コラム

2023年3月28日更新

多職種連携が円滑に!効果的なファシリテーションを行う方法

監修者 高室成幸氏のプロフィール写真

監修者プロフィール高室 成幸(たかむろ・しげゆき)
ケアタウン総合研究所代表  ケアプラン評論家
1958年京都市生まれ。日本福祉大学社会福祉学部卒。21世紀の日本福祉社会を創造するために、地域福祉を支える「地域ケアシステム」づくりと「新しい福祉の人材育成」を掲げて活躍をしている。「わかりやすく元気が湧いてくる講師」として全国の市町村、ケアマネジャー団体、社会福祉協議会、地域包括支援センター、民生児童委員等の研修会などで活躍している。また、施設長や管理職向けに人材マネジメントに関する研修も行っている。
テーマはケアマネジメント、モチベーションから高齢者虐待、個人情報保護、施設マネジメントまで幅広い。外資系企業の管理職経験から人材育成マネジメントもテーマとし、出版・編集者の経験をもとに文章・記録の研修も行う。著書・監修書多数。ほかに業界紙誌への寄稿も多い。

会議やミーティングが多く行われる介護の現場では、ファシリテーション能力を求められる場面が多々あります。
ファシリテーションとは、会議やミーティングを円滑に進めつつ、メンバーの対話を引き出し、よりよい結論に導くことです。ファシリテーションを行う人のことをファシリテーターと呼びます。
多職種によるチームケアや、ケアマネジャーとの情報共有などを効果的に実施するために、効果的なファシリテーションを行う方法を解説していきます。

介護の現場でもファシリテーションの重要性は高い

介護の現場では、日々さまざまな会議やミーティングが行われています。また、多職種連携が必須であり、円滑なコミュニケーションと活発な意見交換はケアの質やご利用者様のQOL向上にも欠かせません。

公益社団法人日本介護福祉士会が公表している報告書(※)によると、介護福祉士リーダー(候補)740名のうち、半数以上が「会議や勉強会で自分の意見を述べ、スタッフの意見を引き出す」ことに対して不安感を抱いているという結果が出ています。

また、「今後学習したいと思うこと」として下記の意見も挙がっています。

  • コミュニケーションスキル。会議や研修会の進め方
  • 職員自らが気付き、考える事ができるようにファシリテーターとして会議等を進行できる技術を身に付けたい

  • こうした結果から、特にリーダー以上のスタッフ様はファシリテーションスキルの重要性を感じ、身に付けたいと思っているのが分かります。

    • 公益社団法人日本介護福祉士会「介護人材の機能分化促進に向けたチームリーダーとなる介護福祉士の育成に係る研修ガイドライン策定事業報告書」

    ファシリテーションが「合意形成」をサポートする

    円滑な会議進行のほか、期待する結果が得られるように、「チームの合意形成」をサポートしていくこともファシリテーションの目的です。その上でファシリテーターは、外面的なプロセスと内面的なプロセスにアプローチし、「人と人との相互作用(シナジー効果)」を促進する役割も担います。

    外面的なプロセスとは、会議のための準備や進行のことで、会議やチームの活動を円滑化するために役立ちます。
    内面的なプロセスとは、メンバーの思考や感情を推し量り発言を引き出せるよう働きかけることで、成果や活動の満足度に影響を与えるものです。

    ファシリテーターによって相互作用が促進され、新たなアイデアが創出されることもあります。逆に、促進された相互作用によって対話が活性化し、意見の相違によって対立が生じることもあります。しかし、対立は互いの考えや価値観、専門性などの違いを知る機会でもあります。対話によって意見を擦り合わせ、合意形成する場面でもファシリテーションは役立ちます。

    ファシリテーションのポイント

    話しやすい環境を整える

    ■目的とゴールを定める

    前提として、対話の目的とゴールをあらかじめ定めておくことは重要です。目的があいまいなままでは、対話のゴールもあやふやになり、深い議論と合意形成がなされません。

    例えば、会議の目的が「業務効率化の案をまとめる」である場合、ゴールは「意見の中から、翌日以降の業務を効率化できる案を抽出して、実行できるようにする」が考えられます。

    設定した目的とゴールがブレないように、会議中はホワイトボードに掲示するといった方法も効果的です。

    ■専門職同士の関係を円滑にする

    多職種連携が欠かせない介護の現場において、介護スタッフや医療スタッフなど、専門職同士の対人関係は重要なポイントです。会議で認識の食い違いが出ないよう共通言語を作る、知識面の違いをカバーできるよう情報を提供する、役割を理解するために自己紹介の時間を作るなどの配慮が必要です。

    ■話し合いのステップを決める

    内容が重複したり、モレが出たりしないよう、話し合う内容を順序立てて決めておきます。議題から大きくそれたり、必要な議論ができなかったりということがないよう、会議をコントロールします。

    ■内容を整理しながら進行する

    ファシリテーターは、話し合いの結論を導き出すためのサポート役も担います。参加者が納得して結論に同意できるよう、それぞれの意見のメリットとデメリット、一致点と相違点を整理する、テーマごとに細かくまとめるなど、合意を形成しやすくなるよう、話し合いの内容を整理しながら進行するとよいです。

    結論につながりそうな意見が出たときは、その意見を中心に議論を進め、方向性をまとめていきます。議論の方向性を絞り込む際は、メンバー全員が納得して議論を進められるよう合意を得て絞り込みます。あとから蒸し返されたりしても、議論を振り出しに戻さないために要所で合意を得ることが重要です。

    発言が少ないときの「声がけ」スキル

    ■論点を提示する

    参加者が発言しやすいように論点を提示します。その際、論点を3つ程度に絞ると、参加者自身が発言すべきことを把握しやすくなります。

    ■発言を促す

    発言者に偏りが見られる場合には、発言が少ないメンバー、あるいは発言していないメンバーに対して発言を促します。発言者を指名する場合には、発言したメンバーからみて対角線上(真向かいや斜め向かい)にいるメンバーを指名すると発言しやすくなります。

    ■「始めの部分だけ」を代弁する

    それでも発言が難しいメンバーには、「たとえば~という考え方もあると思いますが、○○さんなら……」と発言を促すと、意見を述べやすくなります。

    ■不明点や疑問点は質問して聞き出す

    対話の中でメンバーそれぞれが抱く不明点や疑問点を出させたい場合は、対話によってどのような感想を持ったのか、何か質問はないかを問うと発言しやすくなります。

    対立意見も尊重した会議の進め方

    対立意見が生じたと感じていても、よく話を聞くと同じ意見であるケースもあります。表やチャートを使い対話を構造化することで、対立意見か同一意見かを可視化できるようになり、議論しやすくなります。

    それでも意見がまとまらないときは、次回に持ち越すのも選択肢としてアリです。例えば、ある業務改善案があったとして、一定期間は改善案を採用して業務に取り組みます。実施期間後の会議ではその経験を踏まえて議論できるので、より具体的な話し合いが可能になります。

    対話の中で生じる対立は、着眼点や解決策の相違から起こるものです。それぞれの意見を尊重したい場合は、このような条件付きの合意も効果的です。

    ファシリテーションスキルを磨いて効果的な会議を実現

    業務の専門化・複雑化が進む介護の現場では、多職種が円滑に連携できるように対話を促進するファシリテーターが求められています。
     
    今回ご紹介した手法を参考にして、より効果的な会議運営を目指していきましょう。


    参考:
    高室成幸「ケアマネジャーの会議力」中央法規出版,2017
    野中猛、高室成幸、上原久「ケア会議の技術」中央法規出版,2007

    公益社団法人日本介護福祉士会「介護人材の機能分化促進に向けたチームリーダーとなる介護福祉士の育成に係る研修ガイドライン策定事業報告書」

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