べる。
上記の2資格に加え、福祉系専門学校等の学生向けに実施する「Beginner研修(入門)」、Expertの取得者を対象とした「Beginner研修講師」、そして最上位資格「Professional(上級)」が、令和2年度老人保健健康増進等事業において作成される「『介護ロボット・ICT活用コンサルテーション人材』のための教育ガイドライン」に基づいて、今後新設されるようです。
スマート介護士の資格取得を通じて学べる・身につくことは、「介護ロボットを活用したオペレーション設計の知識」です。
介護ロボットを導入したものの、実際に現場で使用するスタッフ様が目的を理解していない、ということは少なくありません。以前、「介護ロボの導入はなぜ失敗する?原因と成功のヒント」でご紹介したように、こうしたケースの多くは介護ロボットの導入そのものが目的になっているために起こります。
スマート介護士のテキストや試験は上記のような現状を踏まえた上で「現場の課題を解決するために、介護ロボットをどのように利用してオペレーションシステムを組むのか」に主眼を置いて作成されています。例えば、試験では以下のような問題が出題されます。
【スマート介護士 試験問題(例)】
▼問題
機器導入体制の構築、「解決策立案」の考え方で最も有効とされる順番は次のうちどれか。
① 1.解決方向性の決定 2.解決方向性の影響予測 3.解決方向性の洗い出し
② 1.解決方向性の影響予測 2.解決方向性の洗い出し 3.解決方向性の決定
③ 1.解決方向性の洗い出し 2.解決方向性の影響予測 3.解決方向性の決定
④ 1.解決方向性の決定 2.解決方向性の洗い出し 3.解決方向性の影響予測
▼解答・解説
③
ツールは、オペレーションを構成する一要素だという関係を理解した上で、現状の課題に対し、まずどのような方向性で解決できそうか洗い出しを行い、その解決策がオペレーションに及ぼす影響を予測したうえで、解決方向性を決定することが必要である。
スマート介護士は、単に介護ロボットを操作するスキルを学ぶものではなく、業務の課題解決や効率化のための「手段」として、介護ロボットを選定・導入・運用する方法を学べる資格といえるでしょう。
資格勉強の方法としては、サンタフェ総合研究所が監修している「スマート介護士資格公式テキスト」の利用か、「スマート介護士資格試験対策オンライン講座」の受講が推奨されています。
参考までに、テキストの構成内容を以下でご紹介します。介護ロボットに関する基礎的な内容から学習をスタートできるため、ハードルの高さを感じている方でも問題なく取り組めそうです。
【スマート介護士資格 テキストの構成内容】
最後に、スマート介護士の資格を取得する方法についてご紹介します。同資格が用意しているレベルのうち、ここでは現場で働く介護スタッフ様の実務に役立つとされる「Expert」を取り上げます。
Expertとして認定されるには、筆記試験を受験して合格する必要があります。試験問題は「二訂版 公式テキストFor Basic & Expert」の範囲から出題されます。試験時間は60分で、合格ラインは「おおむね正答率70%以上」とされています。
執筆:花王プロフェッショナル業務改善ナビ【介護施設】編集部
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