2024年3月26日更新
介護職が行うバイタルチェックの測定項目は?測定方法と注意点も紹介
監修者プロフィール/近藤 敬太(こんどう・けいた)
藤田医科大学 連携地域医療学 助教
豊田地域医療センター総合診療科 在宅医療支援センター長
愛知県豊田市出身。2014年愛知医科大学卒業、トヨタ記念病院にて初期研修、藤田医科大学 総合診療プログラムにて後期研修修了。研修中に藤田医科大学病院、聖路加国際病院などで勤務し2019年に半田中央病院 総合診療科の立ち上げに携わり現職。現在は日本最大規模の総合診療プログラムに指導医として所属し、豊田市を中心に600名以上の患者に対し在宅医療を提供している。
夢は愛知県豊田市を「世界一健康で幸せなまち」にすることであり、豊田市でコミュニティドクターとしても活動。中小病院の新たな概念として注目が集まるコミュニティホスピタルを豊田市から全国へと発信している。
・コミュニティドクターについて
https://kangotamago.com/2021/01/23/community-doctor/
・一般社団法人コミュニティ&コミュニティホスピタル協会について
https://cch-a.jp/
バイタルチェックを正しく行うことはご利用者様の健康状態の異常をいち早く察知するために不可欠なスキルです。ご利用者様の健康維持に直結するため、日常業務の中でも優先度は高い業務と言えます。
今回はバイタルチェックの重要性を改めて紹介するとともに、基本となる測定項目と測定方法、注意点を解説します。
介護施設におけるバイタルチェックの重要性
バイタルチェックとは?
バイタルチェックとはご利用者様の健康状態を客観的に数値化して異常がないか確認することです。介護施設では主に「体温」「脈拍」「血圧」「呼吸」「SpO2(血中酸素飽和度)」の5項目を測定します。
バイタルチェックの目的
バイタルチェックの目的はご利用者様の命と健康を守ることです。日々の数値を記録しておくことで、数値に変化があった場合にすぐに気付くことができ、病気の早期発見と早期治療につながります。そのため日頃の業務ではもちろん、自然災害や感染症のまん延などの緊急事態の際にも省略できない業務です。BCP(業務継続計画)策定の際でも食事介助や服薬介助と同様に優先すべき業務であり、必須の知識と言えます。
日頃から基準値を元にした数値チェックができていれば、医療スタッフと相談し、「血圧が高い人には塩分が控えめの食事を提供する」など介護施設でもできる食事療法や運動療法の計画を立てる際にも使えます。
なお、BCPについては「介護事業者に求められるBCP(業務継続計画)~準備は裏切らない(1)」で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
バイタルチェックの測定項目と方法
バイタルチェックの目安となる基準値は以下です。あくまでも基準値ですので、医療スタッフと共有・相談し、施設ごとに定めることができます。
測定項目
基準値
体温
36.0~36.9℃
脈拍
1分間に50~80回
血圧
最高(収縮期血圧):
男性 100〜140mmHg
女性 90〜140mmHg
呼吸
1分間に14~20回
SpO2(血中酸素飽和度)
安静時96%以上
「喀痰吸引等指導者マニュアル(第三号研修)」(厚生労働省)
(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite)を編集して作成 /bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi /kaigosyokuin/dl/manual_all.pdf
体温
水銀体温計、電子体温計を使って測定する際、わきの下が汗で濡れていると正確な数値が出にくいので拭いてから測定します。また、計測中は衣服や毛布などで熱がこもらないように気を付けます。
基準値は36.0〜36.9℃ですが、年齢や筋肉量などで個人差があり、一日の中でも変動(日内変動)する点は留意しておきます。
脈拍
脈拍はご利用者様にリラックスした体勢をとってもらい、手首(橈骨動脈)に人差し指から薬指の3本の指を軽く当てて測ります。約15秒間測り、脈拍に乱れなどを感じた場合はそのまま1分間測定を続けます。
基準値は1分間に50〜80回です。回数と同時に、脈が一定のリズムで刻まれているかも確認します。
血圧
血圧は尿意や便意があると変動するため、ご利用者様にトイレを済ませてもらった状態で測定しましょう。
ご利用者様にはイスや車椅子に座ってもらい、自動血圧測定器を使います。基準値は最高(収縮期血圧)が男性で100〜140mmHg、女性で90〜140mmHgです。
呼吸
ご利用者様が測定を意識すると呼吸が乱れやすくなるため、測定の際は何も伝えずにご利用者様のお腹や胸の上下運動をそっと観察しましょう。
基準値は息を吸ってから吐くまでを1回として、1分間に14〜20回が基準です。回数と同時に呼吸が苦しそうではないか、ヒューヒューといった異常な音がないかなども確認します。
SpO2(血中酸素飽和度)
SpO2とは肺から酸素を十分に取り込めているかを調べる数値です。パルスオキシメーターを指に装着して測ります。
基準値は安静時で96%以上です。肺疾患などで慢性的に低い数値の人もいるため、基準値は目安として、普段の数値から大きく離れていないかを見ることが大切です。
バイタルチェックのよくある疑問
医療行為ではない?
厚生労働省通知*1によって使用が許可されている道具でバイタルチェックを行うことは医療行為に当たりません。
<介護職が使用できるバイタルチェックの道具>
体温測定:水銀体温計、電子体温計、耳式電子体温計
血圧測定:自動血圧測定器
SpO2測定:パルスオキシメーター
許可されている道具以外でバイタルチェックを行うと医療行為になるため気を付ける必要があります。例えば水銀“血圧”計を使って血圧測定するのは医療行為となるため介護職は実施できません。
バイタルチェックのタイミングは?
バイタルチェックは毎日決まった時間帯に行います。運動・入浴・食事の直後、緊張時も数値に影響することがあるため避けましょう。日々の結果にばらつきがあると異常があった際に見逃す恐れがあります。
毎日のバイタルチェック以外にも、ご利用者様から「暑い、寒い」「具合が悪い」といった訴えがあった場合には、都度測定を行います。
測定値以外で記録する内容は?
ご利用者様の表情や体調も一緒に記録します。自覚症状が見られないか、普段と比べて表情や食事の量に違いがないかなど、気になることがあれば、ささいなことでも記録することが大切です。また、普段と違う時間帯や姿勢で測定した場合も必ず一言書き残しておきましょう。
バイタルチェックを嫌がられたら?
「健康を守るために頑張りませんか」と前向きな表現で声掛けをします。何を使ってどのような測定をするのか、「1分程度で終わりますよ」「痛いことはありませんよ」など具体的な内容や時間を伝えることもご利用者様の不安を解消するために効果的です。どうしても断られる場合は無理強いをせず、時間帯をずらすなどして実施します。
なお、声掛けは嫌がられた時に限らず、普段から行うことが大切です。ご利用者様が持つバイタルチェックへの苦手意識の軽減にもつながります。
異常値が出た時の対応は?
普段と異なる数値が出たら、まずは測定方法が間違っていないか確認し、再度測定します。それでも数値に異変があれば、すぐに看護師などの医療スタッフに報告しましょう。医療スタッフの指示のもと、必要があれば医療機関への受診、緊急性が高い場合は搬送などの対応にあたります。
正しいバイタルチェックでご利用者様を守る
日々介護に携わるスタッフ様はご利用者様の変化に素早く気付ける貴重な存在です。バイタルチェックはその変化を察知するための重要な基準となりますので、正しく丁寧に行うスキルを身に付け、ご利用者様の健康を守っていきましょう。
参考:
厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」
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