2019年12月24日更新
排泄ケアにおける感染のリスクとは
便や尿などの排泄物には、感染症の原因となるウイルスや細菌が含まれていることがあります。おむつ交換などの排泄ケアを行う際は、排泄物やそれが付着した場所が感染源となる可能性があることを忘れてはいけません。
例えば、ノロウイルスの集団感染事例は介護施設においても過去に複数件発生していますが、嘔吐物や排泄物に触れた手指で取り扱った食品などを介し、二次感染が起こるケースが多いとされています。もちろんご利用者様だけでなく、介護スタッフ様の手指もウイルスの伝播経路となります。
また、排泄ケアを行う際は、抗生物質が効かない「薬剤耐性菌」の存在も考慮する必要があります。以下に示すのは、薬剤耐性菌の伝播経路と、おむつ交換の際に感染対策が必要とされる主な薬剤耐性菌です。
厚生労働省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版 表3」を元に作成
排泄ケア時の感染対策
ここからは、排泄ケア時の基本的な感染対策をご紹介します。
個人防護具(PPE)を着用する
前述したように、感染症の原因となるウイルスや細菌は、介護スタッフ様を介して伝播することがあります。そのため、おむつ交換の際は手指や衣類が汚染されないように、個人防護具(PPE)の着用が推奨されています。
日常の介護においては手袋、マスクを着用します。必要に応じてゴーグル、エプロン、ガウン等を着用します。
【個人防護具の選択について】
参考:CDC:Guideline for Isolation Precautions: Preventing Transmission of Infectious Agents in
Healthcare Settings 2007
手指衛生を徹底する
手指衛生の徹底は、おむつ交換時に限らない大事な感染対策です。「1ケア1手洗い」「ケア前後の手洗い」を基本とします。手洗いには、「消毒薬による手指消毒」と「石けんや手洗い剤による手洗い」があります。目に見える汚れがない場合は手指消毒を、目に見える汚れがある場合には、石けんや手洗い剤を使い、流水で手洗いを行います。どのタイミングでどの手指衛生を行う必要があるのか、施設の感染対策マニュアルなどをしっかり確認しましょう。
陰部洗浄ボトルは個人使用に
排泄ケア時は陰部洗浄ボトルを使用することもあるかと思います。このとき、ボトルが汚染されている可能性を考慮し、ご利用者様間の共用を避け、ご利用者様ごとの個人使用とします。使用後はボトルを洗浄し、十分に乾燥させましょう。
おむつ交換車の連続使用はできるだけ避ける
交差汚染のリスクが高まることから、おむつ交換車に連続して複数人のおむつを乗せることは避けたほうが良いとされています。おむつ交換車を使用する場合はしっかりゾーニングし、清潔・不潔の区別を行いましょう。また、おむつ交換車の使用ごとにカートの清掃を行うことも大切です。
ノロウイルス発生時の排泄ケア
使用済みおむつはどう処理する?
ノロウイルスが発生した場合の排泄ケアの際も、日常の排泄ケアと同様に使い捨てガウン、マスクと手袋を着用します。おむつをはずしたらすぐにビニール袋に入れて廃棄します。排泄物を拭き取ったペーパータオルも同様に処理します。このとき、ビニール袋は2枚重ねて使用するとなお安全です。
床やリネン類に付着したら?
ノロウイルスは乾燥すると空気中に漂うため、素早い処理が必要になります。
床に付着した場合は、まずペーパータオルなどで目に見える汚れを静かに拭き取ります。次に次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度 約200ppm)で浸すように拭き取り、その後、水拭きします。
シーツなどのリネン類に付着した場合は、飛び散らないよう慎重に処理した後、洗剤を入れた水の中でもみ洗いをします。次に「85℃以上で1分以上」の熱水洗濯を行うか、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度 約1000ppm)で消毒します。その後、よくすすいでから洗濯機で洗濯して乾燥させます。
下洗いを行った洗い場も次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度 約200ppm)で清掃すると効果的です。
排泄物の処理が終わったら?
排泄物の処理後は個人防護具を外し、石けんや手洗い剤を使い流水でしっかりと手洗いを行います。
処理の際の環境汚染も考えられます。手がよく触れる部分や、陰部洗浄時の排泄物の飛散等が懸念されますので、環境の清掃や必要に応じて消毒を実施しましょう。
消毒に次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は、窓を開けて換気をしましょう。
執筆:花王プロフェッショナル業務改善ナビ【介護施設】編集部
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