すでに飲食店を経営している人はもちろん、開業を検討している人でも「FLコスト(エフエルコスト)」「FL比率(エフエルひりつ)」という経営指標を耳にされたことがあるでしょう。
FLコストとは、Food(食材費)と人件費(Labor)の合計金額で、FL比率とは、飲食店の売上高に占める、FLコストの比率のことです。FL比率=(食材費+人件費)/売上高で計算できますね。
飲食店経営においては、最も大きなコストである「食材原価+人件費」を売上の何%に抑えるか、ということが利益を出し続けられるかどうかに最も影響します。FL比率はどれくらいが適正だと思われますか?
先に結論を言えば、個人経営の飲食店であっても、FL比率は必ず60%以下にすることを目標としましょう。内訳は「Food 35%+Labor 25%」程度が望ましいと言えます。コストコントロールが出来ている飲食店では、FL比率が55%以下という店舗もあります。この場合の内訳は「Food33%+Labor 22%」程度と思われます。
では、月間売上が500万円の「居酒屋ご贔屓」があるとして、具体的な数値を当てはめて考えてみましょう。
この場合は、食材原価率が40%、人件費率が30%なので、FL比率は70%となってしまいます。FL比率が70%を超えてしまうと、飲食店としてはほぼ間違いなく利益が出ない状況で、赤字転落、閉店に向けてまっしぐらだと言えます。飲食店経営には、食材原価や人件費以外にも、家賃、水道光熱費、消耗品費、販促費、リース料など多くのコストがかかり、これらを足すと30%を超えることが多いからです。
つまりFL比率70%+その他コスト30%=100%となり、売上額よりもコストのほうが多くかかってしまっている、すなわちその店は赤字ということになります。なんとしても黒字を出したいですよね?
では、この「居酒屋ご贔屓」が黒字化するにはどうしたら良いのでしょうか?
1つの方向性は、売上を伸ばすこと、もう1つの方向性はコストを下げることです。今回は、500万円の売上はそのままにして、コストを下げるシミュレーションをしてみましょう。
「居酒屋ご贔屓」のFL比率70%を60%に下げるためには、現状の「Food 40%+Labor 30%」を「Food 35%+Labor 25%」程度まで下げる必要があります。食材費を25万円、人件費も25万円下げられれば、それぞれ5%、合計10%のコストダウンとなり、FL比率60%を達成できそうです。
では、食材費を5%も下げるためには、どうしたら良いでしょうか?色々なコストダウン策がありますが、
代表的なものは、
などが考えられます。
食材の仕入れ原価は、食材購入場所の変更が最も即効性が高いと言えます。近所のスーパーで主婦が購入している野菜を自店で購入しているのであれば、割高のはずです。業務用食材店で購入をする、使用量の多い野菜は農家と直接契約をして仕入れる、など工夫することでコストダウンができるでしょう。
食材廃棄率を下げる(Waste=ウェイストを少なくする)ためには、まずはアニキ管理の徹底です。アニキ管理とは、「先に仕入れた(仕込んだ)食材を先に使う」という基本中の基本です。このアニキ管理により、せっかく仕入れた食材が腐ってしまって廃棄せざるをえなくなってしまう、ということを防げます。また、冷蔵庫内の清掃を徹底するなど、衛生管理に励むことで菌の繁殖を抑え、食材廃棄率を下げることもできるでしょう。
オーバーポーションについては、実は個人経営の飲食店が赤字に転落してしまう大きな要因の一つと言えます。経営者が感覚で料理を作ったり、盛り付けたりするため、どうしても常連さんには盛りが良くなってしまいオーバーポーションになる、すなわち1品あたりの原価がかさみ利益率が下がってしまうのです。
人件費の下げ方については、また別の機会に詳細をお伝えしますが「売上が無い(少ない)時間帯にはシフトを入れすぎない」ようにすることが一番の近道でしょう。
先ほども触れた通り、飲食店経営にはFLコスト以外に、「その他のコスト」が30%以上もかかってしまいます。
売上高100%に対して、FLコストを60%(食材費35%、人件費25%)に抑えたとしても、その他に地代家賃10%、水道光熱費7%、減価償却費7%、消耗品費3%、販促費3%、雑費5%など、合計35%のコストがかかってくると、利益は5%しか残らないのです。
FL比率が65%の場合はトントン(利益無し)、FL比率が65%以上の場合には、赤字になってしまう計算になります。
個人経営か法人経営かは、関係ありません。まずは飲食店経営を行う際のFL比率は60%以下、出来れば55%以下の目標設定をしてみてください。
売上を伸ばすことも大切ですが、このFL比率を適切にコントロールし続けることができて初めて、飲食店は継続的に黒字を確保することができるのです。
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