現在所属している事業企画部は、幅広く事業に携わることができる部署です。具体的には、商品の計画から開発、生産、物流のすべてに関わり、KPSの事業を持続させるための様々な戦略を立案し、実行する。商品に関わる一連の流れを通じてマーケティングを行います。
KPSには様々な事業カテゴリーがありますが、私が担当しているのはフードサービス事業です。文字通り、食品を扱うお客様向けの商品カテゴリーの担当です。たとえば、飲食店と一言でいっても、誰もが知っているようなチェーン店だけではなく、地域に根差したチェーン店や個人経営のお店等多岐にわたります。業種業態ごとに、解決すべき課題は様々です。
例えば、極端な例として、あるゴルフ場内のレストランを挙げましょう。調理以外で食器洗浄用に地下水を活用しているという店舗です。地下水は硬度が高くミネラル分が多いことから、水垢が付着しやすいという課題があります。衛生上、直接的な害はありませんが、食器洗浄機の内部に白いウロコ状の水垢がついてしまい、ノズルの詰まり等の原因になります。それを、従業員の方が掃除するのは大変な労力です。お客様の本業は「美味しい食事を提供する」ことのはずですが、そうではないところに時間もコストもかかってしまうのです。お客様の負担をいかに軽減するかを考え、課題に合った洗浄力を持つ洗剤や、使い方の提案を行っています。洗剤を使って出来ることは、食器や調理器具、厨房設備をきれいにすることだけにとどまりません。お客様にとって価値になることを、商品の中にどう見出すか。新しい価値創造をすることが、マーケッターとしての力量が試される瞬間でもあります。
別の業態ではどうでしょうか。コンビニでの食器洗浄機・洗剤の使用場面を考えると、「アルバイトの方や外国人スタッフの方も使用する」というのが特徴です。業務用食器洗浄機の洗剤はアルカリ性の強いものが一般的で、直接手で触れると危険な、扱いが難しい部分があったりします。使用方法を遵守していただかないと、事故を引き起こしかねません。グローバル化で外国人スタッフの採用が増えているコンビニ業界にとっては、経営リスクにもなることが想定されます。
ではどうするか、を考えるのが私たちの仕事です。「汚れを落とすには強い洗剤、つまり強アルカリ性の処方」という視点を根本から見直してみても良いのではないか。手に優しく扱いやすいもので、しっかりと洗浄力のあるものを使用するのはどうだろうか。
常識を疑って初めて気づく視点もあります。顧客に寄り添い、現場に最もフィットするソリューションを日々模索しています。
事業企画部は、商品を開発・販売するための拠点だと考えています。戦略を組み立てることは勿論、モノが世に出るまでのプロセスの進行管理も大切な仕事です。自分が事業のプロデューサーだという自覚を持ち、状況の変化に応じてすぐに関係各所に連絡を取ったり、進捗を振り返ってチェックできるように打ち合わせの議事録を速やかに共有したり。細やかなコミュニケーションの積み重ねを大切にしています。
研究、生産、物流と、商品の流れのすべてに関わっていますから、様々な部署の方に「処方」「安全性の検査」「パッケージのデザイン」「工場生産ラインの計画」などを適切なタイミングで依頼し、スケジュール通りに動いていただかなければなりません。納得して仕事をしてもらえるよう、なぜその商品が世の中に必要なのかという説得力のあるストーリーを示すことや、ミスが起こらないようにフォローしたり、状況の変化を見逃さない砦になることが、この仕事の腕の見せ所です。
社内の密なコミュニケーションだけでなく、お客様の現場を知るための営業部門との連携も欠かせません。お客様に新商品をお試しいただくために機会を設けてもらうこともありますし、お悩みを直接聞くために現場に同行することもあります。
実際に自分の目で見て、現場で働いているお客様の作業環境やオペレーションを確認したり、一緒に手を動かしてみたりする体験でしか得られない情報も多いと感じています。また、営業部門と意見交換する機会も出来る限り設けるようにしています。お客様と最も密にコミュニケーションをとる営業部門からのアドバイスには、何物にも代えがたい気づきがあります。
お客様に一番喜んでいただけるモノづくりと提案をするのが私たちのミッションですが、そのためにはただお客様のリクエストに回答するだけではなく、KPSならではの「一歩先を行く」アイデアが必要です。営業部門との連携なくして、そのアイデアは出てこないと考えています。
関わってきた商品が発売され、お客様まで届いたときには、自分の子どもを世に送り出しているような気持ちになります。アイデアをカタチにして具現化していったモノで、お客様が笑顔になる事業企画の仕事は、やりがいを強く感じます。一から創り出したことへの思い入れや、協力いただいた方との信頼関係など、様々な想いがつまっています。
これからもこの仕事は続けて行きたいと思っていますが、他のカテゴリーにも挑戦してみたい。例えば、ホテルのアメニティです。商品の機能性は勿論ですが、ラグジュアリーな空間を醸成したり、宿泊客の気分を高めたりできるような、素敵な世界観を演出できるのが魅力に思います。中身が同じだったとしても、アプリケーターなどの見た目を変えることでも非日常感を出すことが出来る特徴もあります。現在の担当は商品の「機能」を中心とした企画が主ですので、将来的には情緒にうったえかけるモノづくりに挑戦してみたいというのが、私の今後の目標です。