コラム

2023年6月20日更新

介護施設を運営する社会福祉法人がこども食堂に取り組む意義

監修者 内城一人氏のプロフィール写真

監修者プロフィール/内城 一人(ないじょう・かずと)
デイサービスセンター「けやきの家」管理者。
社会福祉士、介護支援専門員、介護福祉士。1973年生まれ、大学卒業後、都内重症心障害児(者)施設勤務。2003年三芳町社会福祉協議会入職。2005年デイサービスセンター「けやきの家」所長。若年性認知症の人が活躍するこども食堂セカンドキッチンけやきで「NHK第一回認知症にやさしいまち大賞受賞」。

社会福祉法人とは、特別養護老人ホームや、保育所の運営など社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人を指します。地域に暮らす人々を支える役割も求められており、そのひとつにこども食堂の運営も含まれます。

今回は、介護施設を運営している社会福祉法人がこども食堂に取り組むことにどのような意義があるのか、また運営していく上での注意点をご紹介します。
なお、こども食堂の運営には資金や運営スタッフの確保など、多くの準備が必要である上、感染症の流行状況によってはご高齢者様との交流を積極的に行うことが難しい状況も考えられます。今回のコラムは、すでに検討を始めている方のご参考になれば幸いです。

こども食堂とは

こども食堂とは、主に子どもを対象に無料または安価で食事を提供する場のことです。運営主体は個人やNPO法人、自治体や社会福祉法人などさまざまです。
 
こども食堂を利用できる対象は運営者により異なります。中学生以下の子どもを対象としている施設もあれば、子どもとその保護者、地域の方であれば誰でも利用できる施設もあるなどさまざまです。実施日についても不定期や月に数回、ほぼ毎日など多様なパターンがあり、提供する食事の内容や時間帯もそれぞれ異なります。

こども食堂が担う役割

こども食堂の目的は、困窮している家庭への食事の支援だけではありません。核家族化が進む社会の中で孤立しがちな子どもの居場所をつくる役割もあります。同年代の子どもたちや地域の大人、こども食堂に携わるボランティアのスタッフなどと団らんしたり交流したりする機会を設けることで、さまざまな人との関わり方を学べる場になるでしょう。

コロナ禍で高まるこども食堂の重要性

文部科学省が2021年度に実施した児童の諸課題に対する調査*1によると、小学校・中学校における不登校の件数は過去最多となりました。
コロナ禍で収入が減少した家庭の増加に伴い、困窮する子どもも増加。さらに外出制限や授業のリモート化などにより、子どもの社会参加や他者とコミュニケーションをとる機会が減少しています。

withコロナ、afterコロナの社会を考える時、こども食堂には「子どもの居場所づくり」「困窮に対する支援」「交流の機会や場所」という大きな社会福祉的意義を見直す時でもあります。

介護施設がこども食堂を運営しているケースはまだ少ない

こども食堂の必要性が高まる一方で、介護施設でこども食堂を運営しているケースは少数にとどまります。農林水産省が実施したこども食堂の運営実態に関する調査*2では、回答のあった274件のうちこども食堂以外の活動として「高齢者福祉(介護福祉施設など)」と答えたのは全体の17.9%にとどまりました。

実態としては介護施設が運営するこども食堂はまだ少ないですが、運営することには、社会的意義があります。具体的に次に紹介します。

介護施設がこども食堂を運営する意義

介護施設・利用者・子ども、それぞれにメリットがある

■介護施設のメリット

  • 社会福祉法で義務付けられている「地域における公益的な取組」のひとつとして考えられる
  • 地域から頼られ、信頼される施設になれる
  • ご利用者様、スタッフ様、地域住民の方との絆が深まる
  • すでにある施設の建物や地域ネットワークなどの資源を有効活用できる

■ご利用者様のメリット

  • 子どもたちから頼られ、必要とされることで生きがいや充実感を感じられるようになる
  • ご利用者様の得意なことを活かして教えることで健康の維持や増進、認知症の進行予防につながる
  • 将棋や囲碁などの趣味、教育や食などに長年携わってきた経験を活かして子どもと関わることはご利用者様の喜びや幸福感につながる
  • 食事づくりなどの運営に携わることで充実感や達成感を得られる
  • 子どもたちとの触れ合いが良い気分転換となる

■子どもにとってのメリット

  • 温かい食事を大勢で楽しみながら食べられる
  • 困ったときに頼れる居場所になる
  • ご高齢者様に親しみを持つきっかけをつくれる

介護施設だからこそできる社会貢献

介護施設が行うこども食堂の魅力は、ご利用者様と子どもたちの交流です。ご利用者様が担い手としてスタッフ様やボランティアの方と一緒に食事づくりや配膳を行い、食卓を囲みます。食事後は、共に遊び楽しむ時間を通じてご利用者様が時には頼られ、必要とされる存在となっていきます。生き生きとしたご利用者様の姿、子どもたちや保護者の方々の笑顔を見ることでスタッフ様もやりがいを感じることができます

支援が必要な家庭の子どもたちや孤食の子どもたちが、楽しみながらおなかいっぱいのご飯を食べられる場を提供し、ご利用者様と共に社会貢献ができるのは、介護施設だからこそと言えます。

こども食堂を運営する際の注意点

安全・安心な運営体制の構築

こども食堂を運営する上で気をつけなくてはならないのは、主に以下の8つです。これから運営を始めるには、ハードルが高いとも思えますが、法人として保育所経営などの運営ノウハウがある場合は、食事やレクリエーションの内容に活かすこともできます。
 

  • 食品衛生管理
  • 子どもの食物アレルギーへの配慮
  • 安全管理
  • 生活困窮者自立支援制度との連携
  • 支援が必要な家庭や子どもを把握した場合の対応
  • 運営スタッフ(ボランティアを含む)の確保
  • 予約の要不要に関わらず柔軟に対応できる体制をつくる
  • 写真撮影やSNS投稿には細心の注意を払う ※子どもたちへのプライバシーに配慮する
 
こども食堂は単にお腹を満たすだけではなく、子どもたちに居場所を提供するという側面もあるため予約制にせず、柔軟に運営できる体制が理想的です。しかし、すぐに整えるのは難しいため、可能な範囲で臨機応変に受け入れられる体制を整えておくと、子どもたちの気持ちに寄り添うことができます。例えばその日に予定していた食材がなくなった場合、レトルト食品や冷凍食品に少し手を加えて代用すれば、急に来た子どもにも食事を出すことができるかもしれません。予約制にする場合でも、無断キャンセルなどをしてしまった子どもたちの状況を理解し、キャンセルしても問題のない旨を伝えておくなどの配慮をしましょう。

また、支援が必要かもしれない子どもや何らかの問題に気付いた場合に、児童相談所や地域の行政機関と連携を取れるよう、対応方法を決めておきます。また、支援が必要な子どもたちが通いやすいよう、家庭の事情による制限を設けず包括的に受け入れる態勢を整えることも大切です。

  • 食品衛生やアレルギーへの対応などに関しては、厚生労働省がポイントをまとめています。事故を防ぐためにもご参考ください。
    厚生労働省 子ども食堂における衛生管理のポイント 利用:2023年4月7日

運営費やスタッフの負担を軽減する

農林水産省が実施したこども食堂の運営実態に関する調査*2によると、「運営費の確保が難しい」と答えた団体は29.6%に上りました。全体の約70%の施設が年間にかかる運営費は30万円以下と回答したものの、「2週間に1回程度」開催していると回答した施設では約43%が「30~100万円以上」かかっていると回答しています。

こども食堂の運営を維持するためには、地域住民や地元企業・団体、フードバンクなどとの連携が不可欠です。助成金を活用したり、農家さんから出荷できない野菜や米の提供を受けたりして運営費を抑える方法もあります。また、介護スタッフ様の負担を増やしすぎないよう、ボランティアなどの人材確保に加え、実施する目的や意義を共有し、やりがいを感じられるようにしましょう。

介護施設ならではの注意点も

献立は成長期の子どもに合わせたものが求められます。日頃のご高齢者向けのメニューとは異なり、子ども向けの栄養バランスや味付けになるよう配慮しましょう。
また、レクリエーションを行う際はゲーム性を持たせたり、交流を図れる内容にしたりするなど、ご利用者様と子どもたちがお互いに楽しめるような工夫が必要です。
例えば、子どもと一緒にホットケーキやたこ焼きなどの簡単な調理を行ったり、子どももご高齢者も答えやすいクイズや、しりとり大会をしたりすると一緒に楽しむことができるでしょう。あやとりや手芸、折り紙など、ご利用者様や子どもが得意なことがあれば教え合って楽しめるかもしれません。スタッフ様だけで考えるのではなく、参加するご利用者様や子どもたちにアイデアを募ってみるのもよいでしょう。

また、ご高齢者様が暮らす施設での開催となるため、感染症の流行状況にも十分注意し、実施する場合は感染対策を徹底することも大切です。

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