コラム

2022年7月19日更新

介護事業者のBCP(業務継続計画)~実効性向上に寄与する研修・訓練のポイント~

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著者プロフィール/本田 茂樹(ほんだ・しげき)
ミネルヴァベリタス株式会社 顧問、信州大学 特任教授、公益社団法人全国老人保健施設協会 管理運営委員会 安全推進部会部会員
現在の三井住友海上火災保険株式会社に入社。その後、出向先であるMS&ADインターリスク総研株式会社での勤務を経て、現職。医療・介護分野を中心に、リスクマネジメントおよび危機管理に関するコンサルティング、執筆活動を続ける一方で、全国での講演活動も行っている。これまで、早稲田大学、東京医科歯科大学大学院などで教鞭をとるとともに、日本経済団体連合会・社会基盤強化委員会企画部会委員を務めてきた。

令和3年度の介護報酬改定において、介護事業者におけるBCP(業務継続計画)の策定が義務づけられていますが、実は、義務化されたことは「BCPの策定」だけではありません。感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施も義務化されました。

今回は、介護事業者のBCPの実効性を向上させる「研修・訓練」について、本田 茂樹氏に重要性や実施のポイントを解説していただきました。

本田 茂樹氏は、厚生労働省が公表している「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」の検討委員会 委員長も務めておられます。業務改善ナビでも「介護事業者に求められるBCP(業務継続計画)~準備は裏切らない」を執筆いただいておりますので、併せてご覧ください。

  • 本媒体では施設職員を「スタッフ様」、介護施設等の入所者を「ご利用者様」と表記しておりますが、本記事では「職員」「利用者」としております。

研修・訓練の重要性

実際のBCPは、紙や電子データの形に落としこまれていますが、BCPが出来上がっていることと、それを的確に運用できることは全く別です。BCPを実効性の高いものにするためには、介護事業者の経営者はもちろん、介護職や事務職などの職員全員がBCPの内容を理解し、その内容に従って行動できることが必須です。

しかし、自施設のBCPをイントラネットに掲載したり、紙の資料を配布したりするだけでは、すべての職員がその内容を理解し、実践できるようにはなりません。自施設のBCPを職場に根づかせ、文化や風土として定着させるためには、研修および訓練を定期的(施設・居住系では年2回、在宅系では年1回)に行うことが重要です。

研修を行うにあたってのポイント

介護事業者においてBCPを定着させ、その実効性を向上させるためには、まず、すべての職員がBCPの内容を十分に理解していることが重要です。

自然災害の発生や感染症の流行に見舞われた際、BCPに定められたことを実践するのは一人ひとりの職員ですから、次のような内容を研修会の形で全職員に伝達し、共有しておくことが必要です。

  • BCPの概念や必要性
  • 想定されるリスク事象などの基礎知識
  • 自施設のBCPの概要
  • 職員の自宅における防災 など

「BCPの概念や必要性」については、厚生労働省が公開している「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」の「1:BCPとは」の動画でも詳しく解説していますので研修の際に活用できます。

また、感染症BCPに関する研修は、感染症の予防およびまん延の防止のための研修と一体的に実施することも差し支えないとされています。

訓練を行うにあたってのポイント

訓練では、実際に自然災害や感染症が発生した場合に、自施設のBCPに定められた役割分担に従って動けることを目指します。

これまでの大規模災害や感染症の流行を振り返ってみると、BCPが策定されていた介護事業者であっても、必ずしもそれらの計画が的確に運用されていたとは言えません。これはBCPがあっても、実際に運用できるかどうかの検証が不十分だったためと考えられます。

訓練の目的

(1)災害時や感染症流行時に介護事業者が受ける被害のイメージを再確認する

災害時・感染症流行時には、介護事業者は大きな被害を被るとともに、電気・ガス・水道のライフラインなど介護事業者を取り巻く状況が悪化するにも関わらず、外部からの支援がすぐに得られるとは限りません。さまざまな被災シナリオを使って訓練することで、自施設が見舞われる被害のイメージを再確認し、その危機感を職員全員で共有することができます。

(2)BCPの見直しを行う

実際に訓練を実施すると、手順どおりに進まないことや足りない物資が出てくるなど、BCPの不備や改善点が明らかになります。実施した訓練の結果を踏まえてBCPを見直し、修正することが大切です。

(3)BCPへの理解を深め、実践能力を高める

BCPは策定して終わりではなく、それが的確に実践されてこそ意味があります。介護事業者の職員がBCPの内容を理解するとともに、実際の被災時・感染症流行時に計画どおり動けることが極めて重要です。訓練を繰り返すことによって計画内容への理解が深まり、実際に身体を動かすことで、その危機対応力を高められます。

他の訓練との関係

自然災害のBCPに関する訓練については、非常災害対策に関する訓練と一体的に実施することは差し支えありません。また、感染症のBCPに関する訓練については、感染症の予防およびまん延の防止のための訓練と一体的に実施しても問題ありません。

訓練の内容

訓練の実施方法は、机上訓練(*1)を含め、そのやり方については特に指定されていません。具体的な訓練の内容には、次のようなことが考えられます。

(1)参集訓練
(2)初動対応訓練
(3)対策本部設置訓練 など

(*1)机上訓練は、自然災害の発生や感染症の流行についてシナリオを作成し、そのシナリオに対してどのよう対処するか、職員が集まり、考えて議論していく方法です。

(1)参集訓練

被災後、実際に施設に参集できるかどうか確認する訓練です。日中だけではなく、災害が夜間に起こった場合などを想定して行う場合も考えられます。

(2)初動対応訓練

実際に災害に見舞われた場合、その初動対応がBCPに定められた手順通りにできるかどうか確認する訓練です。

地震であれば、職員および利用者の安否確認、初期消火など二次災害の防止、また自施設の被害確認などが該当します。感染症であれば、自施設で感染者が発生した場合に行う、関係先との連絡や情報共有の手順を確認することが考えられます。具体的には、医療機関・保健所など必要な関係先への連絡・相談、施設内での情報共有、また指定権者への報告などです。

(3)対策本部設置訓練

初動対応の終了後、対策本部を立ち上げることになりますが、それが的確に運営できるかどうか確認します。

施設内各フロアの被害状況を確認し集約したり、外部との連絡に必要な通信手段に支障はないか、災害備蓄の量は適切かなどの項目をチェックします。

まとめ

BCPの「研修・訓練」について、本田 茂樹氏に解説していただきました。計画が大事なことはもちろん、いざという時に計画を実施するために定期的な研修と訓練が重要と言えます。今回のコラムをぜひ役立てください。

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