コラム

2024年6月25日更新

看取り期のご家族とのコミュニケーション。介護職としての関わり方

監修者 大城京子氏のプロフィール写真

監修者プロフィール/大城 京子(おおしろ・きょうこ)
(株)Old-rookie 快護相談所 和び咲び 所長
主任介護支援専門員
2000年愛知総合看護福祉専門学校(現 専門学校愛知保健看護大学校)卒業後、老人保健施設勤務、デイサービス管理者を経て、2013年より、居宅介護支援事業所の管理者を務める。2019年より現職。ACPファシリテーター、ELC認定ファシリテーター、iACPもしバナマイスター。2016年より、国立長寿医療研究センター(現老人保健施設相生)の西川満則医師と共に、地域に向けたACP研修会や講演を行う。2020年より、研修会のプログラムを改変し、2か月に1度、オンラインでの「ACPiece研修会」を開催。著書に「ACP入門 人生会議の始め方ガイド」(編者)「生活の場で行うアドバンス・ケア・プランニング 介護現場の事例で学ぶ意思決定支援」(編者)「ACPと切っても切れないお金の話」(編者)がある。

看取り期における介護は、ご利用者様だけでなく、ご家族の精神的なケアも必要となります。
令和3年度(2021年度)の介護報酬改定では、看取り期のご本人・ご家族との十分な話し合いや関係者との連携を一層充実させる観点から、基本報酬や看取り介護加算の算定要件が追加され、令和6年度(2024年度)の介護報酬改定でも、看取りへの対応強化が挙げられています。そういった意味でも、看取り期のケアは今後も重要視されていくと考えられます。

そこで今回は、特別養護老人ホームグループホームなどにおいて看取り期のご利用者様のご家族と良い関係性を築く方法を解説していきます。

看取り期におけるご家族とのコミュニケーションの重要性

ご利用者様の看取り期は、ご家族にとってかけがえのない時間であるとともに、気持ちが不安定になりやすい時期でもあります。そのため、ケア方針についてご家族と意見をすり合わせ、スタッフ間で連携しながら看取り期をサポートしていくことが重要です。

ご家族とお会いする機会があればご利用者様の状態を直接伝えたり、ご家族の不安を聴いたりするなど、普段からコミュニケーションを取ることで信頼関係の構築にもつながります。
信頼関係ができると、ご家族の気持ちを引き出しやすくなり、よりご本人やご家族の希望に近い形での看取りケアにつなげられます。

ご家族とコミュニケーションを取るときのポイント

ご家族に配慮ある対応を行う際に、特に大切なポイントを紹介します。

直接コミュニケーションを取る

ご家族の心情を把握したり、お互いの表情をみながらコミュニケーションをとることでやり取りの認識の相違を回避したりするためにも、可能な限り対面でコミュニケーションを取ることが望ましいです。さまざまな事情で面会に来られない場合は、お電話で直接コミュニケーションを取るようにします。ご家族の希望を伺うだけでなく、ご利用者様の様子も伝えるのが理想的です。

ご利用者様の希望を優先して考える

限られた時間の中で、ご利用者様はもちろん、ご家族が後悔のない選択をできるように配慮することが大切です。看取り期だけでなく、できれば看取り後の希望も聞いておく必要があります。
日々の関わりの中でご利用者様の希望をお聞きし、スタッフ側からそれを伝えるのもよいでしょう。そうしたことが難しい状態であれば、ご家族だからこそ知っているご利用者様の意向や希望も聞いておきましょう。

注意が必要なのはご利用者様の希望がご家族の意向と合っていなかった場合です。伝え方を間違えると「ご利用者様はこう思っていますのでこうすべきです」など、強要しているように捉えられてしまうかもしれません。ご利用者様の希望をご家族が初めて聞く場合は戸惑うこともあるので、心の整理がうまくつけられるようにペースを合わせながら伝えたり、傾聴したりすると良いでしょう。

ご家族が過ごしやすい環境をつくる

ご家族が面会する際は、ご利用者様の側に居やすいような空間を作ることも大切です。思い出の写真を部屋に飾ったり、長居しやすいような椅子やソファーを置いたりして、ご家族がご利用者様との時間を心地よく過ごせるような空間を用意するのも一つの方法です。

面会に来やすい環境を作ることができれば、施設に足を運ぶ機会が増え、スタッフ様とのコミュニケーションの時間も自然と増えるため、情報の共有ができるとともに、お互いの信頼関係を深められます。そのような関係が構築されると、スタッフ様に不安や悩みなど、本音を話しやすくなるかもしれません。

ご家族との具体的なコミュニケーション例

看取り期は、予想のつかない出来事、ご利用者様ではなくご家族に判断を仰ぐ場面、スタッフ様とご家族が協力して何がご利用者様にとって最善かを考える場面が発生することもあります。ここでは、そうした状況でのコミュニケーションの取り方を紹介します。

食事が食べられなくなった場合

食事を口から摂れなくなった場合、ご利用者様の希望が確認できなければ、自然な最期を迎えるのか、あるいは経管栄養に切り替えるかなど、スタッフ様とご家族が、ご利用者様にとって最善な選択を話し合うことが想定されます。また元々、経管栄養だった方が、嘔吐を繰り返すなど経管栄養を受け付けなくなった場合も、経管栄養の減量や終了など、ご利用者様にとって最善な選択について話し合うケースもあるでしょう。

そうした際は現在の状況と、経管栄養への切り替えや経管栄養の減量や終了によって起こりうる今後の見通しをしっかりと伝えます。その選択を重く感じ、悩んだ末、精神的に不安定になってしまうご家族もいます。事実をしっかり伝えなくてはいけませんが「もう生きることは無理」など、ご家族が悲観的になってしまうような表現は避けます。「このままだとご本人が辛い時期に入ってきたので、少し栄養を減らして、穏やかに過ごせるようにしませんか」といったように、伝え方には十分に配慮しましょう。

容態が急変した場合

容態が急変した場合は、迅速にご家族に連絡をします。連絡を受けたご家族が施設に来られたら、医師や看護師を交えて、ご家族に状況を丁寧に説明します。

このときに大切なのは、急な出来事で不安な気持ちになってしまっているご家族に配慮した言葉がけを心がけることです。ご家族の反応を見ながら、ゆっくりとお話しをして、ご家族が不安な気持ちを漏らされたら寄り添い傾聴するなどの対応をしましょう。また、容態が急変することも含め自然な経過であることについて、あらかじめ共有しておけばご家族が急な出来事を受け止める助けになる場合があります。

面会に来られた場合

ご家族が面会に来られたときは、以下のようなほんの些細なことでもご利用者様の様子を伝えるようにします。

【例】

  • 摂取することができた食事量
  • 声掛けをしたときのご利用者様の表情
  • スタッフが行ったケア内容と反応
  • ご利用者様からスタッフにかけられた、ねぎらいの言葉
  • ご家族のお話をする時の満面の笑顔

ポジティブな話題であれば、細かな情報を進んでお伝えするのが良いでしょう。
例えば、寝たきりでいつも目を閉じていることが多いご利用者様であれば、「今日お声を掛けたら目を開いてこちらを見つめてくださいました」など些細な変化も伝えられると、ご家族は「よく看てくれている」と感じていただけるでしょう。

逆に、「食事量が減ってきた」「健康状態が落ちてきた」など、ご家族の心情を刺激してしまう恐れがある深刻な情報に関しては、十分に配慮して伝え方に気を付けましょう。
例えば、食事量が減ってきたなどのネガティブな情報を伝えた後は、「ご本人の食べたいものをお勧めするようにしていきます」「お食事の量自体は少なくなってきましたが、〇〇であればおいしそうに召し上がります」など、ポジティブな言葉で締めくくると良いでしょう。
ご家族に、不安な気持ちで終わらず「一緒に看取りを頑張っていこう」と思ってもらえるような言葉がけを意識することが大切です。

まとめ

看取り期は、ご家族にとって大切な時間であることを忘れず、適切な関わり方を考える必要があります。看取り後も「ケアやご家族へのコミュニケーションは適切であったか?」「他の方のケアに活かすことはないか?」などの振り返り会議を開くのも良いかもしれません。そうした積み重ねがご家族の心情に寄り添える看取りケアにつながっていきます。

なお、ご利用者様への、看取り期のケアやコミュニケーションについての事例や実践方法については、「看取りケアでアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実践を~ご利用者様のための意思決定支援法~」で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

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