HACCPの基本

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の導入におけるポイント

制度化で義務づけられている「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」では各業界団体が作成した手引書を参考に実施する事になっています。
導入のステップは3つ「衛生管理計画の作成」、「実行」、「確認・記録・保管」です。さらに定期的に振り返りを行う事で、より安全で衛生的な食品提供を目指すことができます。

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」導入の3つのステップを表した図。ステップ1.衛生管理計画の作成。ステップ2.作成した計画の実行。ステップ3.確認・記録・保管。振り返りを行いステップ1に戻る。

ここでは「小規模な一般飲食店事業者」における実践の為のポイントを各ステップごとに簡単に解説します。

STEP1 衛生管理計画の作成 

衛生管理計画は食中毒予防の三原則(菌を付けない・増やさない・やっつける)を基本に、今取り組んでいる衛生管理とメニューに応じた注意点をあらかじめ明確にしておくことが大切です。一般飲食店事業者における衛生管理計画は「一般衛生管理」と「重要管理」の2つを考えます。 

一般衛生管理 


「どの食品についても行うべき共通事項」であり、普段から取り組んでいる衛生管理の項目が一般衛生管理です。

ここでは以下の7項目において「いつ」「どのように」「問題があった時どうする」の内容を決めることがポイントです。

一般衛生管理計画書記載例

一般衛生管理計画書記載例

一般衛生管理計画書記載例

重要管理


重要管理とは「食品の調理方法にあわせて行うべき事項」であり、管理のポイントは、食品中で有害な菌が増えてしまう危険温度帯(10~60℃)を避けることが重要です。まず「加熱」「冷却」が必要な食品について3つのグループに分けます。次にそれぞれのグループごとに安全な食事を提供する為のチェック方法を決め、管理します。

  • すべての食品について分類する必要があるわけではありません。

管理すべき食品3グループ

重要管理計画で管理すべき食品3グループを表した図。〈第1グループ:非加熱のもの(冷たいまま提供)〉さしみ・サラダなど。菌を増やさないために冷蔵・冷凍庫の温度を確認する。〈第2グループ:加熱するもの(加熱し、熱いまま提供)〉焼き魚・メンチカツ・焼き鳥など。菌をやっつけるために適切な加熱を行う。〈第3グループ:加熱後冷却し、再加熱または冷やして提供〉ポテトサラダ・ゆで卵・カレーなど。菌を増やさない・菌をやっつけるために急速冷却(小分け・氷につけて鍋ごと冷やす)と適切な加熱行う。食品中で有害な菌が増えてしまう危険温度帯(10℃~60℃)の時間を可能な限り短くする。

重要管理計画書記載例

重要管理計画書記載例

重要管理計画書記載例

STEP2 作成した計画の実行

STEP1で計画した内容を業務の中で実行していきましょう。

食品の温度を計っているイラスト。冷凍ブロッコリー マイナス18度、牛乳4度、コロッケ82度。

計画した内容を確実に実行するには従業員全員に知らせることが大切です。朝礼などの従業員が揃ったタイミングで説明をしたり、書類を回覧しながら見てもらい、読んだらサインをしてもらうようにすると伝達忘れを防げます。

朝礼などで従業員全員へ説明している様子と、回覧用の衛生計画書のイラスト。従業員が衛生計画書を確認後、回覧チェック票にサインするなどの工夫をする。

必要に応じて、具体的な方法を定めた手順書を作成することもおすすめです。全員が手順書に沿うことで、技術、経験を問わず、誰が行っても同じ手順を実行することができます。

手順書例1 

まな板の洗浄と消毒

 食器用洗剤を付けたスポンジで表裏洗う(専用ブラシで傷目に沿って洗う)

 流水ですすぐ。

 急ぐ時 

③a 水気を拭き取り、エタノール系消毒剤をスプレーする

 作業終了後 

③b-1 ダスターをまな板全体に広げ、次亜塩素酸ナトリウム溶液をかけて30分置き、すすいだ後乾燥させる。

又は

③b-2 次亜塩素酸ナトリウム溶液に30分つけ置き、すすいだ後乾燥させる。

手順書例2

さらに、文字だけでなく、イラストや写真を取り入れるとイメージしやすくなり、理解度が高まります。

 手順書例(まな板の洗浄と消毒)。イラストを用いて、対象物、頻度、使用洗剤、作業手順をわかりやすく掲載している。

 手順書例(まな板の洗浄と消毒)。イラストを用いて、対象物、頻度、使用洗剤、作業手順をわかりやすく掲載している。

 手順書例(まな板の洗浄と消毒)。イラストを用いて、対象物、頻度、使用洗剤、作業手順をわかりやすく掲載している。

分からない点などを気軽に質問できるように、また問題があったときに正しく申告できるように日ごろから従業員同志のコミュニケーションを円滑に図るようにしておきましょう。

STEP3 確認・記録・保管

実行の結果を毎日記録します。1日を通して各項目で問題無かった場合は記録表に○を記入します。
 
特に重要なのは問題があった場合の記録です。問題があった場合は必ず特記事項で詳細に事例と対応を書いておきます。

記録表にその日の報告を記入している様子のイラスト。問題があった日は具体的な事例と対応を記載する。(例:ハンバーグの中が赤いとクレームあり。破棄して新しいものを提供。)

日頃の問題点の例

日頃の問題点の例のイラスト。トイレ後、手洗いをせずに入室。食器・調理器具がシンクの下で保管されている。冷蔵庫・冷蔵庫に温度異常がある。冷蔵庫内で肉のドリップでサラダが汚染。まな板を使い分けていない。入荷した食材の期限が切れている。入荷した食材の包装が破れている。不良品の回収取扱い方法が適切にされていない。

日頃の問題点の例のイラスト。トイレ後、手洗いをせずに入室。食器・調理器具がシンクの下で保管されている。冷蔵庫・冷蔵庫に温度異常がある。冷蔵庫内で肉のドリップでサラダが汚染。まな板を使い分けていない。入荷した食材の期限が切れている。入荷した食材の包装が破れている。不良品の回収取扱い方法が適切にされていない。

日頃の問題点の例のイラスト。トイレ後、手洗いをせずに入室。食器・調理器具がシンクの下で保管されている。冷蔵庫・冷蔵庫に温度異常がある。冷蔵庫内で肉のドリップでサラダが汚染。まな板を使い分けていない。入荷した食材の期限が切れている。入荷した食材の包装が破れている。不良品の回収取扱い方法が適切にされていない。

記録は、1年間程度は保管しておきましょう。
保健所の食品衛生監視員から提示を求められた場合は、すぐに見せられるようにしておきましょう。

保管していた記録を保健所の食品衛生監視員に見せている様子のイラスト。

振り返り

定期的(1 か月など)な記録の確認などを行います。
クレームや衛生上、気がついたことなど、同じような問題が発生している場合には、同一の原因が考えられるので対応を検討しましょう。

<ハンバーグをレシピ通り調理して提供した>

対応を見直したら計画書を改訂し、今度はその計画にしたがって業務を実施しましょう。従業員に変更した旨を忘れずに知らせましょう。
改訂日も記録しておくと、次回の見直しに役立ちます。

最後に

「HACCP の考え方を取り入れた衛生管理」は計画、実施、記録により、衛生管理を「見える化」することです。
衛生管理計画は1度作ったら終わりではありません!!定期的に見直しをしていくことで問題点を明確にし、より安全で衛生的な食品を提供することができます。改訂したことは必ず職場で共有するようにしましょう。

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