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コラム

2023年7月25日更新

【事例あり】多職種連携を生かした介護実践。効果と連携ポイントも紹介

監修者 伊藤亜記氏のプロフィール写真

監修者プロフィール/伊藤 亜記(いとう・あき)
株式会社ねこの手 代表取締役
短大卒業後、大手出版会社へ入社。祖父母二人の介護と看取りの経験を機に、社会人入学にて福祉の勉強を始める。98年、介護福祉士を取得し、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行を務める。
その後、大手介護関連会社の支店長を経て、介護コンサルタント「株式会社ねこの手」を設立。
現在、旅行介助サービスや国内外の介護施設見学ツアーの企画、介護相談、介護冊子制作、介護雑誌の監修や本の執筆、連載、セミナー講師、TVコメンテーター、介護事業所の運営・営業サポートなど、精力的に活躍中。現在、年間200回以上の全国での講演やセミナーをこなす。 特に介護記録の書き方や実地指導対策、介護業界の集客法、介護職のモチベーションアップ、介護職の人材育成、離職防止などの講義で全国的に高い人気を得ている。
2010年4月 子どもゆめ基金開発委員就任。医療・福祉法人の顧問や大手介護会社のコンサルタントも多数務める。
介護福祉士/社会福祉主事/レクリエーションインストラクター/学習療法士1級/シナプソロジーインストラクター

介護労働安定センターが実施した令和3年度介護労働実態調査では、施設系(入所型)介護労働者の27.3%が「ケアの方法等について不十分である」と回答されています。ご利用者様のケアにあたっては介護スタッフ様同士だけでなく、多職種とのコミュニケーションも必要不可欠ですが、専門性の違いからその連携は容易ではありません。

今回は、ケアの方法について十分に意見交換できるよう、介護スタッフ様の視点から見た他職種との連携についてケースを挙げながらご紹介していきます。

多職種連携の重要性

介護施設では介護スタッフ様が中心となりケアを行うことが多いですが、ご利用者様の状態はさまざまであり、それぞれのニーズに応え、質の高いケアを提供するには介護スタッフ様だけの体制では限界があります。

そこで必要になってくるのが多職種連携の考え方です。看護師、作業療法士、栄養士や言語聴覚士など、ご利用者様の安心・安全の生活を支えるために必要な専門知識と技術を持った専門職と連携することで、ご利用者様やご家族様等のニーズに応えられるケアを提供できるようになります。

しかし、一方的に知識・技術を受け取るだけではうまく連携がとれたとはいえません。介護現場での多職種連携は、ご利用者様の心身の状況を把握している看護・介護スタッフ様が中心となることで、各専門職の力が発揮されます。
多職種連携の重要性や考え方については、『円滑な多職種連携に役立つ「多職種連携コンピテンシー」とは?』【前編】【後編】にて詳しく解説しています。併せてご覧ください。

次からは多職種連携の内容や効果を、具体的なケースをもとに紹介していきます。

褥瘡予防のための適切なケアがわからない

【ケース】
ご利用者様の情報

  • 要介護度:要介護3
  • 年齢:82歳
  • 性別:女性
  • 状態:24時間臥床状態、認知症(軽度)
  • 介護スタッフAさんの悩み

  • 褥瘡予防に関する知識が乏しく、ケアの具体的な指示もない
  • 介護スタッフの知識にばらつきがありケアの統一ができない
  • ポジショニングの一般的なマニュアルはあるが個別性がないと感じている
  • 連携の内容と効果

    ●看護師や理学療法士アセスメントを実施し、ケア内容の見直しを行った。ポジショニングに関するマニュアルは元々写真を用いたものだったが、理学療法士が中心となり、動画を作成したことで、スタッフごとのバラつきを抑えた適切なケアを提供できるようになった。

    ●ケアマネジャー、看護師、理学療法士、栄養士やほかの介護スタッフとカンファレンスを開催。ケアの進捗状況や課題を共有し、改善策を検討した。カンファレンスの開催によってご利用者様の情報共有ができるようになり、状況に応じたケアにつながっている。

    ●褥瘡ができてしまったときに備えて、看護師と共にチェックシートを作成し、褥瘡の状況を適切に伝えられるようにした。処置については看護師から医師へ相談していただくようにした。
    体制ができたことで他のご利用者様に同様のケースが見られた際にも連携しやすくなり、スムーズなケアを提供できるようになった。

    連携のポイント

    看護師は医療的知識を持っている立場であるため「気軽に質問しづらい」と感じる方もいるかもしれません。その際は「知識がないので教えてください」という姿勢で接すると聞きやすいでしょう。
    褥瘡発生のリスクアセスメントを行い、速やかに、看護師へ報告・連絡・相談ができる体制整備を行うために、常に学びの姿勢を持って積極的なコミュニケーションを心がけましょう。
    褥瘡発生のリスクアセスメントに関しては、コラム「【専門家監修】褥瘡予防Q&A~褥瘡の見極め方・スキンケア」の「褥瘡発生のリスクが高いのはどのような方ですか?」もご覧ください。

    関節拘縮のある方への適切なケアを知りたい

    【ケース】
    ご利用者様の情報

  • 要介護度:要介護4
  • 年齢:82歳
  • 性別:男性
  • 状態:脳梗塞の後遺症と関節リウマチ
  • 介護スタッフBさんの悩み

  • 関節拘縮が進んでいるため、どのようなケアが適切か判断に困る
  • 適切な移動や排泄の方法を見つけるのが難しい
  • 連携の内容と効果

    ●ご利用者様の関節拘縮の状態を理学療法士に報告し、理学療法士が効果的な機能訓練プログラムを計画・実施。機能訓練を活かした自立支援が可能になり、日常生活動作(ADL)が向上した。

    ●理学療法士がご利用者様の足の筋力やバランス能力を評価。最適な歩行補助器具を提案され、排泄時に、一緒に介助を行ってもらうことで最適な動作を確認した。理学療法士から得た知識や技術を活用し、安全かつ効果的な介助につながっている。

    連携のポイント

    理学療法士には「円背や足の上がりなどの影響で歩行状態に課題があり転倒リスクが高い」のように、ご利用者様のこわばりによる生活の支障を的確に伝えます。リハビリテーションの内容を見直してもらうと共に、自立支援のための関わり方をどのようにするのか確認しながら、ケアを行うようにしましょう。

    低栄養に陥っていないか不安がある

    【ケース】
    ご利用者様の情報

  • 要介護度:要介護3
  • 年齢:82歳
  • 性別:女性
  • 状態:高血圧、糖尿病、心疾患
  • 介護スタッフCさんの悩み

  • ご利用者様の食が細く、低栄養に陥っていないか不安がある
  • 連携の内容と効果

    ●栄養士、ケアマネジャー、リハビリテーションスタッフ、ほかの介護スタッフと共にカンファレンスを開催し、口腔ケア・リハビリ、食事介助法などの見直しを行う。加えて、嚥下機能の状態把握も行い、通常の調理形態をソフト状にしたり、とろみをつけるなど、栄養士が食事プランの最適化を行ったことで摂取量が増え、栄養状態を改善できた。

    ●ほかのご利用者様に対しても、食欲不振や食事の嗜好に気づいた際、栄養士に相談し、食事内容の調整・改善を行うことで、適切な食事提供ができる体制を構築。ご利用者様が食事を楽しめるようになり、生活の質(QOL)の向上に貢献できるようになった。

    連携のポイント

    嚥下障害が進行し食べられる量が減ると、低栄養と脱水を引き起こすリスクが高まります。食事が進まないご利用者様に気づいた場合、なるべく早く栄養士に申し送りを行います。
    なぜ食事が進まないのか原因をアセスメントすることも大切です。口腔ケアや義歯の調整、排便コントロール、嚥下機能の状況とリハビリテーションなど、原因に合わせた対応を栄養士、ケアマネジャー、看護師、リハビリテーションスタッフと検討しましょう。

    介護スタッフが中心となって積極的な連携を

    介護現場には、ご利用者様を支えるたくさんの専門職がいます。それぞれの役割を学び、介護スタッフ様が中心となって専門職との連携を図ることで、互いに相談し合える関係性を築いていきましょう。

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