コラム

2021年4月20日更新

【図解】令和3年度介護報酬改定で何が変わった?現行と改定事項の比較まとめ 

令和3年度より改定された介護報酬。前回は「令和3年度介護報酬改定で何が変わる?これだけは押さえたいポイントまとめ」と題し、改定の柱ごとにポイントを解説しました。  
 
今回はさらに一歩踏み込んで、主に施設系サービスに関連する加算項目をピックアップして解説していきます。改定前後で「何が変わったのか」を簡潔にご紹介していますので、各加算項目における変更点の概要理解にお役立てください。 

  • 本コラムは令和3年3月8日時点の公表資料を元に作成しております。  

排せつ支援加算は6カ月以降も算定可能に

排せつ支援加算は、ご利用者様の排せつ状態を改善する取組に対して算定される加算です。
 
これまでは起算した月から「6カ月までの算定」とされていましたが、継続的な取組を促すため、改定後は「6カ月以降も算定可能」となりました。また、排せつ支援の取組だけでなく、排せつ状態の改善を評価する目的で新たな区分が設けられました。 
 
<対象サービス> 

  • 介護老人福祉施設
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • 看護小規模多機能型居宅介護 

<単位数> 

改定前

  • 排せつ支援加算 100単位/月

改定後

  • 排せつ支援加算(Ⅰ) 10単位/月  新設 
  • 排せつ支援加算(Ⅱ) 15単位/月  新設 
  • 排せつ支援加算(Ⅲ) 20単位/月  新設 
  • 排せつ支援加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)は併算できない。

褥瘡マネジメント加算は毎月の算定が可能に

褥瘡マネジメント加算は、国の指標に基づいた評価を行い、ご利用者様の褥瘡リスクを計画的に管理することで算定される加算です。 
 
改定前は「3カ月に1回」が算定の限度とされていましたが、今回の改定により毎月の算定が可能になりました(介護医療院を除く)。また、排せつ支援加算と同じく、褥瘡マネジメント加算についても褥瘡の発生予防や状態改善を評価するために新たな区分が設けられました。 

  • 介護老人福祉施設
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • 看護小規模多機能型居宅介護 

<単位数> 

改定前

  • 褥瘡マネジメント加算 10単位/月
  • 3月に1回が限度

改定後

  • 褥瘡マネジメント加算(Ⅰ) 3単位/月  新設 
  • 褥瘡マネジメント加算(Ⅱ) 13単位/月  新設 
  • 褥瘡マネジメント加算(Ⅰ)(Ⅱ)は併算できない。

栄養マネジメント加算は廃止、未実施は減算へ

栄養マネジメント加算は、ご利用者様の栄養状態を維持・改善するための取組に対して算定される加算です。
 
今回の改定で、栄養マネジメント加算は廃止。栄養ケア・マネジメントが実施されていないケースに対して、基本報酬が減算されることになりました(3年の経過措置期間あり)。これは、施設系サービスにおける栄養ケア・マネジメントの実施が、「基本サービス」として位置づけられたことを意味します。 
 

<対象サービス> 

  • 介護老人福祉施設
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設(一部除く)
  • 介護医療院 

<単位数> 

改定前

  • 栄養マネジメント加算 14単位/日

改定後

廃止

  • 栄養ケア・マネジメント未実施に対し 14単位/日減算  新設 
  • 3年の経過措置期間が設けられる。

看取り介護加算では死亡日30日より前の対応も評価 

看取り介護加算は、ご利用者様やそのご家族の意思を尊重した形で、人生の最終段階におけるケアを実践する場合に算定される加算です。 
 
改定前は「死亡日以前30日」からの看取りに関するケアについて算定するものでしたが、今回、それ以前の一定期間(死亡日45日前~31日前)の対応についても評価されるよう、新たな区分が設けられました。また加算要件に、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取組や、ご本人の意思を尊重した医療・ケアの方針決定に対する支援の実施が加えられました。 
 

<対象サービス> 

  • 介護老人福祉施設
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 

<単位数> 

改定前

  • 看取り介護加算(Ⅰ)
    死亡日30〜4日前 144単位/日
    死亡日前々日、前日 680単位/日
    死亡日 1,280単位/日
  • 看取り介護加算(Ⅱ)
    死亡日30〜4日前 144単位/日
    死亡日前々日、前日 780単位/日
    死亡日 1,580単位/日

改定後

  • 看取り介護加算(Ⅰ)
    死亡日45〜31日前 72単位/日  新設 

    死亡日30〜4日前 144単位/日
    死亡日前々日、前日 680単位/日
    死亡日 1,280単位/日
  • 看取り介護加算(Ⅱ)
    死亡日45〜31日前 72単位/日  新設 

    死亡日30〜4日前 144単位/日
    死亡日前々日、前日 780単位/日
    死亡日 1,580単位/日

なお、「介護老人保健施設」における「ターミナルケア加算」についても、上記と同じく死亡日30日以前の期間で行った対応についても評価されることとなりました。単位数は以下の通りです。 
 
<単位数> 

改定前

  • ターミナルケア加算
    死亡日30〜4日前 160単位/日
    死亡日前々日、前日 820単位/日(※1)
    死亡日 1,650単位/日(※2)

改定後

  • ターミナルケア加算
    死亡日45〜31日前 80単位/日  新設 

    死亡日30〜4日前 160単位/日
    死亡日前々日、前日 820単位/日(※1)
    死亡日 1,650単位/日(※2)
  1. ※1
    介護療養型老人保健施設は 850単位/日
  2. ※2
    介護療養型老人保健施設は 1,700単位/日
  • 厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」を元に作成 

科学的介護推進体制加算が新設  

科学的介護推進体制加算は、介護サービスの質の評価と科学的介護の取組を推進することを目的に、今回の改定により新設された加算です。
 
ご利用者様の基本データ(ADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況など)を科学的介護情報システム「LIFE」に提出し、そのフィードバックを活用してケアプランなどに反映させるなど、PDCAサイクルを推進してケアの質を向上させる取組を促す狙いがあります。 

<対象サービス> 

  • 介護老人福祉施設
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院 
  • 施設系サービスのみ抜粋 

<単位数> 

改定前

なし

改定後

  • 科学的介護推進体制加算(Ⅰ) 40単位/月  新設 
  • 科学的介護推進体制加算(Ⅱ) 60単位/月 
    新設 
     
  • 科学的介護推進体制加算(Ⅱ)については、
    「介護老人福祉施設」と「地域密着介護老人福祉施設入所者生活介護」は50単位/月

<算定要件>
以下のいずれの要件も満たすことを求める。

  • 入所者・利用者ごとの、ADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況やその他の入所者の心身の状況等に係る基本的な情報(科学的介護推進体制加算(Ⅱ)では、加えて疾病の状況や服薬情報等の情報)を、厚生労働省に提出していること。 
    ※介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設については服薬情報の提出を求めない。 
  • 必要に応じてサービス計画を見直すなど、サービスの提供に当たって、上記の情報その他サービスを適切かつ有効に提供するために必要な情報を活用していること。

介護職員処遇改善加算と介護職員等特定処遇改善加算が見直しに

介護職員の処遇改善を目的とした加算には「介護職員処遇改善加算」と「介護職員等特定処遇改善加算」がありますが、今回、その両者の見直しが行われました。 

介護職員処遇改善加算

介護職員処遇改善加算は、介護職員の賃金向上を目的とした加算です。改定前は(Ⅰ)~(Ⅴ)までの5段階だった加算が、今回の改定により加算(Ⅳ)(Ⅴ)が廃止となり、3段階に見直されました。 

介護職員処遇改善加算の1から5の区分について取得要件と取得率を示した図。令和3年度の改定で、加算4と加算5の区分は廃止となった。

介護職員処遇改善加算の算定要件には「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」があり、満たす要件に応じて加算率が増減します。 
 
<介護職員処遇改善加算の算定要件> 
キャリアパス要件①: 
職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備すること。 
キャリアパス要件②: 
資質向上のための計画を策定し、研修の実施または研修の機会を設けること。 
キャリアパス要件③:
経験もしくは資格などに応じて昇給する仕組み、または一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること。 
 
職場環境等要件: 
賃金改善以外の処遇改善の取り組みを実施すること。 
 
今回の改定では、職場環境を改善する取組の実効性を高めるために「職場環境等要件」が見直されました。具体的には、職員の離職防止・定着促進に向けて、以下に挙げた取組がより促進されるよう見直されています。 

  • 職員の新規採用や定着促進に資する取組
  • 職員のキャリアアップに資する取組
  • 両立支援・多様な働き方の推進に資する取組
  • 腰痛を含む業務に関する心身の不調に対応する取組
  • 生産性の向上につながる取組
  • 仕事へのやりがい・働きがいの醸成や職場のコミュニケーションの円滑化等、職員の勤務継続に資する取組

なお、職場環境等要件に基づく取組は過去に実施したものではなく、加算を取得する当該年度での実施を求めるものとされました。

介護職員等特定処遇改善加算

介護職員等特定処遇改善加算は、技能・経験のある介護職員の処遇改善が目的であり、上述の介護職員処遇改善加算に上乗せして取得できる加算です。
 
加算の配分については、「その他の介護職員」と「その他の職種」との関係においてルールが定められています。改定前から変わらないのは、「その他の職種の職員」の平均引き上げ額が「その他の介護職員」の「2分の1を上回らない」とする点です。一方、「経験・技能のある介護職員」の改善額を「その他の介護職員」の「2倍以上」とするルールについては、「より高くすること」と見直されました。

 介護職員等特定処遇改善加算の改定前と改定後の加算の配分を比較した図。「経験・技能のある介護職員」をA、「他の介護職員」をB、「その他の職種」をCとした場合、改定前の平均賃上げ額はBを1とするとAが2以上、Cが0.5以下の配分だったのに対し、改定後の平均賃上げ額は、AよりBが大きく、Bを1とするとCは0.5以下の配分となっている。

改定前の「介護職員処遇改善加算」と「介護職員等特定処遇改善加算」の関係をくわしく振り返りたい方は、「介護職員等特定処遇改善加算と介護職員処遇改善加算はどう違う?」をご覧ください。  
 
今回は施設系サービスに関連の深い加算について、改定前後の変更ポイントをハイライトでお伝えしました。それぞれの算定要件や、その他の加算項目についてくわしく確認されたい方は、厚生労働省のウェブサイトをご覧ください。

執筆:花王プロフェッショナル業務改善ナビ【介護施設】編集部

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