2018年6月11日更新
介護報酬改定の背景と国の方針
そして今後の施設系サービスに求められる方向性とは?
今までシリーズで2018年介護報酬改定の主要な改定項目について見てきましたが、今回は改定の背景や国の基本的な考え方、さらに今後の介護保険の方向性を踏まえ、各施設系サービスにおいて求められる方向性について考えてみます。
少子高齢化に伴い増大する介護ニーズをどう賄うか 求められる介護の質と効率的なサービス提供体制
介護保険を取り巻く課題の最大のものは、世界でも類を見ないスピードで進行する少子高齢化です。そして、少子高齢化に伴い増大する介護費用をどう賄っていくかも、課題となっています。また高まる介護ニーズに対して人材の供給が追い付かず、現場の人手不足も大きな問題となっています。こうした課題にこたえるために、厚生労働省は医療・介護の連携や地域包括ケアシステムを政策の柱に据えています。以下、厚生労働省の資料に沿って今回の介護報酬改定を見ていきます。
厚生労働省は今回の改定目的を「団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、国民1人1人が医療や介護が必要な状態になっても、その状態に応じた適切なサービスを受けられるよう、平成30年度介護報酬改定により、質が高く効率的な介護の提供体制を推進」することと位置付けています。
具体的には改正の内容を以下4点あげています。
①地域包括ケアシステムの推進
②自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
③多様な人材の確保と生産性の向上
④介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保
この4つの内容についてもう少し詳しくみていきます。
中重度要介護者も含め医療・介護サービスをどこでも切れ目なく受けられる体制づくりが重要視
①の「地域包括ケアシステムの推進」では「中重度の要介護者も含め、どこに住んでいても適切な医療・介護サービスを切れ目なく受けることができる体制を整備」するとして7つのポイントを掲げています。
これを受けて、特養では、配置医師が施設の求めに応じ早朝・夜間または深夜に施設を訪問し、入所者の診療を行った場合についての評価が設けられ、看取り推進に関しては、一定の医療提供体制を整えた特養内で利用者を看取った場合の評価が充実します。
また、各種施設サービスにおいては、口腔衛生管理加算の見直しと、介護職員が栄養スクリーニングを行いケアマネジャーに情報を文書で共有した場合につく加算、そして多職種で低栄養リスクのある入所者に対して改善の取り組みを行った場合に付く加算が新たに設けられるようになりました。
自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスが求められる
②の「自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」では、「介護保険の理念や目的を踏まえ、安心・安全で、自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」をうたい、以下7点が挙げられています。
上記に関連して、特養や有料老人ホームでは、外部の通所リハビリテーション事業所等のリハビリ専門職や医師が訪問し、共同でアセスメントを行い個別機能訓練計画等を作成した場合に、新たに加算が算定されるようになりました。
また、特養・老健で褥瘡ケアマネジメントを行った場合、新たな評価が行われるようになったほか、施設系サービス全般では、多職種が連携して排泄に介護を要する原因等について分析を行い、それを踏まえた支援計画の作成とそれに基づく支援を実施した場合、一定期間において高い評価が得られるようなりました。
従来からの身体拘束廃止未実施減算も、さらなる適正化を図る観点から、基準が新たに加わり、未実施の場合の減算率が引き上げられたのも特徴です。
人材不足と生産性の向上には、人材の有効活用と機能分化、ロボット技術の活用が不可欠に
③「多様な人材の確保と生産性の向上」では「人材の有効活用・機能分化、ロボット技術等を用いた負担軽減、各種基準の緩和を通じた効率化を推進」するとして、以下5点がポイントとしてあがっています。
特養の夜勤については、ロボットなどの見守り機器の導入によって効率的に介護が提供される場合には評価されるようになり、夜勤職員配置加算の見直しが行われることとなります。見守り機器としての介護ロボットの活用が今後どんどん促進されていくでしょう。
福祉用具貸与や集合住宅居住者への訪問介護に関する減算
訪問看護・長時間の通所リハビリテーションの基本報酬の見直しなどサービスの適正化・重点化を図る
④「介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性の確保」では、以下5点が主な事項としてあげられています。
施設系サービスでの見直しや新設加算はありませんでしたが、サービスの適正化・重点化を以前より指摘されていた福祉用具貸与や集合住宅居住者への訪問介護サービスの減算など、厳しい一面が垣間見られます。
今改定から読み取る国の思惑とそれに合わせた経営スタイルの見直しを
経営に関わるみなささまは今改定から、介護保険の将来像を国がどのように描いているのか読み取りつつ、自事業の先行きを描いて行かなければならないと思います。
まず少子高齢化の進行と国の財政再建への対応のために、介護費用だけでなく社会保障費全般の伸びを抑制せざるを得ないということです。今回の介護報酬の改定率は+0.54%でしたが、今後も大きく伸びることは期待できません。そうしたなかでも医療・介護連携の必要性は高まるでしょうし、介護職の一部医療行為への参入も避けられないでしょう。介護職の専門性は高められる一方、専門職ではない介護の担い手の拡大も求められていきます。
法人事業者として、コスト削減や合理化が今まで以上に求められていくことも考えられます。ICTやAI、ロボット等への投資も検討する必要があります。事業者の統合やM&Aによる事業規模の拡大も必要になってくるでしょう。
介護保険創設時とでは外部環境が大きく変化していることを自覚し、経営スタイルを積極的に転換していくことが求められているのではないでしょうか。
平成30年度介護報酬改定については厚生労働省のHPで確認できます。
▼掲載項目
・介護報酬改定に関する省令及び告示
・介護報酬改定に関する通知
・介護報酬改定Q&A
監修:株式会社エス・エム・エス
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