コラム

2021年12月28日更新

福祉用具の衛生・安全管理は十分? 感染対策と衛生・安全管理で利用者の安心を守ろう

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著者プロフィール/矢沢 由多加(やざわ ゆたか)
公益財団法人テクノエイド協会 普及部長・試験研修部長兼務
全国身体障害者総合福祉センター、長寿社会開発センターで障害者福祉、高齢者福祉の推進に奉職した後、現職。義肢装具士国家試験の実施、福祉用具の普及促進、福祉用具適合技術に関する人材養成等に携わる。社会福祉士、福祉用具プランナー。

車椅子や手すりなどの福祉用具は、介護サービスを提供する上でなくてはならないものです。しかしながら、日頃の衛生・安全管理を怠ると思わぬ事故や危険につながることもあります。福祉用具に起因した事故を防ぐためには、定期的な衛生・安全管理を仕組み化して実施することが重要です。

そこで今回は、福祉用具の衛生・安全管理において大切な考え方やポイントを、公益財団法人テクノエイド協会の矢沢由多加氏に解説していただきます。

※本媒体では、介護施設などの入所者は「ご利用者様」、施設職員は「スタッフ様」と表記しておりますが、本記事では「利用者」「スタッフ」としております。

福祉用具の衛生管理

まず、福祉用具の衛生管理の重要性と具体的な感染対策を解説します。

福祉用具を介して感染が広がる?

ノロウイルスや腸管出血性大腸菌などは接触感染するため、福祉用具を介して感染が伝播する可能性があります。用具によっては非常に多くの利用者の間で共用するものもあるため、適切な感染対策をとっていないとアウトブレイク(集団感染)のリスクも高まってしまいます。

【福祉用具別】消毒すべき箇所と消毒方法の例

福祉用具を介した感染を防ぐためには、定期的に消毒することが重要です。以下では、主な福祉用具(車椅子、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、手すり、スロープ、歩行補助杖)について、部位別に消毒方法の例を示します。紹介する内容はあくまで例ですので、各用具の材質と消毒薬*・消毒方法は製造事業者や福祉用具貸与事業者等に確認したうえで消毒作業を行ってください。

 *以下、消毒薬としているものの代表例は、ベンザルコニウム塩化物、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、グルコンサン酸クロルヘキシジンなどを有効成分とする消毒薬です。

車椅子

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特殊寝台

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床ずれ防止用具

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手すり(浴槽用、トイレ用)、その他施設設備

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福祉用具の安全管理

福祉用具の持つ特徴を最大限に活かし、安全で利用者に適合した最良の状態で使い続けるためには、用具の部品ごとに適切な調整と点検整備が必要です。安全管理を怠ると重大な事故につながる可能性があります。まずは、用具のメンテナンスが不十分であったために起こってしまった事故事例を見てみましょう。

福祉用具のメンテナンスが不十分で起きた事故事例

ここでは「車椅子のフットサポートのゆるみ」「ベッドアームの固定不備」「浴槽用手すりのガタツキ」の3事例を紹介します。

事例1: 車椅子のフットサポートのゆるみ

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この事例では、トイレへ立位移乗をしようとしたとき、フットサポートが急に倒れて利用者が前方に倒れそうになりました。大きなケガにつながるとても危険な事例です。通常フットサポートを跳ね上げたときは、ある程度の固さで保持されており、容易に倒れるものではありませんが、メンテナンス不足などで倒れやすくなる場合もあります。

福祉用具を常に安全な状態に維持することに注意を払っていれば、事故は防げたかもしれません。また、そもそもフットサポートの固定がゆるい機種もありますので、可能であれば機種を変更するなど、予防的な対策をすることも必要です。

事例2: ベッドアームの固定不備

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これは、利用者がベッドから降りようとベッド用グリップのアームをつかんだ際、固定されていなかったので、勢いで前方に投げ出された事例です。最近の製品ではロックが簡単に解除されないような構造になっていますが、旧式のものでは布団などの引っかかりで外れやすいものもあります。

利用者が力をかける前にスタッフがガタツキなどを確認していれば、不備に気づけたでしょう。またロックが外れやすい機種の場合、可能であれば製品の交換を検討することが事故防止につながります。しかし、スタッフのロックのかけ忘れなど人為的なミスも考えられますのでご利用者様を乗せているときは1つひとつの操作に注意が必要です。

事例3: 浴槽用手すりのガタツキ

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この事例では、ねじのゆるみから浴槽用の手すりにガタツキが生じていたもののそのまま使い続けていたため、突然大きくズレて前方に転倒しそうになりました。浴槽用手すりは、浴槽の素材や形状によって適合しない場合もあり、本来固定できない浴槽に利用すると、このような事例が発生しやすくなると考えられます。また、適合する浴槽においても、ねじのゆるみや固定部分のゴムの劣化などで固定が不十分になります。

このような事例を防ぐには、定期的なメンテナンスが欠かせません。使用前には必ずしっかりと固定されていることを確認することが大切です。

福祉用具を安全に管理するためには

用具を安全に管理するためにはいくつか守るべきポイントがあります。それぞれについて以下で解説します。

部品のつなぎ目を中心に適切な工具でメンテナンスを行う

製品として完成された福祉用具は、さまざまな役目を持った要素部品を集約したものです。それぞれの要素部品は溶接、接着、はめ込み、締結などの方法で組み付けられていますが、特に調整などに関するメンテナンスではねじ止めによる締結部分の確認が重要で、目視、使用感などを使用前後には必ず確認することが大切です。

また、取り扱う福祉用具や作業内容によって、適切なサイズの工具や専用工具などを揃えることも必要です。目的とする作業や加工の精度などに応じてあらゆる工具を正しく使い分けることが安全につながります。

福祉用具管理台帳で管理する

点検項目を整理して福祉用具管理台帳を活用することも、安全管理の上では欠かせません。管理台帳を作成し管理しておくことで、誰でも福祉用具の状態や所在を把握でき、点検した時期や在庫、管理番号、購入日、修理状況などを一目で確認することもできます。台帳には、さらに用具類の点検項目なども記載しておき、チェックリストとして活用しましょう。以下に「車椅子の点検項目」を例示します。

車椅子の点検項目(例示)

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入れ替えや廃棄、交換の基準を定めておく

福祉用具はメンテナンスを適切に行っていたとしても、長く使い続けていると消耗・劣化します。例えば、マットレスは、カバーやベッドパットを付けていても、長年の汗や尿・体温等で素材によっても異なりますが、ヘタリが発生します。使用期間や利用者の体格等によって入替や廃棄が必要になります。

また、電動ベッドや車椅子などは耐用年数が決まっています。特に、タイヤやチューブ、虫ゴムなどゴム系のものは、経年変化を起こすため定期的な交換や、修理不可能な故障、部品の欠損、消耗部の磨耗、さび、汚れ、塗装の悪化、キズ等の状態によっては交換が必要となります。さらに、「回復できない状態や回復させるにはコストがかかりすぎる」、「機能が古く使用する機会がなくなった」、「耐用年数を超えた」などの理由から廃棄する場合もありますので、入替・廃棄並びに交換の基準を定めておくことも大切です。

耐用年数(減価償却資産の耐用年数)の目安

  • 特殊寝台・・・8年
  • 特殊寝台付属品(マットレス除く)・・・8年
  • マットレス・・・8年
  • エアマット・・・8年
  • 床ずれ予防マットレス(エアマット除く)・・・8年
  • 床ずれ予防用具・・・5年
  • スロープ・・・5年
  • 移動用リフト・・・10年
  • 昇降機・段差解消機・・・10年
  • 杖・・・5年
  • 歩行器・歩行車・・・5年
  • 自走用車椅子・・・10年
  • 電動車椅子・・・7年
  • 車椅子付属品・・・5年
  • 認知症老人徘徊感知機器・・・5年

まとめ

福祉用具を介した感染を防ぐためには、用具やその部位に合わせた消毒方法を知っておくことが重要になります。また福祉用具を利用する人に合わせて調整し、安全かつ適切に使用されるためには、点検(メンテナンス)を知識として持つだけでなく、自ら作業を行う経験を積むことが必要です。そして何よりも、福祉用具利用者の安全を優先することが第一であることを心がけてください。

参考文献:
「医療現場の清浄と滅菌」(中山書店)
「安全な福祉用具貸与のための消毒ハンドブック」(厚有出版)
「福祉用具プランナーテキスト」(公益財団法人テクノエイド協会)
「福祉用具の安全とスライディングシートの効果的な使用」(公益財団法人テクノエイド協会)

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