PROJECT STORY 02 「手荒れ」の課題に、花王の研究力で向き合う 病院・介護施設のニーズを満たす、手肌に優しいハンドウォッシュの開発

PROJECT STORY 02 「手荒れ」の課題に、花王の研究力で向き合う 病院・介護施設のニーズを満たす、手肌に優しいハンドウォッシュの開発

PROJECT STORY 02 「手荒れ」の課題に、花王の研究力で向き合う 病院・介護施設のニーズを満たす、手肌に優しいハンドウォッシュの開発

多くの施設が抱える「手荒れ」の課題に、花王の研究力で向き合う

「現場のナースに必要なハンドウォッシュ」。これが花王ハウスホールド研究所5室、Aさんに課せられたミッションだった。
幅広くどんな切り口でも見つけられそうなテーマから、着目したのは病院や介護の現場で慢性的な課題である「手荒れ」だった。

手荒れ課題は、病院の経営にも影響する。乾燥やひび割れのある荒れた手のひらは細菌が増殖しやすい。手指洗浄を行っても細菌の数が減少しにくい状態になっており、皮膚のバリア機能も低下する。院内感染のリスクにもなるため、看護師は現場を離れざるを得ない状況も起こりうる。

ある1100床規模の大きな病院では、対策費用として年間11億円を費やすなど、重い負担となっているのが現状だ。
手洗いを改善できれば、現場の職員さんを手指洗浄や消毒時による痛みの辛さから解放することができ、手荒れ対策コストが下がれば、病院や施設が本来為すべきサービスに投資することが出来る。
そんな、良い循環のきっかけになればという想いから、技術開発・商品企画の現場は動き出す。

Aさん

「色々と調べた結果、手荒れには黄色ブドウ球菌が関係しているのではないか、という疑問が生まれ、ここを起点に掘り下げていくことにしました。このように、研究開発は漠然とした課題認識から始まりますが、糸口を見つけ、技術コンセプトを作り、商品の性能につなげていくことが肝心だと思い、取り組んできました」

Mさん

「実際に荒れている手肌に黄色ブドウ球菌の塊(バイオフィルム)がいるのを誰も見たことがなかったので、まずは可視化することからスタートしました。それから、どの洗浄剤なら落とせるかスクリーニングする。地道な作業の繰り返しです。
技術開発から商品になるまで、10年かかるといわれています。世の中が待ってくれないこともありますが、手荒れ課題を解決したいという想いと、他社との性能の差別化が難しいハンドウォッシュで新しいアプローチができるという期待感で、8年という長い年月を挫けることなく取り組むことができたのだと思います」

自信を確信に 

研究所から出来上がってきた開発段階のハンドウォッシュを使って、病院や介護施設などで試用調査を実施。本当に手荒れしているのか、どれくらいの割合で手荒れしているのか、どういう条件で手を洗っているか等現場の実態を徹底的に調査する。その上で、実際に開発段階のハンドウォッシュをユーザーに使用してもらい、きちんと洗浄できているか、使用感は悪くないか、バイオフィルムは落ちているか、手荒れは本当によくなっているかを確認し、「自信が確信に変わる」満足のいく調査結果を積み重ねていった。

Yさん

「入社してすぐに病院・介護施設向けの商品開発担当になり、研究所と共に試用調査に参加してきました。長期間研究の方々と一緒に、本当に結果がでるのか不安になりながらも、手荒れ改善のデータ取得や使用感テストなどに取り組み、着実に一歩ずつ製品化へ進めていきます。その時の研究結果は、研究所の頑張りのおかげでインパクトファクターの高い論文として受理され、商品力を裏付けることにもなります」

商品化にむけて魅力を伝える難しさ 

Nさん

商品化には、技術力以外にも様々なプロセスをクリアしなければならない。

 
「『どうしたら商品の価値を伝えられるか』は、常に悩ましいところです。商品の販売にあたっては、様々な法律が関わっていますので、まずはコンプライアンスを遵守する。そして、他社品とは差別化された価値を伝えるために、営業部門を含めたプロジェクトチームと共に、ユーザーに価値を伝えるための手段を構築していく。製販一体となって取り組みます」
 

また、ブランド名を決める際にも苦労はある。候補をいくつも出し、音の響きが人に与える印象を調査し、商品名によって誤解を生む懸念がないかのチェックなど、厳しく関連部門と議論する。技術さえあれば、商品は成り立つわけではない。このような細部までをも検討し、難題をクリアしていくことで、ようやく世の中に商品を送り出すことが出来る。

商品の発売にあたって

専門知識が豊富な病院関係者や介護施設の職員といったプロフェッショナルのニーズにしっかり応えられる論文・販促ツールを揃えて発売に臨む。 洗った瞬間のしっとり感や、実際に手指への優しさを感じるユーザーの声もあり、喜んでいただけていると実感する場面もある。

Yさん

「商品に対し、喜びの声と共に写真を送ってくださる看護師のお客様もいらっしゃいます。商品開発から販売までのプロセスには様々な苦労がありますが、直接お声をいただく嬉しさと、挑戦は間違いではなかったと思えることがこのうえないやりがいです」

Sさん

「営業部門サイドとしては、兼ねてから病院や介護施設で働く方の手荒れの悩みや改善のために皮膚科医に通われるなど様々な工夫をされている実態をお客様からお聴きすることもあります。当社の商品をお使いいただくことによって、お客様のお悩みが減ってお喜びの声を聴けることは、大変うれしいことです。
一方でご提案をしていく中で、商品性能とともに使いやすさやコストとのバランスも考えなければならないため、使いやすさを視覚的に伝えられるシールなどの販促ツールを作ってアピールし、少しでも魅力を知っていただく方法を追求しています。うまくいった事例は、自信にもなります。

社内の営業にとっても、実際のお客様の声やご採用の知らせによって商品の性能の良さを実感することができ、自信をもってご提案することに繋がります。事例の社内共有や採用件数の見える化など、社内でのモチベーション作りにも注力しています」

喜びの声を力に、さらなる価値提案を

お客様に喜んでいただくためには。モノづくりに終わりはない。より使い勝手の良い、メリットを生み出すための技術応用を追求し続けている。

例えば、ハンドウォッシュ濃縮化。少ない液量でもしっかり泡立つことで、より衛生的に手洗いを実践できる商品づくりも業界には求められている。
さらに、手をかざすだけで泡が出る衛生的な手洗いを可能にするオートディスペンサー等の販売にも力を入れ、より現場課題の改善に向けた提案をしていけるよう、事業戦略をブラッシュアップしていく方針だ。

Nさん

「プロジェクトとして、花王のシェアを向上させていく目標もありますが、いま一番大事にしたいのは『使いたくなるメーカーとしてNo.1になる』ことです。現場の方が使って感じられる良さがあるからこそ、使いたいと思っていただける。これが私たちのゴールです」

Page Top