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コラム

2023年2月21日更新

ICT導入支援事業を最大限活用して業務負担を軽減!導入効果や補助内容を解説

監修者 竹下康平氏のプロフィール写真

監修者プロフィール/竹下 康平(たけした・こうへい)
1975年青森県生まれ。
株式会社ビーブリッド 代表取締役、日本福祉教育専門学校 非常勤講師、(一社)日本ケアテック協会 専務理事/事務局長、(一社)介護離職防止対策促進機構 理事、(公社)かながわ福祉サービス振興会 LIFE推進委員会 副委員長。
プログラマーやSE等を経て、2007年より介護業界でのICT関連業務に従事し、2010年ビーブリッド創業。
現在は同社主力事業の介護・福祉事業者向けICT活用支援サービス『ほむさぽ』(homesapo.com)を軸に、介護業務でのICT利活用と促進に幅広く努めている。
介護・福祉事業者向けICT講演回数は全国トップクラスで、(令和3年は71回)が示すように、介護業界のICTご意見番として、行政や事業者団体、学校等での講演活動および多くのメディアでの寄稿等の情報発信を通じ、ケアテックの普及推進中。
「介護福祉の現場に即したICT活用推進が私の役割」

急速にICTまたはテクノロジー技術が進展している中、ICT導入はあらゆる業種で不可欠なものとなっています。介護の現場も例外ではなく、ICT導入は業務負担を軽減する手段の一つとして活用されています。

しかし、導入・運用にあたってはコストがかかるためICT導入に踏み切れない介護事業者も多いのではないでしょうか。今回は、ICT導入による効果について解説するとともに、補助内容についても紹介します。

  • 2023年1月時点の情報で記事を作成

ICT導入支援事業とは

「ICT導入支援事業」は、介護における業務効率化を促進するために制定された補助金制度です。日本では、いわゆる「団塊の世代」の高齢化により2030年には高齢化率が30%を超えると言われています。年々高齢者が増加する中で、介護人材の確保は社会的な課題です。

しかし、介護業界の人材不足や生産年齢人口の低下は深刻化しており、介護事業者においてはICTを用いた業務の効率化は急務といえるでしょう。

IT導入補助金との違い

ICT導入支援事業と似たものに、IT導入補助金があります。IT導入補助金は、経済産業省の監督のもと、一般社団法人 サービスデザイン推進協議会が運営している補助金制度です。

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者を対象として、ITを導入する際にかかる費用の一部に対して補助金が給付されます。この補助金は、生産性の向上や従業員の待遇改善、企業の売上向上などを目的として制定されています。

一方、ICT導入支援事業は厚生労働省が国の予算である「地域医療介護総合確保基金」を利用して行っている、介護事業者向けの支援事業です。実施主体は各都道府県となります。

ICT導入支援事業の補助内容は?

介護事業者がICT導入支援事業を活用するためには、補助対象となる機器やソフトウェアを導入し、かつ補助要件を満たしている必要があります。ここからは、補助対象や補助要件の詳細とともに、補助上限額についても紹介します。

補助対象

ICT導入支援事業において、補助金給付の対象となるのは次の機器やソフトウェアです。

■介護ソフト

利用者情報の管理、アセスメント記録の作成・管理、ケアプランの管理や介護保険請求などに利用するソフトウェアのことです。転記等が無くなり請求までの業務が一気通貫となるもの、居宅介護支援事業所と訪問介護などのサービス提供事業所間における情報連携の標準仕様(ケアプラン標準仕様)に準拠したものが補助対象です。

■情報端末

新たにタブレットやスマートフォンを導入する場合、購入費用に対して補助が受けられる可能性があります。情報端末の導入により、通所介護等事業所内での記録の円滑化はもちろん、訪問介護先などの遠隔でもご利用者様の状況を記録することができるようになりますし、リアルタイムでご利用者様の状況を共有することが可能になります。

■通信環境機器等

各種端末やソフトウェアを利用するためには、施設のネットワーク環境も整備する必要があります。そのためにWi-Fiルーター等を新たに導入した場合、その購入費や整備費に補助を受けられる可能性があります。

■クラウドなどの運用経費

勤怠管理システムやシフト管理システムなど、業務効率化を図るための各種クラウドサービスの運用経費や、研修費、他事業者からの照会に応じた際の経費も補助の対象です。

補助要件

補助を受けるためには次の要件があります。
 

  • LIFEによる情報収集・フィードバックへの協力
  • 補助を受けるためには、「LIFE(科学的介護情報システム)」による情報収集に協力する必要があります。これは端末のみを導入する場合も同様です。

  • 導入計画の作成と2年間の導入効果報告
  • ICT導入において、その計画と2年間の導入後の効果報告も要件に含まれています。自施設でICTを導入する目的を定め計画を策定するとともに、導入後には効果検証ができるようデータ化するなど体制を構築しましょう。
     
  • ICT導入に関する他事業者からの照会への対応
  • 導入成果を都道府県へ報告するとともに、他事業者からICT機器などの導入に関する照会があった場合には、それに応じなければなりません。
     
  • IPAが実施する「SECURITY ACTION」の一つ星または二つ星の宣言
  • IPA(情報処理推進機構)が実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」のいずれかを宣言することも要件に含まれています。

    「SECURITY ACTION」とは、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。認定制度ではないため、介護事業者自らがセキュリティ対策における取り組み目標を定め、宣言するのみでこの要件を達成できます。詳しくはIPAが公開している「SECURITY ACTION」のページをご確認ください。

    補助上限額

    ICT導入支援事業の補助上限額は、事業所の規模に応じて以下のように設定されています。

    補助上限額

  • 1~10人:100万円
  • 11~20人:160万円
  • 21~30人:200万円
  • 31人~:260万円
    • 人数は常勤換算後

    補助割合
    ICT導入にかかった費用のうち、何割の補助を受けられるかは、事業を実施する都道府県によって設定が異なります。
    一定の要件を満たす場合は、4分の3が下限となり、それ以外の場合は、2分の1を下限に都道府県の裁量によって設定されています。

    一定の要件とは、下記のいずれかを満たすことです。

  • 事業所間でケアプランのデータ連携で負担軽減を実現
  • LIFEの「CSV連携仕様」を実装した介護ソフトで実際にデータ登録を実施等
  • ICT導入計画で文書量を半減
  • ケアプランデータ連携システムの利用
  • ICTの導入効果は?

    厚生労働省が公表している「令和2年度ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ」より、ICT導入によって得られた具体的な効果を紹介します。

    ICT導入により業務効率化を実感している事業者も多く、事業者に対する調査の結果、「間接業務の時間が削減された(「そう思う」が70.3%)」「業務管理が効率化された(同67.8%)」「業務上の単純ミスが減った(同66.5%)」「事業所内の情報共有が円滑になった(同69.4%)」などの回答がありました。

    また、「支援の質が上がった(同63.3%)」「直接ケアにあたる時間が増加した(同61.1%)」「記録が充実した(同68.0%)」などケアの内容にも好影響をもたらしているようです。

    その他、ICT導入の結果「スケジュール管理がしやすくなった」「人為的なミスが大幅に減った」「記録書式や文言を統一でき、見やすくなり、内容が充実した」などの前向きな意見も数多く掲載されています。これらのことから、ICT導入によるメリットを享受している事業所が多くあることがわかります。

    補助金を活用したICT導入でコストを抑えながら業務効率化を実現しよう

    ICT導入により、既存スタッフの負担を軽減できるだけでなく、業務効率化による生産性向上を図れます。

    都道府県が実施するICT導入支援事業は、自治体によって申込期間や補助対象経費が異なるため、詳しくは各都道府県が公開している情報をご確認ください。

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