コラム

2021年5月18日更新

介護事業者に求められるBCP(業務継続計画)~準備は裏切らない(1) 

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著者プロフィール/本田 茂樹(ほんだ・しげき)
ミネルヴァベリタス株式会社 顧問、信州大学 特任教授、公益社団法人全国老人保健施設協会 管理運営委員会 安全推進部会部会員
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社。その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。医療・介護分野を中心に、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。

令和2年12月、厚生労働省から令和3年度介護報酬の改正内容に「業務継続に向けた取組の強化」を加えたことが発表されました。今後、介護サービス事業者は、業務継続に向けた計画等の策定などが義務付けられることとなります(3年の経過措置期間あり)。  
 
今回は、これから業務継続計画(以下、BCP)を策定される介護施設の管理者・経営者に向けて、本田 茂樹氏に、BCPの策定が求められる背景や、介護サービスを中断させないための主要な対策について解説いただきました。本田 茂樹氏は、厚生労働省が公表している「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」の検討委員会 委員長も務めていらっしゃる方です。BCP策定前に、ぜひご覧ください。 

  • 本媒体では、介護施設等の入所者について原則「ご利用者様」と表記しておりますが、本記事では「利用者」としております。

今なぜ、介護事業者にBCP(業務継続計画)が求められるか 

BCP(業務継続計画)とは何か 

そもそもBCPとはどのようなものでしょうか。内閣府(防災担当)が作成した「事業継続ガイドライン-あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応-」(平成25年8月改定)では、BCPを次の通りに定義しています。 

大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを事業継続計画(※1)(Business Continuity Plan、BCP)と呼ぶ。 

  • (※1)介護分野では、BCPを業務継続計画と呼びます。 

この定義で重要な点は、2つあります。まずBCPは、地震や水害などの自然災害だけではなく、感染症のまん延やテロ等の事件にも対応することを目指していることです。次に、危機的事象が起こった場合でも、「事業を中断させない」そして、「中断しても可能な限り短い期間で復旧させる」の両方を目的としていることです。 

今なぜ、介護事業者にBCPが求められるか

介護サービスは、利用者の生活を支える上で必要不可欠なものです。そのため、自然災害の発生や、感染症の流行によって介護サービスが停止すると、利用者の生活に大きな支障が生じます。
 
そこで介護事業者は、介護サービスが中断しないよう準備するとともに、中断した場合でも速やかに復旧させるため、あらかじめ検討した対策をBCPの形にまとめておくことが求められています。 

BCP策定の前提条件

ここでは、BCPを策定する上でぜひ押さえていただきたい事項を2点ご紹介します。 

 ・BCPの基本方針
大地震等の自然災害、あるいは感染症の流行に見舞われた際、落ち着いて行動することが難しくなります。そのような場合も、介護事業者として的確に業務を継続するためにも基本方針を定めておくことが大切です。BCPにおける介護事業者の基本方針は、以下の通りです。 

【1】 利用者・職員の安全確保 
【2】 介護サービスを提供するために必要な経営資源を守る 
【3】 介護サービスの提供を継続する など 

・介護事業者のBCP推進体制 
BCPは台風シーズンだけ、あるいは感染症が流行している期間だけのような、一過性の取り組みではありません。また、介護サービス部門など単独の部門で進めるのではなく、組織全体として取り組む必要があるため、介護事業者としての推進体制を構築することが求められます。この推進体制のもとでは、BCPの策定、その維持と更新、事業継続を実現するための予算や経営資源の確保、そしてさまざまな事前対策の実施や職員教育などの活動を行います。
 
ただ、必ずしも新たな体制を立ち上げる必要はなく、すでにある防災体制や安全推進体制などを前提として構築すると良いでしょう。具体的には、既存の体制で、BCPの推進体制でやるべきことがカバーできるか確認し、必要な役割を加えていくことが考えられます。 

介護サービスを中断させないために、何をするべきか 

BCPは、「事業を中断させないこと」と「中断しても可能な限り短い期間で復旧させること」の二段構えで進めますが、ここではまず、事業を中断させないために何をするべきかを、自然災害と感染症を念頭に一緒に考えましょう。
 
介護サービスを提供するために必要な経営資源には、「建物・設備」、「職員」そして、「ライフライン」がありますが、それらを守るための主要な対策は以下の通りです。 

(1)「建物・設備」を守る

【1】 建物
建物の中には、利用者・職員がいるとともに、ケアプランをはじめとするサービス提供に欠かせない情報があることから、それらを守るため、最優先で建物の安全対策を講じます。
 
自施設で新耐震基準(※2)を満たさない建物については、耐震診断を行い必要に応じて耐震改修工事を行います。また、新耐震基準を満たす建物でも老朽化が考えられるものについては、耐震診断を行いましょう。 
(※2)「新耐震基準」…1981年6月1日以降に建築確認申請が行われた建物が該当します。
 
【2】 設備
利用者の居室、そして事務所にある家具や事務機器類は固定するなどして、地震の揺れによる転倒や落下を防ぐための対策を講じます。 

(2)「職員」を守る

 【1】 避難行動と訓練・教育
ハザードマップ(※3)を通して、施設が立地する地域の災害リスクを把握します。自施設が洪水被害に見舞われる可能性が高い場合、気象情報や市町村が出す避難情報に基づいて、的確な避難行動をとります。また、自施設における火災では初期消火を行いますが、消火が難しいと判断した場合は、逃げ遅れないようにします。なお、職員が的確な避難行動をとれるためには、教育や訓練が必須です。
 (※3)「ハザードマップ」…ハザードマップは、災害による被害を予測し、その被害範囲などを地図化したものです。ハザードマップについてくわしくは国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」等をご覧ください。
 
 【2】 感染予防対策
職員を感染症から守るためには、自施設の感染予防マニュアルに沿った取り組みを全員で徹底し、それを継続することが極めて重要です。感染予防策において必要となる備蓄品として、マスク・手袋などの個人防護具や消毒剤などがあります。平常時から、必要な備蓄量を確保するとともに、足りない場合は適時に補充しましょう。  

(3)「ライフライン」を守る

災害時に電気・ガス・水道などライフラインの供給が停止すると、介護サービスの提供が難しくなります。介護事業者は、ライフラインが停止した場合でも、介護サービスの中断を防ぐための対策を講じることが求められます。
 
例えば、停電に備えて、非常用発電装置を導入する、電気自動車の電源を活用する、また電気なしで使える道具(電池式や手回し式のラジオなど)を準備するなどの対策が考えられます。
 
本記事では、BCPの定義や、介護サービスを中断させないための対策についてご説明しました。次回は、「事業が中断した場合の経営資源の補い方」についてご紹介させていただく予定です。 

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