コラム

2022年8月23日更新

【経営改善チェック】介護施設がつまずきがちなポイントを見直そう!利用者単価向上や稼働率向上など課題別に解説

監修者 小濱道博氏のプロフィール画像

著者プロフィール/小濱 道博こはま・みちひろ)
小濱介護経営事務所代表
株式会社ベストワン取締役
C-MAS 介護事業経営研究会最高顧問
C-SR 一般社団法人医療介護経営研究会専務理事
日本全国対応で介護経営支援を手がける。介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上を行い、例年延べ20000人以上の介護事業者を動員。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。介護経営の支援実績は全国に多数あり。
著書:「実地指導はこれでOK!おさえておきたい算定要件シリーズ」第一法規、「まったく新しい介護保険外サービスのススメ」翔泳社、「混合介護〜導入・運営・実践事例集」日綜研出版、「これならわかる<スッキリ図解> 実地指導」翔泳社、「よくわかる実地指導への対応マニュアル」日本医療企画、「介護経営福祉士テキスト〜介護報酬編」日本医療企画、「これならわかる<スッキリ図解> 介護ビジネス」(共著) 翔泳社。
ソリマチ「会計王介護事業所スタイル」の監修を担当。

介護施設を安定して経営するためには、利用者単価や稼働率は欠かせない要素です。そこで今回は、「利用者単価」「稼働率」に加え「サービスの質」「コストパフォーマンス」の4つに焦点を当て、経営改善のためにチェックすべきポイントを小濱道博氏に解説いただきます。

  • 本媒体では、介護施設等の入所者は「ご利用者様」、施設職員を「スタッフ様」と表記しておりますが、本記事では「利用者」「職員」としております。

利用者単価向上のためのポイント

これからは施設で看取ることも必要

介護施設における利用者単価は、入所者における重度者の割合が大きく影響します。特別養護老人ホームは要介護3以上の方が入居される施設であるため、重度者を中心に入所を進めていると思います。加算においては、看取り介護加算がポイントになります。看取り期において、病院に転院させる施設がまだまだ多いのが現状ですが、最後まで施設で看取りを行う事も今後の施設経営には求められます。

基本報酬の最高位を目指すなら在宅復帰率がポイント

介護老人保健施設では、いわゆる、特養化したお預かり型の施設では収益の向上は見込めません。最終的に、基本報酬の最高位である超強化型を目指します。この時、在宅復帰率がポイントとなりますが、地域のニーズから長期滞在の入所者を全く受け入れないという事は難しい、という声を聞きます。このような場合、定員の半分までは長期滞在の入所者を受入れ、半分の入所者を3カ月から5カ月程度で在宅に復帰させることで、指標の数字のクリアが可能です。短期集中リハビリテーション実施加算が3カ月まで算定されることから、これを一つの区切りとして、利用者家族の事前同意の下で退所を実現します。このサイクルが出来ると、比較的容易に超強化型の算定が実現します。最上位の基本報酬を算定した上で、介護施設サービスに位置づけられている加算は、基本的にすべて算定するという意識が重要です。

ICT化で業務効率を上げる

よく見かけるのが、職員不足や事務負担、報酬単価が低いこと等を理由として、加算を算定していない施設です。出来ない理由は無数にありますが、加算を算定する理由は収益の向上の他ありません。確かに、加算を算定することで、計画書の作成や、スクリーニングなどの手間が増え、記録等の書類も増えます。ただでさえ忙しい中で、そのような手間を増やしたくないという現場の声は無視できません。

さまざまな手間を減らすためには、業務内容の見直し、業務の標準化が必要です。介護記録などのICT化や介護ロボット、見守りセンサーなどの導入を積極的に進めるのも一つの方法です。インカムの導入によっても、業務フローも驚くほど改善が見られるでしょう。設備投資を伴いますが、今はICT補助金も充実していますので、それを活用することでコスト負担はかなり軽減できます。短期的には設備投資で収益が悪化しても、中長期的に見れば投資は回収できます。

施設内のケアの質向上にはLIFEを活用する

これらのICT化とともに、LIFEの活用にも力を入れましょう。LIFEを上手く活用することで、加算が算定出来ますし、ケアの質の向上も期待出来ます。活用ノウハウは施設の財産となり、差別化につながります。利用者満足の向上は、職員満足に直結し、定着率の向上や、人材確保にも有効です。経営陣が指示すべきは、加算をすべて取ることです。収益が伸びている介護施設は、必ずと言って良いほど、ほとんどの加算を算定しています。

稼働率向上のためのポイント-入居者獲得、空室の管理など

在宅サービスの利用者数をいかに増やせるかが重要

介護施設の基本的な構造は、下のような三角形で表すことができます。

介護施設の基本的な構造をあわらした三角形の図。上から入所型施設、ショートステイ、在宅サービス、という構造になっている。

介護施設の基本的な構造をあわらした三角形の図。上から入所型施設、ショートステイ、在宅サービス、という構造になっている。

底辺が在宅サービス、中間がショートステイ、上部が入所型介護施設を示します。併設の在宅サービスの利用者が介護施設の見込入所者になるため、利用者数をいかに拡大するかが大きなポイントです。在宅サービスの利用者が、さらなる高齢化や重度化でショートステイを使うようになります。そのショートステイの利用が良い契機となって、介護施設の利用に結びつきます。

介護老人保健施設の場合、在宅復帰の施設であるため、一定の状態に改善されれば退所して居宅に戻り、在宅サービスを利用します。さらなる高齢化や重度化で、再び、介護老人保健施設に入所し、状態改善で居宅に戻るというサイクルを繰り返し、最終的に介護老人保健施設で看取るという流れが形成されます。介護老人保健施設が在宅復帰のための施設であるにかかわらず、ターミナルケア加算があるのは、このような理由からです。また、空床が出た場合は、速やかに空床利用のショートステイで埋める検討が必要です。これも、在宅サービスの利用者や過去のショートステイの利用者の数が問われます。

ドクターやケアマネとの連携も大切

今までの話とは別に、医療法人の本体病院からの利用者の紹介の有無が稼働率に大きく影響します。そのためには、病院のドクターの介護サービスへの理解が重要です。さらに近郊の病院やソーシャルワーカー、地域のケアマネジャーからの理解を得る必要もあります。そのため、定期的な情報の提供や情報交換を心がけましょう。

サービスの質向上のためのポイント

未経験者への教育の徹底

人材不足による多忙を理由として、なかなか業務改善が進まない施設を多く見かけます。また、人材の教育や育成についても、介護業界は長年にわたってなおざりにしてきました。いまだに、福祉学校の卒業生を受け入れて、その翌日から現場に出して一人前扱いの施設、事業所が多いのも事実です。これでは、実務経験のない新卒者はすぐに辞めてしまいます。それで、最近は良い人材が来ないと嘆くのは、本末転倒です。一般企業は、新卒の社員は一年がかりでOJTなどを通して一人前に育てた上で戦力とします。介護業界もこれからは、時間を掛けて人材を育成することが出来る組織にならないと存続出来ないかもしれません。

外国人研修生や高齢者の活用促進

外国人研修生や元気な高齢者の活用も急務です。外国人は非常に優秀な人材が多く、この優秀な外国人研修生をいかに使いこなすかも、これからの施設に重要なポイントと言われています。地域の元気な高齢者は、介護補助者として、介護職のサブ的な役割を担わせ、介護職員から付帯業務を取り除くことで、介護職員の配置人数に余裕がなくても、その負担を減らすことが可能です。その上で、教育研修を充実させて、職員のスキルアップ、底上げを図り、介護サービスの質を高めます。それが、ひいては、施設自体の稼働率の向上につながるのです。

余裕があるなら教育研修に充てる

処遇改善で賃金を高くしても、その効果は一時的で、翌月からは既得権に変わります。必要以上に賃上げを行う余裕があるのであれば、その資金は教育研修に充てた方がよいでしょう。その結果、職員のスキルアップと介護サービスの質の向上につながるとともに、利用者満足が上がり、稼働率、利益率も上がります。その時には、十分な賃上げで、職員に応えることができます。そのような、好循環を作ることが先決です。

コストパフォーマンス向上のためのポイント

介護事業のビジネスモデルは、スケールメリットの追求にあります。事業規模の拡大、拠点展開策がコストパフォーマンス向上に直結します。各地域で、ベスト3に数えられる介護施設は、ほとんどの介護サービスを手掛け、拠点地域のみならず、東京や大阪などに拠点を拡大しており、高収益を獲得しています。

しかし、拠点拡大には解決すべき課題があります。それは、前節で触れた人材育成です。拠点を任せることの出来る幹部職員の育成が出来なければ、拠点拡大策は絵に描いた餅です。さらには、提供する介護の質も問われます。職員の確保も大きなテーマです。すべては関連しており、地域、利用者家族、職員の三方良しの経営を実現しなければなりません。そのためには、経営者、幹部職員のマネジメント力が重要です。優秀な外部ブレーンの有無もポイントでしょう。いずれにしても、現状で満足しない、前向きな経営マネジメントをすることが、介護施設の経営を改善し、収益性を向上させる一番の近道なのです。

安定した施設経営のためには、「利用者単価」「稼働率」「サービスの質」「コストパフォーマンス」のそれぞれのポイントを押さえ、改善に取り組むことが大切です。

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