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コラム

2017年12月11日更新

老健の現状と課題②

病院から在宅に移るための中間施設と位置付けられている老健ですが、なかなか厳しい現状にあります。
在宅サービスの基盤整備の問題もありますが、一方で、医療と介護の連携というソフト面での支援の充実も求められています。
視点を転じると、いきなり自宅に戻ることができずとも、サ高住や有料老人ホーム、グループホームなどを上手に利用してときどき自宅、ときどき施設といった選択肢も十分に考えられ、既存の社会資源をあますことなく活用して、よりよいサービスをご利用者様が選べるようにしていくのもひとつの解決策でしょう。

 
「退所先が自宅」は従来型老健では2割以下

前回は、介護老人保健施設(以下、老健と略)の現状について概観しましたが、今回は老健の抱える課題について考えてみましょう。

老健は、制度上、病院から在宅へ復帰するための中間施設と位置付けられています。
しかし全老健*の調査によると、「老健退所後の行き先が自宅」と答えた入所者(在宅復帰をした人)は、従来型老健においては18.5%と2割に満たないのが現状で、在宅支援加算型老健でも40.7%と過半数を割り、在宅強化型老健で、やっと61.6%と6割を超えています。
 
一方で、「退所先が医療機関」と答えた人は、従来型で57.3%と6割近くに上り、在宅支援加算型では38.1%、在宅強化型では22.5%でした。
この数字を見ると、老健が当初の理想のように、在宅復帰のための中間施設とはなり得ていないといった現状が浮かび上がってきます。

 
在宅=自宅ではない。多様な選択肢が検討できる

ここでは少し視点を変えて「在宅=自宅」ではないという考え方を紹介したいと思います。
 
家族による介護力という点を見てみると、いわゆる専業主婦が親や義理の親の介護をするというケースはどんどん少なくなっていますし、介護する側も高齢化して、さらに状況は厳しくなっています。
「施設か、自宅か?」という二分法で解決できないのが現状です。
 
訪問介護サービスにショートステイやデイサービスを組み合わせて、同居する家族の負担を軽くしながら在宅生活を支援する方法もあります。しかし、これには地域における在宅サービスの充実が前提にあり、場合によってはなかなか難しいところもあるかもしれません。
 
老健の退所先として、完全に自宅復帰を望むのでなく、サービス付き高齢者住宅や有料老人ホーム、グループホームを利用しながら、「ときどき自宅、ときどき施設」という柔軟な考え方をしてもよいのではないでしょうか?
ふだんは施設に居住しながら、月に何日かは自宅に帰るという逆ショートステイも考えられます。

こういった場合も、ご利用者様の住んでいる地域にどのような介護サービスの資源が存在するのか、老健として、地域包括支援センターや担当の介護支援専門員とあらかじめ十分に相談しておくことが大切です。

 
老健は地域包括システムの「要」となりうるか

老健は経営主体の8割近くを医療法人が占めていますし、それに加えて、医師や看護師の常勤が義務付けられています。
そのことから、地域における医療と介護の連携、そして地域包括ケアシステム構築の「要」的な存在として、期待が高まっています。
 
現状では、在宅強化型が全体の15.8%、在宅支援加算型が30.5%、従来型が53.7%という構成割合になっていますが、将来的には、在宅強化型+在宅支援加算型が多くを占めるようになることが期待されています。
平成30年度に予定されている診療報酬と介護報酬の同時改定においても、その点に配慮した改定が想定されます。
 
より地域に密着した老健となるためには、医療との連携がカギです。
地域の急性期病院、回復期病院、地域包括ケア病棟など、病院との連携はもちろんのこと、今後はかかりつけ医との連携がますます重要になってくると考えられます。
かかりつけ医に老健施設の多くの機能を知ってもらい、身体・認知機能低下時のリハビリ、ポリファーマシーの調整、低栄養の改善などに老健の入所サービス、ショートステイを活用して地域連携を進めてもらいたいと思います。

  • 平成28年度介護老人保健施設の現状と地域特性に関する調査(公益社団法人 全国老人保健施設協会)

参考資料:平成29年度版 介護白書-老健施設の立場から-

監修:株式会社エス・エム・エス

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